住宅ローンの借り換えで得する?損得分岐点を年利・残高・残期間の3パターンで計算
「今の金利が下がったから借り換えたい。でも諸費用が数十万かかるって聞いた。本当に得なの?」——住宅ローンの借り換えを考えたことがある人なら、誰もがぶつかる疑問です。ネットで検索すると「借り換えシミュレーション」は出てきますが、「どのくらい得なら借り換えるべきか」「諸費用の何年で回収できるか」を自分で計算する方法を書いたページは意外と少ないものです。
この記事では、もっとも典型的な3つのケース(大得/固定化/微妙)で、月額の差・総支払の差・諸費用40万円の回収年数を実際の計算式から出します。自分の数字で即座に試したい場合は 住宅ローン計算ツール に金額を入れれば、同じロジックで一瞬で出ます。
結論:借り換えが「得」かどうかは「月額の差×残期間」と「諸費用」の勝負
| ケース | 条件 | 月額の差 | 総支払の差(得) | 40万円の回収年数 |
|---|---|---|---|---|
| 大得 | 残高2000万・残20年・2.5%→1.0% | ▲14,002円 | +3,360,412円 | 約2.4年 |
| 固定化 | 残高3000万・残30年・変動1.0%→固定1.5% | +7,044円 | ▲2,535,915円 | 回収不可(利息増) |
| 微妙 | 残高500万・残5年・1.0%→1.2% | +431円 | ▲25,875円 | 回収不可 |
「大得」のように金利差が大きく残期間が長いほど回収が早く、逆に「微妙」のように残期間が短いと、諸費用40万円を回収しきれずに損になります。目安として「月額の差×12ヶ月×残期間(年) > 諸費用」なら得、というのが分岐点です。
ステップ1:借り換えの得失を決める式
借り換えによって変わるのは、毎月の返済額(元利均等の場合は一定)と、その差の積み重ねです。得失は次の式で比べます。
借り換えによる総支払の差 =(現行の月額 − 新規の月額)× 残り返済回数
得になるのは「総支払の差 > 借り換え諸費用(手数料+登記費用+団信等)」のとき
住宅ローンの月額は 住宅ローン計算ツール のとおり、借入残高・年利・残期間から元利均等の公式で出ます。ここでは、その月額が「新しい金利」でいくらになるかを比べ、差を残期間分だけ積み上げます。
注意点:諸費用には「事務手数料(借入額の2%程度、または定額)」「司法書士費用(登記)数万円」「火災保険の一時負担」「団信(信用生命保険)の再加入費用」が含まれます。銀行によっては「手数料無料キャンペーン」もあり、その場合は回収年数がぐっと短くなります。
ステップ2:ケースA「大得」——金利差1.5%なら2年で回収
残高2,000万円・残期間20年で、金利が 2.5% から 1.0% に下がる場合を計算します。
- 現行(2.5%):月額 105,981円 / 総支払 25,435,339円
- 新規(1.0%):月額 91,979円 / 総支払 22,074,927円
月額が 14,002円 下がり、総支払は 3,360,412円 も減ります。年間の削減額は約168,000円なので、諸費用40万円は 約2.4年(29ヶ月) で回収できます。このケースなら、手数料を払ってでも借り換える価値が十分にあります。
ここが誤解の多いポイント:「総支払が300万円減るなら必ず得」ではありません。あくまで「総支払の差」と「諸費用」を比べます。諸費用が100万円かかる場合は回収に約6年かかり、その頃には残期間が14年まで短くなっているため、結局回収しきれず損になる計算になり得ます。
ステップ3:ケースB「固定化」——総支払は増えるがリスクを買う
残高3,000万円・残期間30年で、変動1.0% から 固定1.5% に借り換える場合です。
- 現行(変動1.0%):月額 96,492円 / 総支払 34,737,068円
- 新規(固定1.5%):月額 103,536円 / 総支払 37,272,983円
月額が 7,044円 上がり、総支払は 2,535,915円 も増えます。数字だけ見れば「損」です。しかし変動金利には、将来の金利上昇リスクがあります。
同じ残高3,000万円・残20年の条件で、変動が 2.0% に上昇した場合の月額は 151,765円(1.0%の137,968円から約1.4万円の跳ね)になります。固定1.5%の144,764円よりも高くなり、かつ金利がさらに上がればその差は開く一方です。つまり「固定化」は、総支払を数百万円上乗せしてでも、将来の金利上昇リスクを封じ込める保険と考えるのが正解です。
ステップ4:ケースC「微妙」——残期間が短いとほぼ損
残高500万円・残期間わずか5年で、1.0% から 1.2% に借り換える場合です。
- 現行(1.0%):月額 85,469円 / 総支払 5,128,124円
- 新規(1.2%):月額 85,900円 / 総支払 5,153,999円
月額が 431円 しか変わらず、総支払の差は ▲25,875円(損)。諸費用40万円を回収できる見込みはありません。このように残期間が5年未満だと、金利差が小さければ借り換えはほぼ確実に損になります。残期間10年以下の場合は、よほどの金利差(1%以上)がない限り見送るのが実務的です。
変動金利の「隠れたコスト」を含めて考える
変動金利は毎月の返済額が原則5年ごとに見直される(5年ルール)仕組みで、金利上昇時は返済額が上がるか、上がらない分は期間が延びるかのどちらかになります。期間が延びると、その分だけ利息が増え続けます。借り換えの判断では、「今の金利」だけでなく「金利が上がったときの自分の家計の余力」をセットで考える必要があります。
やりがちな失敗5つ
- 諸費用を過小見積もりする:事務手数料・登記・火災保険・団信を合わせると40〜100万円になることも。回収年数はこれを分母にします。
- 残期間を見誤る:残期間が短いと月額の差が積み上がらず損に。5年未満は原則見送り。
- 返済期間を「元の残期間」より長くする:借り換えで期間を延ばすと、月額は下がっても総利息は増えます。繰上返済(期間短縮型)の記事でも触れていますが、借り換えでも「期間短縮」を選ばないと本末転倒になります。
- 団信・火災保険の重複:古いローンの保険を解約し忘れると、二重に保険料を払い続けます。借り換え完了後に必ず解約手続きを。
- 住宅ローン控除との兼ね合いを無視する:住宅ローン控除は年末残高の1%が13年間控除されます。借り換えで残高が減れば控除額も減るため、控除の減少分も「得」の計算に入れる必要があります。
手取り・家計への影響を含めて考える
借り換えで月額が1万円下がれば、年間12万円のキャッシュが手元に残ります。これを 複利積立シミュレーション で年利3%・20年運用すると約330万円(元本240万円)になります。逆に月額が上がれば手取りの自由になるお金が減るため、手取り計算ツール で生活費への影響を確認してから決めるのが安全です。
借入可能額や返済負担率の目安は 住宅ローンの借入可能額の計算、返済方式(元利均等・元金均等)の違いは 元利均等と元金均等の比較記事 も併せてどうぞ。
注意事項
本記事の数値は 元利均等返済・手数料40万円固定 を想定した 概算 です。実際の借り換え諸費用(事務手数料は借入額の2%程度または定額、登記費用、火災保険、団信加入費)や、金利タイプ(変動・固定・固定特約)、保険料の条件によって数万〜数百万円単位で変わります。正確なシミュレーションは、各銀行の借り換えシミュレーターと、ご自身の 残高証明書・返済予定表 で確認してください。制度・金利の詳細は金融機関の公式情報が最終的な根拠になります。
自分の数字で試したい場合は 住宅ローン計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
よくある質問
住宅ローンの借り換えで得する目安は?
(現行の月額 − 新規の月額)× 残り返済回数 > 借り換え諸費用 なら得です。例:残高2000万円・残期間20年で金利2.5%→1.0%なら月額14,002円下がり、総支払が約336万円減るため、諸費用40万円は約2.4年で回収できます。
残期間が短いと借り換えは損になりますか?
はい。残期間5年未満で金利差が0.2%程度だと、月額の差が積み上がらず諸費用を回収できず損になります。残期間10年以下は、よほどの金利差(1%以上)がない限り見送りが実務的です。
変動から固定への借り換えは損ですか?
総支払で見れば増えます(残高3000万円・残30年で1.0%→1.5%なら約253万円増)。しかし変動金利の将来上昇リスクを封じ込める「保険」と考えると、金利上昇に強い家計づくりとして正当化できます。
借り換えの諸費用には何が含まれますか?
事務手数料(借入額の2%程度か定額)、司法書士費用(登記)数万円、火災保険の一時負担、団信(信用生命保険)の再加入費用などです。銀行によっては手数料無料キャンペーンもあり、その場合は回収年数が短くなります。