老齢基礎年金はいくらもらえる? 満額の計算式(1/3×780,500円×納付月数/480)と、繰下げ(0.7%/月)・繰上げ(0.5%/月)の増減計算(具体数値例つき)
「国民年金を40年払ってきたけど、いざ65歳になったら実際に月いくらもらえるんだろう?」「保険料を滞納した時期があるから、満額より少なくなるんじゃないか」——老後資金の柱になる「老齢基礎年金」ですが、ネットで「老齢基礎年金 計算」「年金 いくらもらえる」と検索する人は多いものの、「なぜ自分の年金が満額(約78万円)より少ないのか」を計算式の根拠つきで追っているページは意外と少ないものです。
この記事では、現行の国民年金法に基づき、①老齢基礎年金の「満額」の出し方、②納付月数で満額の何割になるかの計算式、③繰下げ(遅らせて増額)と繰上げ(早めて減額)の増減率、を整理します。保険料を20年・30年・35年払った場合の「もらえる月額」の具体例と、「満額=全員同じ月78万円」という誤解の正体まで、1円単位の数値例で確認します。
ステップ1:老齢基礎年金とは何か(厚生年金とは別の「底」)
日本の公的年金は大きく「基礎年金(国民年金)」と「厚生年金」の2階建てになっています。会社員・公務員はこの両方を払い(厚生年金に加入すると同時に国民年金の第2号被保険者として扱われ)、自営業や学生・無職の方は国民年金(基礎年金)のみを払います。
老齢基礎年金とは、この「基礎年金」のうち、65歳からもらえる老齢給付のことです。会社員の方は、これに老齢厚生年金(報酬比例部分)が上乗せされて月額が決まります(厚生年金の年金額計算は厚生年金の年金額を計算した記事で解説)。この記事では、すべての人がベースとして持つ「老齢基礎年金の額」に絞って計算します。
ステップ2:満額の計算式——なぜ「780,500円」なのか
老齢基礎年金の額は、次の式で決まります(国民年金法第29条の2)。
ここで「満額」とは、保険料を40年(480ヶ月)全額納めたときの額です。計算の起点が「満額の1/3」になっているのは、「40年かけて満額に達する設計」だからです。つまり「満額の1/3(=月額260,166円相当)を基準に、どれだけの月数を納めたかで按分する」という仕組みです。
| 項目 | 令和7年度の数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金 満額(月額) | 780,500円 | 毎年度、物価・賃金スライドで改定 |
| その1/3(計算式の基準) | 260,166円 | 780,500 ÷ 3 |
| 満額に必要な納付月数 | 480ヶ月(40年) | 20歳〜60歳の全期間 |
※ 満額(780,500円)は令和7年度の金額です。基礎年金の「満額」は毎年度の物価・賃金の動向で改定されるため、年度によって数円〜数百円前後変動します。最新の額は日本年金機構の公表値でご確認ください。
ステップ3:具体数値例——納付年数別の「もらえる月額」早見表
満額780,500円を基準に、納付月数(=保険料を払った年数×12)ごとの月額を計算します。いわゆる「フル納付(40年)」と比べて、期間が短いとどう下がるかがわかります。
| 保険料を払った期間 | 納付月数 | 満額に対する割合 | 月額(計算値) | 年額(×12) |
|---|---|---|---|---|
| 40年(全期間) | 480ヶ月 | 100%(満額) | 780,500円 | 9,366,000円 |
| 35年 | 420ヶ月 | 87.5% | 683,938円 | 8,207,256円 |
| 30年 | 360ヶ月 | 75.0% | 585,375円 | 7,024,500円 |
| 25年 | 300ヶ月 | 62.5% | 487,813円 | 5,853,756円 |
| 20年 | 240ヶ月 | 50.0% | 390,250円 | 4,683,000円 |
| 15年 | 180ヶ月 | 37.5% | 292,688円 | 3,512,256円 |
| 10年(受給資格の下限) | 120ヶ月 | 25.0% | 195,125円 | 2,341,500円 |
計算式は単純です。例えば「30年(360ヶ月)払った」場合、
「満額の1/3(260,166円)」×「納付月数の割合(360/480=0.75)」で出ます。つまり「40年のうち何割払ったか」が、そのまま満額に対する割合になるのが、この計算式の直感です。
ステップ4:繰下げ(遅らせて増額)の計算——月0.7%ずつ上がる
老齢基礎年金の支給は原則65歳からですが、受給開始を66歳・70歳・最大75歳まで遅らせる(繰下げ)ことができます。遅らせたぶんだけ、もらえる額が増えます。
つまり1年(12ヶ月)遅らせると 12 × 0.7% = 8.4% 増額、5年遅らせると 42% 増額、最大の10年(120ヶ月)遅らせると 84% 増額されます(繰下げは最大75歳まで、120ヶ月まで)。
満額(780,500円)を1年繰下げた場合を式で確認します。
35年納付(683,938円)の人が1年繰下げした場合は、
繰下げは「一生涯」その増額後の額が続くため、長生きするほど有利になりやすいのが特徴です(詳しくは繰下げと繰上げの増減額を比べた記事も参照)。
ステップ5:繰上げ(早めて減額)の計算——月0.5%ずつ下がる
逆に、65歳より早い60歳〜64歳で受給を始める(繰上げ)こともできます。そのぶんだけ、もらえる額は減ります。
1年(12ヶ月)早めると 12 × 0.5% = 6% 減額、最大の5年(60ヶ月)早めると 30% 減額されます(繰上げは最大60ヶ月(5年)まで)。
満額(780,500円)を1年繰上げた場合を式で確認します。
35年納付(683,938円)の人が1年繰上げした場合は、
ステップ6:カスケード計算——「納付月数」と「繰下げ/繰上げ」の掛け合わせ
実際の月額は、「ステップ3の納付月数による按分」と、「ステップ4・5の繰下げ/繰上げの増減」を掛け合わせたものになります。順序は「満額 → 納付月数で按分 → 繰下げ/繰上げで増減」です。
「35年納付で、かつ2年繰下げた」場合を計算します(2年=24ヶ月、増額率 24×0.7%=16.8%)。
= 260,166.67 × 0.875 × 1.168 = 798,470円(月額)
「30年納付で、かつ3年繰上げた」場合(3年=36ヶ月、減額率 36×0.5%=18%)。
= 260,166.67 × 0.75 × 0.82 = 160,002… → 月額479,302円
このように、「納付期間が短い」ことと「繰上げで減らす」ことは両方効いてくるため、滞納期間がある人がさらに繰上げすると、満額から大きく離れる点に注意が必要です。
よくある誤算3つ
- 「満額なら誰でも月78万円もらえると思う」:満額(780,500円)はあくまで「40年(480ヶ月)全額納めた場合」の額です。学生時代の未納や、失業・出産・低所得で保険料を免除(または納付猶予)した期間があると、その分だけ月数が減り、満額より低くなります。多くの人は「満額の7〜9割」で受給開始します。
- 「繰下げと繰上げは同じくらい得だと思う」:率が違います。繰下げは月0.7%、繰上げは月0.5%。年単位で比べると、1年繰下げで+8.4%なのに対し1年繰上げで▲6%と、増減のテンポが非対称です。また両者とも「一生涯」適用されるため、ライフプランとの相性が逆になります。
- 「老齢基礎年金だけで老後資金がまかなえると思う」:基礎年金の満額(月額約78万円・年額約937万円)はあくまで「基礎」です。会社員の方はこれに老齢厚生年金が上乗せされ、自営業の方は基礎年金のみになるケースが多いです。実際の生活費との差は年金生活の月額シミュレーション記事で確認できます。
自分の数字で試算する
自分の納付月数や、繰下げ・繰上げした場合の額をもっと細かく試したい場合は、下記の記事・ツールが使えます。すべてブラウザ内で計算され、入力内容が外部に送信されることはありません。
- 繰下げと繰上げの増減額を比べた記事——何年遅らせるといくら増えるかの全体像
- 年金を繰下げ・繰上げしたときの額を計算した記事——月額シミュレーション
- 厚生年金の年金額(報酬比例部分)を計算した記事——会社員の方の「上乗せ分」の根拠
- 年金生活の月額シミュレーション記事——もらえる額と生活費の差
関連する計算
- 国民年金保険料の記事:そもそもの保険料(月額)と、免除・納付猶予の仕組み。
- 在職老齢年金の計算記事:65歳以降も働く場合の、年金との調整(支給停止)の計算。
- 厚生年金の年金額計算:会社員の方が基礎年金に上乗せしてもらえる「報酬比例部分」。
- 年金分割の計算記事:離婚時の標準分割のしくみ。
- 所得税の計算記事:年金を受給すると(年金課税で)所得税がかかる場合がある。
- 住民税の計算記事:同様に住民税の所得割がかかる場合がある。
- 手取り計算ツール:現役世代の手取りとの比較に。
注意事項
本記事の数値は、国民年金法に基づく老齢基礎年金の額の算定式(満額の1/3 × 納付月数÷480)、および繰下げ(月0.7%増額・最大120ヶ月)・繰上げ(月0.5%減額・最大60ヶ月)の増減率を前提とした単純計算です。令和7年度の満顧(780,500円)は毎年度の物価・賃金スライドにより改定されるため、年度によって変動します。実際の額は、「保険料納付済月数」「免除・納付猶予期間(免除月数は1/3で加算されること)」「カスケードされた合算対象期間」「配偶者や第1子・第2子などの加給年金・子の加算の有無」などによって変わります。また受給資格期間の短縮(令和8年4月から10年)や、繰下げの上限年齢(75歳まで)などの制度改正が、記載内容と異なる場合があります。正確なご自身の年金額は、日本年金機構の「ねんきん定期便」や「年金ネット」、または最寄りの年金事務所でご確認ください。本記事は情報提供を目的としたもので、個別の年金相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
老齢基礎年金の満額はいくらですか?
令和7年度の満額(40年・480ヶ月全額納めた場合)は月額780,500円です。毎年度、物価・賃金の動向で改定されるため、年度によって数円〜数百円前後変わります。
なぜ「満額の1/3」を掛けるのですか?
老齢基礎年金は「40年(480ヶ月)かけて満額に達する」設計になっているため、計算の起点が「満額の1/3」になっています。そこに「実際に納めた月数 ÷ 480」を掛けて按分するので、40年のうち何割払ったかが、そのまま満額に対する割合になります。
保険料を滞納した時期があるとどうなりますか?
納付月数が減るため、満額より低い額になります。例えば30年(360ヶ月)しか払っていないと、満額の75%の月額585,375円になります。学生時代の未納や、失業・出産・低所得での免除・納付猶予期間も、一部は月数に加算されますが、全額納付(満額)には届きません。
繰下げ(遅らせる)と繰上げ(早める)の違いは?
繰下げは65歳以降の受給開始を最大75歳まで遅らせ、月0.7%ずつ(1年で8.4%)増額されます(増額は一生涯)。繰上げは60〜64歳で早く受給を始め、月0.5%ずつ(1年で6%)減額されます(減額も一生涯)。率が非対称で、長生きするなら繰下げのほうが総額で有利になりがちです。
会社員の年金はこれだけでもらえるのですか?
いいえ。会社員(厚生年金加入者)は、この老齢基礎年金に「老齢厚生年金(報酬比例部分)」が上乗せされて月額が決まります。自営業などの方は基礎年金のみになるケースが多いです。厚生年金の額は別の計算(報酬比例部分)になります。
自分の正確な年金額を知るにはどうすればいいですか?
日本年金機構の「ねんきin定期便」やオンラインの「年金ネット」、最寄りの年金事務所で確認できます。本記事の計算式は目安であり、加給年金・子ども加算や免除期間の扱いなど、個別の事情で実際の額は変わります。