「住宅ローンは変動と固定、どっちが得?」総支払額で比べる|金利上昇時の月額試算と選ぶ基準
「住宅ローン、変動にするか固定にするか」——契約前のだれもが突き当たる最大の分かれ道です。金融機関の説明を聞くと「変動のほうが金利が低くてお得」「いや固定のほうが安心」と両論あり、ネットの比較記事も「今は変動が有利」で終わるものが多く、「じゃあ変動一択か?」「金利が上がったらどうなるの?」という核心が書かれていないことがほとんどです。
この記事では、借入3000万円・35年(420回)を例に、変動(現行0.3%)と固定(全期間2.0%)を総支払額と、金利上昇時の月額の動きで比べます。自分の数字で即座に出したい場合は 住宅ローン計算ツール に金額と金利を入れて確かめられます(入力はどこにも送信されません)。
結論:変動は「今の月額が安い」が「金利上昇リスク」がある。どちらが得かは金利の行方次第
| 種類(金利) | 月額 | 総支払額 | 支払利息 |
|---|---|---|---|
| 固定(全期間)2.0% | 約99,379円 | 約4,173万円 | 約1,174万円 |
| 変動 0.3%(現行) | 約75,253円 | 約3,161万円 | 約160万円 |
| 差(変動が少ない分) | 約24,126円 | 約1,013万円 | 約1,014万円 |
2026年時点の金利なら、変動のほうが月額で約2.4万円、総支払で約1013万円安い計算です。ただし変動は金利が上がると月額も上がるため、この「安さ」は金利が据え置かれる間だけのものです。決め手は、「金利が上がって月額が跳ねても家計が耐えられるか」です。
ステップ1:固定(全期間)の総支払を計算する
住宅ローンは日本でほぼ100%元利均等返済です。毎月の返済額は次式で決まります。
月返済額 = 借入額 × 月利 ×(1+月利)^回数 ÷((1+月利)^回数 − 1)
※ 月利 = 年利 ÷ 12、回数 = 返済月数
借入3000万円を固定2.0%・420回(35年)で組むと、月利は 2.0%÷12 ≒ 0.1667%。これを当てはめると
月返済額 = 30,000,000 × 0.001667 ×(1.001667)^420 ÷((1.001667)^420 − 1)
≒ 99,379円
35年間(420回)払い続けると総支払額は 99,379 × 420 ≒ 41,739,109円。借入3000万円との差 11,739,109円 が、このローンに払う利息の総額です。式の分解は 住宅ローン均等返済の式を分解した記事 で確認できます。
ステップ2:変動(現行0.3%)の月額
同じ条件で金利を0.3%にすると、月利は 0.3%÷12 = 0.025%。
月返済額 ≒ 75,253円 (総支払 75,253 × 420 ≒ 31,606,304円、利息約160万円)
固定2.0%との差は月額24,126円。これが変動の最大の魅力、「今の支払いの安さ」です。ただし変動金利は店頭金利からの引き下げ幅(優遇)が変わらなければ金利は動かないものの、マーケット金利の上昇で店頭金利自体が上がれば、数年後にこの0.3%は維持されません。
ステップ3:変動の「金利上昇シナリオ」で月額がどう動くか
変動金利は原則5年ごとに見直されます。簡略化して「金利上昇分を直ちに月額に反映した」場合、次のように動きます(いずれも借入残高と残期間で再計算)。
| 期間 | 金利 | その時点の月額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1〜5年目 | 0.3% | 約75,253円 | 固定より約2.4万円安い |
| 6〜10年目 | 1.0% | 約83,320円 | 固定より約1.6万円安い |
| 11年目以降 | 2.0% | 約93,707円 | 固定2.0%より約0.6万安い |
金利が0.3%→1.0%→2.0%と上がっても、月額は最高で約9.4万円まで。固定2.0%の約9.9万円には届きません。つまり「緩やかに、しかも2%程度までの上昇に留まる」なら、変動の月額はずっと固定より安いままです。このシナリオでの変動の総支払は、固定2.0%より約411万円低くなります。
ステップ4:変動で「損」するのはどんなときか
逆に、金利が2.5%を超え、しかも長期間高止まりする場合は話が変わります。比較のため、固定をやや低い1.5%(フラット35の低い目の水準)とした総支払は 約3,858万円 です。これに対し
- 変動が最終2.0%に留まる:初期の0.3%の蓄積で総支払は固定1.5%より低くなる(約3763万円)
- 変動が2.5%超まで上がる:初期の安さを金利上昇が食いつぶし、固定1.5%を上回る総支払になる
つまり変動が「得か損か」の分かれ目は、「低金利の数年がどれだけ長く続くか、その後どこまで上がるか」です。歴史的に変動は長く低金利が維持される傾向がありましたが、2026年は金利上昇局面にあるため、将来の上昇をゼロとはできません。
ステップ5:変動の仕組み「5年ルール・125%ルール」の注意点
変動金利には、むやみに月額が跳ねないよう2つのクッションがあります。
- 5年ルール:金利を見直すのは原則5年ごと。その間は金利が動いても月額は変わりません。
- 125%ルール:5年後の見直しでも、新しい月額が「現行の125%」を超えない範囲で据え置かれます。それでも収まらない分は、月額を据え置いたまま返済期間を延ばす形で吸収されます。
罠の核心:この仕組みのおかげで「突然月額が倍になる」ことは防がれますが、支払総額や期間が想定より膨らむ方向に働きます。つまり「月額は抑えられたけど、ローンが終わるのが2年延びた」「総支払が増えた」という形でコストが回ってきます。目先の月額だけでなく、最終的な支払総額も意識する必要があります。
ステップ6:手取りに占める負担で考える
ローンの判断では「総支払」より「月額が手取りの何割か」が直感的に効きます。年収500万円の会社員の手取りは月約30.8万円(年約370万円)なので、手取り計算ツール の目安で当てはめると
変動0.3%(月75,253円)÷ 手取り308,333円 ≒ 24.4%
固定2.0%(月99,379円)÷ 手取り308,333円 ≒ 32.2%
このサイトの 手取り計算ツール で自分の年収の手取りを出し、住宅ローンの月負担が何割になるか確認するのが確実です。
よくある誤算4つ
- 「変動だからいつか損する」と決めつける:金利が緩やかな上昇に留まれば、初期の安さで総支払は固定を下回ることもあります。損するのは「2.5%超への長期高止まり」という特定のシナリオです。
- 「固定なら安心」と総支払を無視する:固定2.0%は変動現行より総支払で約1013万円高く、利息分がそのまま家計から出ます。安心の対価としてのコストを自覚します。
- 目先の月額だけで決める:変動の125%ルールで月額は抑えられても、期間延長や総支払増という形でコストが回ってきます。最終的な支払総額も見積もります。
- 手取りへの負担率を考えない:固定は手取りの約32%を35年占めるため、ボーナスなし世帯やこれから子育て・教育費がかかる世帯では余力を奪います。借入可能額の目安は 住宅ローンの借入可能額の計算記事 も参照してください。
関連ツールで自分の数字を確かめる
月額と総支払は 住宅ローン計算ツール、自分の年収の手取りは 手取り計算ツール で確かめられます。金利上昇に備えて繰り上げ返済を検討するなら 繰り上げ返済で利息を減らす記事 や 繰り上げで期間を短縮する記事、頭金で借入を減らす効果は 頭金の計算記事、年末調整の還付は 住宅ローン控除の記事 が参考になります。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は借入3000万円・35年(420回)・固定2.0%・変動0.3%→1.0%→2.0%(簡略モデル)を前提とした単純なシミュレーションです。実際の金利は金融機関・時期・ご本人の審査(優遇幅)で大きく変わります。変動金利の「5年ルール・125%ルール」の運用、金利の将来予測、ボーナス併用の有無、諸費用(頭金・手数料・火災保険等)も含めた総負担は本記事の範囲外です。また金利は税制・物価・経済環境に左右され、過去の傾向が将来も続くとは限りません。最終的な契約は、必ず各金融機関の見積書の「月額」と「総支払額」、およびご自身の家計の余力でご自身で判断してください。本記事は情報提供を目的とし、個別の借入・契約判断に代わるものではありません。
よくある質問
住宅ローンは変動と固定どちらが得ですか?
2026年時点の金利なら「今の支払額」では変動が有利です。借入3000万円・35年で、固定(全期間)2.0%の月額約9.9万円に対し、変動0.3%は月額約7.5万円と約2.4万円安く、総支払でも約1013万円安くなります。ただし変動は金利上昇時に月額が上がるリスクがあるため、「得」かどうかは金利の行方と、ご自身のリスク耐性で決まります。
変動金利が上がると月額はいくらになる?
借入3000万円・35年の例で、現行0.3%から5年後に1.0%に、さらに5年後に2.0%に上がると、月額は0.3%時の約7.5万円→1.0%で約8.3万円→2.0%で約9.4万円に上昇します。固定2.0%の月額(約9.9万円)までは届きませんが、当初より約1.9万円増えるため、家計の余力が問われます。
変動で損するのはどんなとき?
金利が2.5%超にまで上がり、しかも長期間高止まりする場合です。固定をやや低い1.5%(総支払約3858万円)と比べると、変動が最終的に2.0%に留まるなら初期の安さで総支払は下回りますが、2.5%超まで上がると逆転します。「低金利の数年が長く続くか、早く高くなるか」が分かれ目です。
変動の「5年ルール・125%ルール」とは?
変動金利は原則5年ごとに見直されます(5年ルール)。金利が上がっても、直ちに全額が反映されるわけではなく、新しい月額が現行の125%以内に収まる範囲で据え置かれる(125%ルール)、あるいは月額を据え置いたまま返済期間が延びる仕組みがあります。つまり急な月額急増は抑えられますが、支払総額や期間が想定より膨らむ方向に働きます。
手取りから考えると負担は何割?
年収500万円(手取り月約30.8万円)の世帯なら、変動0.3%の月額約7.5万円は手取りの約24%、固定2.0%の約9.9万円は約32%になります。月額2.4万円の差は手取りの約8%分。変動から固定へ切り替えると、手取りの約8%が家計から長期間消える計算になるため、余力が乏しい世帯ほど固定の重みがきつくなります。