繰上返済 vs 貯金・預金 比較

住宅ローンに余裕資金を繰り上げるべきか、それとも預金等で残すべきか。ローン金利と安全資産の利回りの差が、そのまま得失の違いになります。

繰上返済と貯金・預金、どちらが有利かはどう計算するか(計算の根拠)

このツールは、住宅ローン残高・金利・残り期間・繰上返済に回す金額・安全資産(預金等)の年利の5つから、「繰上返済をした場合」と「そのお金を安全資産に残した場合」を同じ前提で比べます。判断の軸になるのは、「ローン金利」と「安全資産の利回り」の差です。

① 繰上なしの月返済額(目安) = 残高 × 月利率 × (1+月利率)残月数 ÷ {(1+月利率)残月数 − 1}
 (月利率 = 年利 ÷ 12、残月数 = 残り年数 × 12。金利0%なら「残高 ÷ 残月数」)

② 繰上ありの利息総額(目安) = 繰上後の残高から、同じ月額で返済を続けていき、各月の「残高 × 月利率」を完済まで積み上げた合計額

③ 安全資産の利息(単利目安) = 繰上返済に回す金額 × 安全資産の年利 × 年数

「繰上返済の方がどれだけ得か」は、①と②の差(利息の削減額)から③の安全資産利息を引いた金額になります。金利一定・元利均等・ボーナス併用なしを前提とした目安です。ここでのポイントは、繰上返済の実質リターンは「ローン金利そのもの」(非課税・確実)だという点です。一方、預金等で安全に得られる利回りは多くの場合それよりはるかに低いため、差のほとんどが繰上返済側に傾きます。

「なぜそんなに差がつくのか」は、住宅ローン利息が「元本全体に金利を乗じて期間分積み上げる」構造だからです。一方、普通預金などの利息は同じ元本でも金利が小さく、また税引き後さらに小さくなります。金融理論の近道として、72の法則を計算した記事——年利1.5%なら72÷1.5=48年で2倍近い時間がかかる一方、住宅ローンの1.5%は「払わないで済む1.5%」として同じだけ効く、という見方ができます。

具体例1——残高2,000万円・年1.5%・残り20年で200万円を繰上返済したら

項目繰上なし繰上返済 200万円(期間短縮)差
月返済額(目安)約 96,494円約 96,494円(同じ月額で返済継続)—
完済までの月数240か月(20年)約 212か月(約17.7年)− 28か月
総利息(目安)約 315.6万円約 245.4万円− 約 70.2万円
同条件で同額を預金していた場合の利息(年0.02%・単利目安)—約 8,000円−
繰上返済の方が得(目安)—約 69.4万円 分有利—

同じ200万円でも、住宅ローンの金利1.5%で「利息を減らす」効果(約70万円)と、預金で「得られる利息」(年0.02%なら約8,000円)には圧倒的な差があります。この差が「安全資産の利回りよりローン金利の方が高いなら、繰上返済が有利」というルールの正体です。

なお、同じ条件でも「月額をそのまま維持して期間を短縮」するのか、「月額を減らす(一定額の繰上)」のかで結果は変わります。このツールは月額を変えずに残高だけ減らす(期間短縮型)モデルで計算しています。返済額を軽減したい場合(月額固定型)の違いは繰上返済の損得を計算した記事で、繰上返済をどの時点で行うか(早期/中期)は繰上返済の効果を計算した記事で確認できます。

具体例2——残高3,000万円・年1.0%・残り30年で500万円を繰上返済したら

項目繰上なし繰上返済 500万円(期間短縮)差
月返済額(目安)約 96,491円約 96,491円(同じ月額で返済継続)—
完済までの月数360か月(30年)約 281か月(約23.4年)− 79か月(約6.6年)
総利息(目安)約 473.7万円約 358.4万円− 約 115.3万円
同条件で同額を預金していた場合の利息(年0.02%・単利目安)—約 0.2万円(繰上後の残り期間23.4年・単利目安)−
繰上返済の方が得(目安)—約 115万円 分有利—

金利が1.0%と低くても、繰上額が大きく・残期間が長いほど削減利息は大きくなります。500万円の繰上で「完済が約6.6年早まる」ケースでは、利息削減が約115万円規模になり、同じ額を預金しても追いつかないことがわかります。

なおこの例の「預金に残した場合」の利息は、繰上返済に回さなかった500万円を安全資産(ここでは年0.02%・単利)に23.4年(繰上後の残り期間281か月相当)そのまま置いた目安で、利息は約 500万円 × 0.02% × 23.4年 = 約0.2万円にとどまります。繰上返済の利息削減(約115万円)との差は約115万円で、預金だけで追いつくことはほぼ不可能であることが数字からも見えます。ただしこの目安は単利・税引前・金利一定の簡易値で、実際には繰上返済に回さなかったお金をどうするか(運用するか・将来の支出に留保するか)で結果は変わります。

比較軸繰上返済(期間短縮)同額を預金等に残す同額を支出に消える
原資500万円500万円500万円
23.4年後のお金住宅ローン残高が約500万円減り、利息約115万円を免れる約500万円+利息約0.2万円(単利目安)残高はそのまま(利息約474万円分が積み上がる)+手元には刷新したクルマや経験など
「得」の性質確実・非課税・戻せない見込みは小さいが元本は残る元本も戻らない・生活の満足は得られる(金額換算は困難)

ここから見えたのは、繰上返済を判断するとき「預金等で安全に残すケース」だけではなく、「繰上返済に回さなかったお金が支出に消えるケース」も一緒に思い描くべきだということです。繰上返済に回す予定だった500万円を新車・旅行・教育費などに使ってしまうなら、 housingローンの利息約115万円を免れる機会を失うだけでなく、原資そのものも住宅ローン残高に残ったままになります。逆に言えば「繰上返済するか迷っている余剰資金」が実質的に支出予定であれば、繰上返済の機会費用は預金の利息よりもっと大きくなります。判断の順番としては、①生活防衛資金は十分か ②繰上返済に回すお金は「将来の支出予定がない余剰」か ③その余剰を預金等で残すのと繰上に回すのではどちらが得か(このツールの計算)の順で見ると、感情だけで振り回されにくくなります。

繰上返済しなかったお金を「どうするか」の別解として、住宅ローン控除との兼ね合いを先に確認しておくのも現実的です。控除を受けている期間は「年末の残高 × 1%(上限あり)」が戻ります。繰上返済で残高を大きく減らすと、その年から控除額も減ります。「控除で戻る額の減少」が「利息の削減」を上回る期間がある場合には、控除終了まで繰上返済を待ったほうが得なこともあります(控除額の計算は住宅ローン控除 還付額計算、仕組みは住宅ローン控除額の計算記事で確認できます)。繰上返済を早期にするか中期まで待つかという点については繰上返済をするタイミングを計算した記事、繰上返済に回す資金を「運用に回す等価額」で捉える考え方は金利優遇の価値を繰上返済の等価額で測る記事も参照してください。繰上返済に回さなかった資金をどう守るか(生活防衛資金)の考え方は生活防衛資金の記事でも扱っています。

具体例3——「安全資産の利回り」が0.02%ではなく、もっと高い場合は

繰上返済に回さなかったお金を、リスクを抑えつつ利回りが見込める商品(たとえばつみたてNISA・iDeCoなどの税制優遇口座で運用するケース)に置いた場合、話は変わります。このときは「ローン金利」対「税引後の運用利回り」で比較し、後者が上回れば運用が有利になり得ます。詳しい式と言葉の整理は繰上返済と積立NISA・低金利時代の比較記事で、繰上返済を「運用に回す等価額」で測る方法は金利優遇の価値を繰上返済の等価額で測る記事でも扱っています。下表は「繰上返済に回さず・年利2%・20年運用」を仮定したroughな比較例です(いずれも税引前・税制優遇適用しない概算)。

比較軸繰上返済(期間短縮)年利2%で20年運用(概算)
原資200万円200万円
効果の見方利息削減(約70.2万円)運用増(約200万→約297万円・利得約97万円)
性質確実・非課税・元本に戻せない見込み・元本割れリスクあり・口座によっては税制優遇あり

ここからわかるのは、原理的には「ローン金利(1.5%) < 運用利回り(2%)」なら運用が勝ち得るということです。ただ、住宅ローン繰上返済は「確定した金利分の支出を減らす」ものであり、運用は「見込み」でしかありません。どちらを選ぶかは所得金額・生活防衛資金・リスク許容度・住宅ローン控除の適用状況を合わせて判断します。若い会社員で年収帯の目安を先に把握したい場合は手取り計算ツール、繰上返済に回る余剰の大きさは複利積立シミュレーションで逆算できます。

よくある注意点

もっと具体的に確かめる

数値は金利一定・元利均等・ボーナス併用なし・繰上は期間短縮型(月額固定)を前提とした概算です。預金の利息は単利・年0.02%程度の安全資産を仮定した目安で、実際の商品・税引後・口座タイプにより異なります。繰上返済の可否・条件・手数料、住宅ローン控除の適用状況、変動金利の見直し等は、ご契約の金融機関の約款・試算表・税務署の取扱いで必ずご確認ください。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した金額が外部に送信されることはありません。

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