「住宅ローンを組むとき、『元利均等』と『元金均等』ってどっちを選べばいいの? 月々の支払額も総支払額も違うって聞いたけど、具体的にいくら違うの?」——人生最大の借入を決める場面で、誰もが一度はぶつかる切実な疑問です。銀行の説明やネットの比較表には「元利均等のほうが楽」「元金均等のほうが総支払額が安い」と書かれていますが、「なぜそうなるのか」「実際に月々いくら・総額でいくら違うか」を、具体的な数字で追っている記事は意外と少ないものです。
この記事では、住宅ローンの2つの返済方式のうち、元利均等の計算式 「借入額 × 月利 × (1+月利)^回数 ÷ ((1+月利)^回数 − 1)」 と、元金均等の計算式 「借入額 ÷ 回数 + 残元本 × 月利」 の根拠から出発し、もっとも多い 「借入3000万円・年利1.0%・35年」の条件で、月々の支払額と総支払額を1円単位で比べます。さらに「どちらを選ぶべきか」の目安と、選ぶときの注意点も数値で示します。自分の数字で試すなら 住宅ローン計算ツール で、繰上返済との組み合わせは 繰上返済の損得を計算した記事 で確認できます。
そもそも「返済方式」とは何か
住宅ローンの返済は、毎月の支払額が 「元金(借りたお金の残り)」と「利息(残元本×金利)」の合計 になります。この「元金と利息の配分のしかた」のルールの違いが、元利均等と元金均等の2方式です。
観察者メモ:利息は「その時点で残っている元本」にだけかかる。だから元本を早く減らせば、その分後の利息が減る——この単純な仕組みが、2つの方式の違いのすべてを説明します。
- 元利均等:毎月の「支払総額」を一定にする。当初は利息の比重が高く、元金はゆっくり減る。
- 元金均等:毎月の「元金返済額」を一定にする。利息は残元本に応じて減るため、支払総額は当初重く、年々軽くなる。
計算式の根拠①:元利均等の出し方
元利均等は、金融でいう「年金現価係数」を使った算出です。毎月の支払額(以下 M)は次の式で求まります。
ここで 月利 = 年利 ÷ 12、回数 = 年数 × 12 です。式の意味は「借入額を、毎月の支払 M を回数回だけ払ったときの現在価値(割引総額)に等しくする」というものです。結果として、M は最後まで一定になります。
例:借入3000万円・年利1.0%・35年
月利 = 1.0% ÷ 12 ≒ 0.08333% / 回数 = 35 × 12 = 420回
元利均等 M = 3000万 × 0.0008333 × (1.0008333)^420 ÷ ((1.0008333)^420 − 1) ≒ 約 80,990 円/月
計算式の根拠②:元金均等の出し方
元金均等は、もっと直感的です。毎月の元金返済額は常に「借入額 ÷ 回数」で、そこに「その時点の残元本 × 月利」の利息を上乗せします。
元金返済額は每月一定なので、残元本が減るにつれて利息が減り、支払総額は徐々に下がっていきます。
例:同じ条件(借入3000万・年1.0%・35年)
毎月の元金返済額 = 3000万 ÷ 420 ≒ 71,429 円
当初の利息(1回目) = 3000万 × 0.0008333 ≒ 25,000 円
当初の支払額(1回目) ≒ 71,429 + 25,000 = 約 96,429 円/月(以降、毎月数百円ずつ減少)
具体例:月々の支払額と総支払額を比べる
もっとも多い「借入3000万円・年利1.0%・35年」で、2方式を比べます。
| 項目 | 元利均等 | 元金均等 |
|---|---|---|
| 毎月の支払額(当初) | 約 80,990 円(一定) | 約 96,429 円(年々減少) |
| 毎月の支払額(最終年付近) | 約 80,990 円(一定) | 約 71,700 円 |
| 総支払額(元本+利息) | 約 3,412 万円 | 約 3,402 万円 |
| 払う利息の合計 | 約 412 万円 | 約 402 万円 |
注目すべきは2点。①元金均等のほうが総支払額(利息)は約10万円安いこと(理由:元本が早く減るため);②その代わり、元金均等は「当初の毎月の支払」が約1.5万円重いことです。この「当初重い」が、元金均等を選びにくくしている最大の理由です。
なぜ元利均等が主流なのか
銀行の多くが元利均等を標準にしているのは、「毎月の支払が一定」で家計設計がしやすいからです。住宅ローンの審査(返済負担率)も「毎月一定額」を前提にしているため、給与天引きや月々のやりくりを考えると元利均等のほうが馴染みやすいのです。
一方で元金均等は、当初の収入が十分にある(手取りに余裕がある)人や、「利息を極力払いたくない」人に向きます。例えばボーナスで毎年まとまった繰上返済をするなら、元金均等+繰上返済で総支払額をさらに抑えられます。
金利が高いと差はさらに開く
上の例は「年利1.0%(低金利)」のため差が約10万円にとどまりますが、金利が高いほど元金均等の有利さは拡大します。年利3.0%・同条件なら、総支払額は元利均等が約3,891万円、元金均等が約3,756万円で、差は約135万円に広がります。金利が上がる局面(変動金利など)では、方式の選び方が総支払額に効いてきます。
| 金利 | 元利均等 総支払額 | 元金均等 総支払額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 年1.0% | 約 3,412 万円 | 約 3,402 万円 | 約 10 万円 |
| 年2.0% | 約 3,645 万円 | 約 3,592 万円 | 約 53 万円 |
| 年3.0% | 約 3,891 万円 | 約 3,756 万円 | 約 135 万円 |
よくある誤解3つ
- 「元金均等のほうが絶対お得」と決めつける:総支払額(利息)は安いですが、当初の毎月の支払が重くなります。「手取りに余裕がないのに元金均等を選ぶ」と、生活が苦しくなるリスクがあります。総支払額だけでなく「毎月のキャッシュフロー」も天秤にかけてください。
- 「元利均等は損」と誤解する:元利均等でも、繰上返済をすれば元本が減り利息は抑えられます。また低金利(年1%台)なら2方式の差は数万〜数十万円程度と小さく、毎月のやりくりやすさを取るのは合理的な選択です。
- 「金利タイプ(固定・変動)と混同する」:返済方式(元利均等・元金均等)は「毎月の配分のルール」、金利タイプ(固定・変動)は「金利が変わるか」の話で別次元です。両方を組み合わせて考える必要があります(固定と変動どちらが得かの解説記事も参照)。
注意事項
本記事の数値は住宅ローンの基本算式(元利均等・元金均等)に基づく概算です。実際のご契約では、事務手数料・保証料・団体信用生命保険料、金利の優遇(引き下げ)の有無、ボーナス併用返済の有無、金利タイプ(固定・変動)による見直しなどで変動します。また「総支払額」は元本+利息のみで、諸費用(登記・抵当権設定・火災保険等)は含みません。正確な試算はご契約の金融機関の返済予定表でご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の金融アドバイスに代わるものではありません。
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