住宅ローン 固定と変動、どちらが得? 毎月返済額の計算式(均等本息)と、変動の「5年ルール・125%ルール」・金利上昇シミュレーション(具体数値例つき)
「住宅ローン、固定と変動どっちにすればいいの?」——多くの人が最初にぶつかる壁です。変動のほうが金利が低くて毎月の返済額が安いから「変動でいいや」となりがちですが、将来金利が上がったらどうなるのか、不安を感じる人も多いはずです。ネットで「固定 変動 どちらが得」「住宅ローン 金利 比較」と調べても、「なぜ変動の月額が安いのか」「金利が上がったとき実際にいくら増えるのか」を、計算式の根拠つきで追っているページは意外と少ないものです。
この記事では、①固定金利と変動金利の毎月返済額の出し方(均等本息の計算式)、②変動金利に特有の「5年ルール」「125%ルール」、③金利が上がったときのシミュレーションを、具体数値例とともに示します。結論から言えば、「変動の安さ」の裏には「5年ごとの金利見直しリスク」があり、金利環境で有利・不利が逆転するため、単純に「変動のほうが得」とは言い切れません。
ステップ1:毎月返済額の計算式(均等本息)——固定も変動も同じ式
住宅ローンの標準的な返済方式は「均等本息(きんとうほんき)」です。毎月の返済額が一定で、最初は利息の割合が多く、徐々に元本の割合が増えていく方式です。固定金利でも変動金利でも、返済額を出す式は同じです。
ここで、月利 = 年利 ÷ 12、返済回数 = 期間(年) × 12 です。括弧でくくった (1 + 月利)^返済回数 という「元利係数」が、利息の効き方を決めます。
借入3,000万円・期間35年(420回)で、固定金利年1.0%(月利 0.1%/12 ≒ 0.0008333)の場合を計算します。
元利係数 = (1 + 0.0008333)^420 ≒ 1.4239
月額 = 30,000,000 × 0.0008333 × 1.4239 ÷ (1.4239 − 1) ≒ 79,289円
同条件で変動金利年0.5%(月利 0.0041667/12)の場合、
月額 = 30,000,000 × 0.0004167 × 1.1919 ÷ (1.1919 − 1) ≒ 76,084円
金利が半分(1.0% → 0.5%)になると、月額は約3,200円下がります。これが「変動のほうが安い」と言われる理由です。
ステップ2:借入額・期間を変えた「月額早見表」
固定金利年1.0% と 変動金利年0.5% で、借入額と期間ごとの月額を比べます(いずれも35年返済の元利均等)。
| 借入額 | 固定1.0%(月額) | 変動0.5%(月額) | 変動との差(月) | 変動との差(年) |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 52,859円 | 50,723円 | −2,136円 | −25,632円 |
| 3,000万円 | 79,289円 | 76,084円 | −3,205円 | −38,460円 |
| 4,000万円 | 105,719円 | 101,445円 | −4,274円 | −51,288円 |
| 5,000万円 | 132,148円 | 126,806円 | −5,342円 | −64,104円 |
変動のほうが年間で数万円安くなりますが、これはあくまで「現在の低金利が続いた場合」の話です。変動の最大の特徴は、この金利が将来変わり得る点にあります。
ステップ3:変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」——ここが固定との決定的な違い
変動金利は、契約時の金利がずっと固定されるわけではありません。2つのルールを理解しないと、後でとんでもないことになります。
① 5年ルール(5年ごとの金利見直し)
変動金利は原則5年ごとに金利を見直し、見直し時に「新しい金利」で残りの返済額(または期間)が再計算されます。ただし、5年以内に金利が上がっても、その間の月額は見直し前のままです(急な負担増を避けるため)。
② 125%ルール(月額の急増を抑制)
金利が上がって再計算した結果、月額が大きく増えても、見直し時の月額は「前回の月額の1.25倍(125%)」までしか上げられません。超えた分は「据置(とりおき)」として後回しにされ、完済時に一括(または期間延長で)精算されます。
例えば月額76,084円の変動ローンが、5年後に金利上昇で「本来120,000円になる計算」だった場合、すぐには120,000円にならず、上限の95,105円(76,084×1.25)までしか上がらず、差額の24,895円は据置(後払い)になります。ただし、次の5年見直しでも120,000円のままなら、さらに1.25倍の118,881円まで上がり……と、じわじわ實質負担が増えていきます。
ステップ4:金利が上がったとき、実際にいくら増えるか(シミュレーション)
借入3,000万円・期間35年・変動金利0.5%スタート(月額76,084円)を前提に、5年後に金利が上がったケースをシミュレーションします。5年経過時点の残高は約2,730万円(元本返済が進むため)とし、残り30年(360回)で再計算します。
| 5年後の変動金利 | 再計算月額(据置前) | 125%ルール適用後 | 増減(月) |
|---|---|---|---|
| 0.5%(据置なし) | 76,084円 | 76,084円 | ±0円 |
| 1.0% | 92,262円 | 95,105円(上限) | +19,021円 |
| 1.5% | 108,285円 | 95,105円(上限) | +19,021円(残り据置) |
| 2.0% | 124,156円 | 95,105円(上限) | +19,021円(残り据置) |
金利が2.0%(4倍)まで上がっても、125%ルールで月額の増加は「+19,021円」に抑えられます。しかし再計算月額(124,156円)との差額約29,000円/月は据置になり、後で精算されます。金利がずっと高いままなら、次の5年見直しでさらに上がり、結果として総返済額は固定金利よりずっと多くなる可能性があります。
逆に金利が下がれば、変動の月額はすぐに下がります(5年ルールの見直しを待たず、多くの商品は毎月の約定で金利低下分が反映されます)。「金利が下がるなら変動が圧勝、上がるなら固定が安全」というのが、このシミュレーションから読み取れる正体です。
自分の数字で固定と変動を比べる
ご自身の借入額・期間・金利で、固定と変動(および変動の金利上昇後)を比べます。すべてブラウザ内で計算され、入力内容が外部に送信されることはありません。
ステップ5:よくある誤算と、選び方の目安
- 「変動のほうが金利が低いから得」と決めつける:今の低金利が続くならそうですが、変動は5年ごとに見直されます。金利が上がる環境なら、固定のほうが総返済額を確実に抑えられます。
- 「125%ルールがあるから急増は安心」と思う:月額の急増は抑えられますが、据置分は後で精算され利息が付きます。長期で見れば総額は増えます。
- 「金利低下の恩恵は変動だけ」と思う:固定金利にも、「全期間固定(借換などで見直し可)」と「期間限定固定(例:10年固定)」があります。期間限定固定はその期間中は金利変動なし、期間後の見直し時点で当時の金利になります。
- 「繰上げ返済で金利リスクは消える」:繰上げ(期間短縮・元本削減)は総利息を減らす強力な手段ですが、変動の「金利上昇そのもの」を止めるものではありません。リスクを減らすなら金利タイプ選びと併用を。
どちらを選ぶかの目安
| こんな人 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 金利上昇を絶対避けたい・将来の支出を確定させたい | 固定(全期間・長期) | 返済額が契約時点で確定し、金利リスクゼロ |
| 今の低金利を活かし、繰上げ返済で早く終わらせる自信がある | 変動 | 低金利の恩恵を最大限受け、繰上げで期間を短縮すればリスクも減る |
| 当初数年は家計に余裕がないが、数年後には収入増を見込む | 期間限定固定(例:5・10年) | 固定の安心感と、期間後の金利環境を見て再選択の余地 |
迷うなら、「変動で借りて、余裕ができたら繰上げ返済で元本を減らす」という戦略も一般的です。金利タイプの選択以上に、総借入額と返済期間を現実的に抑えることが、金利リスクへの最強の防御になります。
関連する計算・ツール
- 住宅ローン計算ツール:借入額・金利・期間から月々の返済額を即算出。
- 繰上げ返済でどれだけ得かの記事:元本を減らすと総利息がどう下がるか。
- 実質金利を比べた記事:手数料・期間を含めた「本当の金利」の出し方。
- 住宅ローン控除の記事:年末残高の一定割合が所得税から戻る仕組み。
- 手取り計算ツール:毎月の返済額が手取りに占める割合の確認に。
注意事項
本記事の数値は、住宅ローンの均等本息返済の計算式(借入額×月利×(1+月利)^回数÷{(1+月利)^回数−1})、および変動金利の「5年ルール(5年ごとの金利見直し)」「125%ルール(月額上限=見直し前×1.25)」を前提とした単純計算です。実際の金利(固定・変動の水準)は金融機関・商品・時期によって異なります。変動金利の見直しは商品により「5年ごと」のほか、毎月の約定で金利変動分を反映するものなどがあり、125%ルールの適用タイミングや据置の精算方法も商品により異なります。シミュレーションの「5年後の残高」は当初金利・均等本息で概算しており、ボーナス返済や繰上げがある場合は異なります。住宅ローンのご契約は、各金融機関の重要事項説明書・契約条件を必ずご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別のローン相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
住宅ローンの毎月返済額はどうやって計算しますか?
標準的な「均等本息」方式では「借入額 × 月利 × (1+月利)^返済回数 ÷ {(1+月利)^返済回数 − 1}」で出ます(月利=年利÷12、返済回数=期間×12)。借入3,000万円・35年・固定1.0%なら月額約79,300円、変動0.5%なら約76,100円です。
変動金利の「5年ルール」とは何ですか?
変動金利は原則5年ごとに金利を見直し、見直し時に「新しい金利」で残りの返済額(または期間)が再計算されるルールです。5年以内に金利が上がっても、その間の月額は見直し前のまま据え置かれます。
「125%ルール」は何を意味しますか?
金利上昇で再計算した月額が大きくなっても、見直し時の月額は「前回の月額の1.25倍(125%)」までしか上げられないルールです。超えた分は据置(後払い)になり、完済時や次の見直しで精算されます。月額の急増を抑えるもので、総返済額の増加を防ぐものではありません。
金利が上がると実際にいくら増えますか?
借入3,000万円・35年・変動0.5%スタート(月額約76,100円)で、5年後に2.0%(4倍)まで上がった場合、再計算月額は約124,000円になりますが、125%ルールで月額は上限約95,100円までの増加(約19,000円増)に抑えられます。ただし差額約29,000円/月は据置になり後で精算されます。
固定と変動、どちらを選ぶべきですか?
金利上昇を絶対避けたいなら固定(全期間・長期)、今の低金利を活かし繰上げ返済で早く終わらせる自信があれば変動、当初数年は余裕がなく数年後収入増を見込むなら期間限定固定——という目安があります。何より「総借入額と期間を現実的に抑える」ことが金利リスクへの最強の防御です。
変動の「安さ」は本当にお得ですか?
今の低金利が続くなら、変動のほうが毎月の返済額が安く得です。しかし変動は将来の金利上昇リスクと引き換えにその安さを得ています。金利環境が上昇に転じると、固定のほうが総返済額を抑えられる可能性が高くなります。