住宅ローンの繰上返済で総利息はいくら減る? 借入4000万・0.9%・35年で500万円繰上なら約164万円減・完済4.9年早く——期間短縮型と返済額軽減型の違い・タイミング・控除とのトレードオフ
「ボーナスで200万円まとまった。住宅ローンの繰上返済に回すべき? それとも貯金や投資に回すべき?」——この悩みは、住宅ローンを組んだ人なら誰しも一度は抱きます。ネットで「繰上返済 おすすめ」と検索すると「総利息が減ってお得」という結論はすぐ出てきますが、「借入4000万円・金利0.9%・35年のケースで、具体的にいくら利息が減り、完済が何年早まるのか」を数式と具体数値で示したページは意外に少ないものです。
この記事では、繰上返済によって総利息が1円単位でいくら減るかを、元利均等返済の公式から順に追います。さらに、「期間短縮型」と「返済額軽減型」という2つの繰上方法の違い、繰上するタイミング(1年目と10年目で効果が2倍以上違う理由)、そして多くの解説が見落としている「住宅ローン控除が減る」「運用とのトレードオフ」という2つの注意点を数値で示します。
そもそも「繰上返済」とは何か
繰上返済とは、毎月の返済とは別に、まとまったお金(ボーナス・退職金・貯蓄の一部)を残高(元本)の返済に直接充てることです。住宅ローンは「残高に対して毎月利息がかかる」仕組みなので、残高を一気に減らせば、その後かかる利息が丸ごと減るのが最大のメリットです。
ポイントは、繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2通りがあること。どちらを選ぶかで、手元に残る効果が大きく変わります(後述)。
計算式の根拠——元利均等の公式から残高削減まで
住宅ローンの多くは「元利均等返済」です。毎月の返済額(m)は次の公式で決まります。
m = P × r × (1+r)^n ÷ {(1+r)^n − 1}
- P = 借入元本(例:40,000,000円)
- r = 月利(年利0.9% ÷ 12 = 0.00075)
- n = 返済回数(35年 × 12 = 420回)
借入4000万円・年0.9%・35年を当てはめると、毎月の返済額は111,060円になります(総支払額 46,645,079円、うち総利息 6,645,079円)。
繰上返済は、この「残高」から直接額を引く動きです。残高が減れば、次月以降の利息(残高×月利)が減り、その分だけ総利息が削れます。これがすべての計算の出発点です。
具体例:借入4000万円・年0.9%・35年の場合
繰上返済額を変えて、総利息の減り方と完済時期の短縮を計算しました(いずれも1年目の暮れに繰上、手数料は0円と想定)。
| 繰上額 | 方法 | 総利息の減少 | 完済時期 | 新しい月額 |
|---|---|---|---|---|
| なし(ベース) | — | — | 35年(420回) | 111,060円 |
| 100万円 | 期間短縮型 | 352,140円 | 34.0年(▲1.0年) | 111,060円(そのまま) |
| 300万円 | 期間短縮型 | 1,019,959円 | 32.0年(▲3.0年) | 111,060円(そのまま) |
| 500万円 | 期間短縮型 | 1,640,581円 | 約30.1年(▲4.9年) | 111,060円(そのまま) |
| 100万円 | 返済額軽減型 | 161,163円 | 35.0年(据置) | 108,214円(▲2,846円) |
| 300万円 | 返済額軽減型 | 483,489円 | 35.0年(据置) | 102,522円(▲8,538円) |
| 500万円 | 返済額軽減型 | 805,814円 | 35.0年(据置) | 96,830円(▲14,230円) |
期間短縮型は「月々の負担はそのままに、完済を早める」方法。500万円なら総利息が約164万円(24.7%)も減り、約4.9年早く完済になります。一方、返済額軽減型は「完済時期は変わらないが、毎月の負担を減らす」方法で、利息の減り方は期間短縮型の半分程度(500万円で約80万円減)です。
どちらを選ぶべきか——「期間短縮型」が有利な理由
同じ500万円の繰上でも、期間短縮型(利息減164万円)のほうが、返済額軽減型(利息減80万円)の2倍以上利息を減らせます。理由はシンプルです。
- 期間短縮型は、残高を減らしたうえで「同じ月額を長く払い続ける」ため、浮いた期間分の利息がまるごと削れる。
- 返済額軽減型は、残高を減らしたぶん「月額を下げて終わる」ため、残りの期間は少ない利息しか浮かない。
原則として、「なるべく早く借金をゼロにしたい」「将来の金利上昇リスクを減らしたい」なら期間短縮型が有利です。ただし、毎月の家計に余裕がなく「今の月額を下げたい」事情がある場合は、返済額軽減型も現実的な選択です。
タイミングが効く——「早いほうが何倍も得」な理由
繰上返済は「返済の早い時期ほど効果が大きい」という性質があります。なぜなら、元利均等では「最初のほうが残高が高く、かかる利息の絶対額が大きい」からです。残高が高いうちにまとまった額を入れれば、その後何年もかかるはずだった高い利息を根本から断てます。
同じ500万円の繰上(期間短縮型)を、いつ行うかで比べました。
| 繰上のタイミング | 総利息の減少 | 完済の短縮 |
|---|---|---|
| 1年目(12ヶ月目) | 1,640,581円 | 約4.9年 |
| 10年目(120ヶ月目) | 1,134,629円 | 約4.6年 |
| 20年目(240ヶ月目) | 616,690円 | 約4.2年 |
500万円の繰上でも、1年目と20年目では利息減が約100万円(1.6倍)も違います。ボーナス等の余剰資金があるなら、迷わず最初のほうのタイミングで繰り上げるのが鉄則です。なお、繰上返済の手数料(金融機関によっては無料枠あり)や、「いつでも繰上可能か」という要件は契約によって異なるため、事前にご自身のローン条件を確認してください。
見落としがちな注意点①——住宅ローン控除が減る
繰上返済のデメリットの一つが、住宅ローン控除額(税金の還付)が減ることです。控除額は「年末残高×0.7%(上限額あり)」で決まるため、残高を繰上で減らすと、その分だけ控除される税額も下がります。
例えば借入4000万円なら初年度の控除額は約28万円(4000万×0.7%)ですが、500万円を繰り上げて残高3500万円になれば初年度は約24.5万円(▲3.5万円)に。ただし、これは「繰上で節減できる利息(約164万円)」と比べれば十分に小さいので、一般的には繰上返済を選ぶほうが得になります。控除の詳しい計算式は住宅ローン控除額の計算記事、受けられる条件は控除の要件の記事で確認できます。
見落としがちな注意点②——「運用」とのトレードオフ
繰上返済の最大の機会費用は、「その資金を別で運用していたらどうなったか」です。繰上返済の実質的な利回りは、ざっくり「ローンの金利(と同等の節税効果)」に等しいといえます。つまり、ローン金利0.9%なら、繰上返済は「年0.9%の確実な利回り」を得るのと同義です。
- 低金利時代(今の0.9%程度)なら、安全運用(普通預金・低リスク)より繰上返済が有利なことが多い。
- 高金利のローン(例:2%以上)ならなおさら繰上返済が有利(年2%の確実な節減)。
- 一方、つみたてNISA等で年3〜5%の運用が見込めるなら、繰上より運用のほうが資産が増える可能性が高い。ただし運用は元本変動リスクがある。
言い換えれば、「ローン金利 > 自分の運用想定利回り」なら繰上返済、「ローン金利 < 運用利回り」なら運用が基本の分岐です。どちらが得かは複利積立シミュレーションと住宅ローン計算ツールでご自身の数字で比べられます。
変動金利なら「効果が薄れる」場合も
変動金利型の場合、繰上返済で残高を減らしても、5年ごとの金利見直しで返済額が上がるリスクは残ります。また金利自体が上昇すれば、残りの残高にかかる利息が増え、繰上の効果が一部相殺されます。変動金利の金利上昇インパクトは変動金利上昇シミュレーション、固定と変動のどちらを選ぶかは固定vs変動どちらが得の記事で計算根拠つきにまとめています。
自分の数字で試すなら
上の計算はすべて 住宅ローン計算ツール と同じロジック(元利均等の公式)に基づいています。借入額・金利・期間を入力すれば、毎月の返済額と総利息・総支払額が即座に出ます(繰上返済そのもののシミュレーション機能は現在のツールにはないため、本記事の早見表を目安にしてください)。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
- 住宅ローンの総支払額と総利息を計算した記事——元利均等の公式と金利・期間・借入額別の早見表。
- 変動金利上昇シミュレーションの記事——金利上昇が月額・総利息に与える影響。
- 固定vs変動どちらが得の記事——均等本息計算式・5年/125%ルール。
- 住宅ローン控除額の計算記事——年末残高×0.7%の控除額。
- 住宅ローンの実質金利の記事——インフレ差し引きの視点。
- 住宅ローン計算ツール——借入額・金利・期間から月額と総支払額を即計算。
- 複利積立シミュレーション——繰上資金を運用した場合の将来額との比較に。
注意事項
本記事の数値は、借入額4000万円・年利0.9%・期間35年・元利均等返済・繰上返済手数料0円を前提とした概算です。実際の総利息の減り方は、借入額・金利タイプ(固定/変動/混合型)・返済方法(元利均等/元金均等)・繰上返済の種類(期間短縮/返済額軽減)・手数料の有無・いつ繰り上げるか・ボーナス返済の有無によって数万〜数百万円単位で変わります。また繰上返済は金融機関ごとに「いつでも可」「年1回まで」「最低金額(例:10万円以上)」「手数料(無料枠あり)」などの要件があり、一部繰上か全額繰上かでも条件が異なります。住宅ローン控除の上限額・控除率は特例措置の期間によって変動します。正確な試算と要件は、ご自身のローン契約書・金融機関・お住まいの自治体、および国税庁の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の住宅ローン相談や税務助言に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
繰上返済すると総利息はいくら減りますか?
借入4000万円・年0.9%・35年(元利均等)の場合、500万円を1年目に繰上返済(期間短縮型)すると総利息は約164万円減り、完済が約4.9年早まります。100万円なら約35万円減(1.0年短縮)、300万円なら約102万円減(3.0年短縮)です。繰上額が大きいほど、また早い時期に行うほど効果は大きくなります。
期間短縮型と返済額軽減型、どちらを選ぶべきですか?
原則として期間短縮型が有利です。同じ500万円の繰上でも、期間短縮型は総利息が約164万円減るのに対し、返済額軽減型は約80万円減(月額だけが14,230円下がる)にとどまります。早く借金をゼロにしたい・金利上昇リスクを減らしたいなら期間短縮型、今の月額を下げたい事情があるなら返済額軽減型、という使い分けです。
繰上返済はいつするのが一番得ですか?
できるだけ早い時期(返済の初めのほう)が得です。元利均等では最初のほうが残高が高くかかる利息が大きいため、残高が高いうちにまとまった額を入れるとその後何年もかかる高い利息を根本から断てます。500万円の繰上でも、1年目(利息減約164万円)と20年目(同約62万円)では約100万円もの差が生じます。
繰上返済すると住宅ローン控除は減りますか?
減ります。控除額は「年末残高×0.7%」で決まるため、残高を繰り上げて減らすと控除税額も下がります(例:4000万円→3500万円で初年度控除が約28万円→約24.5万円)。ただし、これは繰上で節減できる利息(約164万円)と比べれば十分に小さいため、一般的には繰上返済を選ぶほうが得になります。
繰上返済と運用、どちらが得ですか?
ローン金利と運用の想定利回りで決まります。繰上返済の実質利回りは「ローン金利(と同等の節税効果)」に等しいので、今のように金利0.9%程度なら安全運用より有利なことが多く、金利2%以上ならなおさら有利です。一方、つみたてNISA等で年3〜5%の運用が見込めるなら運用のほうが資産が増える可能性があります(元本変動リスクあり)。「金利>運用想定利回り」なら繰上、「金利<運用利回り」なら運用が基本の分岐です。
変動金利の場合、繰上返済の効果は薄れますか?
場合によっては薄れます。変動金利型は5年ごとの金利見直しで返済額が上がるリスクが残り、金利自体が上昇すれば残りの残高にかかる利息が増え繰上の効果が一部相殺されます。固定金利なら繰上の効果が確実に残ります。金利タイプごとの違いは固定vs変動の比較記事で確認できます。