年金はいつ受け取るのが得? 繰り下げ・繰り上げで毎月の受給額がいくら変わるか、増額・減額の計算式と損得の分岐点を計算

2026-08-19 | 年金 老齢年金 繰り下げ 繰り上げ 老後資金 家計

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「年金、65歳からもらうのが当たり前じゃないの? 早くもらうか遅くもらうかで、いくら違うの?」——定年を迎える直前、誰もが直面するこの迷い。ニュースでは「繰り下げれば増える」「繰り上げれば減る」と言いますが、「そもそもその数字はどうやって決まるのか、何歳で受け取るのが自分にとって得なのか」を、数式ごと追っているページは意外と少ないものです。

この記事では、老齢年金の「繰り下げ(65歳以降に先延ばし)」と「繰り上げ(60歳から前倒し)」について、増額・減額の計算式の根拠から解説します。老齢基礎年金の満額(月額78,500円)を例に、65歳開始・繰り下げ70歳・繰り上げ60歳それぞれの月額を実際に計算し、さらに「繰り下げした分は何歳まで生きれば元が取れるか」という損得の分岐点を出します。

📌 結論ファースト:老齢基礎年金(満額月額78,500円)の場合、65歳開始=月7.85万円、繰り下げ5年(70歳)=月約11.1万円、繰り上げ5年(60歳)=月約5.5万円。増減率は「繰り下げは1ヶ月0.7%増(最大42%増)」「繰り上げは1ヶ月0.5%減(最大30%減)」。繰り下げの損得は、だいたい82歳まで生きればトントン、それ以降は繰り下げが得になります。

ルール:増額率と減額率の根拠

老齢年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、申し出により60歳から(繰り上げ)・70歳まで(繰り下げ)の範囲で開始時期をずらせます。このときの調整率は、昭和61年(1986年)の法改正で定められた「1ヶ月あたりの増減率」によるものです。

選択可能な範囲1ヶ月あたりの調整最大の増減
繰り下げ(遅くもらう)65歳〜70歳+0.7%最大 +42%(5年×12×0.7%)
繰り上げ(早くもらう)60歳〜65歳−0.5%最大 −30%(5年×12×0.5%)
繰り下げ後の月額= 65歳開始の月額 ×(1 + 0.007 × 繰り下げ月数)
繰り上げ後の月額= 65歳開始の月額 ×(1 − 0.005 × 繰り上げ月数)
「なぜ0.7%と0.5%で非対称なのか」——これは繰り下げには「長生きリスクをとることへの報酬」として高めの率が、繰り上げには「早くもらいすぎるのを防ぐ」意味で低めの率が設定されているためです。あくまで仕組みの目安であり、正確な額は日本年金機構の「年金請求書」やねんきんネットで確認してください。

具体数値例:老齢基礎年金 満額(月額78,500円)の場合

老齢基礎年金の満額は、令和5年度以降 月額78,500円(年額942,000円)です。これをベースに、3つの開始パターンで月額を計算します。

開始年齢調整計算式月額
65歳(標準)なし78,500 × 1.078,500円
70歳(繰り下げ5年)+42%78,500 × 1.42111,470円
60歳(繰り上げ5年)−30%78,500 × 0.7054,950円

つまり、同じ保険料を払っていても、「いつ受け取り始めるか」で月額が5.5万〜11.1万円の幅に開きます。ただし繰り下げは「もらい始めるまでの期間が空く」、繰り上げは「もらえる期間が長いが額が減る」というトレードオフがあります。

繰り下げの損得:何歳まで生きれば「元が取れる」か

繰り下げの本当の意味は、「65〜69歳の5年間をあえてもらわず、70歳以降に月額を増やして取り返す」ことにあります。これを「回収年数」で測ります。

① もらい損ねた金額 = 65歳開始月額 × 繰り下げ期間(月)
② 月額の増加分 = 支給額 − 65歳開始月額
③ 回収にかかる月数 ≒ ① ÷ ②

数値を入れてみます(繰り下げ5年の場合)。

項目金額計算
① もらい損ねた総額(65〜69歳)4,710,000円78,500 × 60ヶ月
② 月額の増加分32,970円111,470 − 78,500
③ 回収にかかる期間約12年(約143ヶ月)4,710,000 ÷ 32,970

つまり、70歳から繰り下げて受け取ると、約82歳(70歳+12年)までは「65歳開始」よりも総受給額で負け、82歳を超えて生きると逆転して得になります。なお、この計算は「在職老齢年金などの支給停止がない」「マクロ経済スライドによる目減りがない」という単純化した前提です(後述の注意点参照)。

繰り上げの損得:早くもらう代償

繰り上げは「60歳から月5.5万円もらえる」一方で、65歳以降もずっと月額が減ったままです。病気や事情で「65歳まで働けないかも」という場合の選択肢ですが、単純に「長生きするほど不利」になります。

例えば80歳まで生きた場合の総受給額を比べると……

開始もらえる期間総受給額(目安)
65歳開始15年(180ヶ月)78,500 × 180 = 14,130,000円
繰り上げ60歳20年(240ヶ月)54,950 × 240 = 13,188,000円

期間は5年長いのに、減額の影響で総額では65歳開始のほうが上回ります。繰り上げは「寿命が短い・すぐ使う必要がある」場合の安心策と位置づけるのが妥当です。

注意点:見落としやすい5つの落とし穴

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よくある質問

年金の繰り下げ・繰り上げで月額はいくら変わりますか?

老齢基礎年金(満額月額78,500円)の場合、繰り下げ5年(70歳開始)で月額約11.1万円(+42%)、繰り上げ5年(60歳開始)で月額約5.5万円(−30%)になります。増減率は「繰り下げは1ヶ月あたり0.7%増」「繰り上げは1ヶ月あたり0.5%減」です。

繰り下げは何歳まで生きれば得になりますか?

繰り下げ5年の場合、65〜69歳の5年間(約471万円)をあえてもらわず、70歳以降に月額+32,970円で取り返すため、回収に約12年かかります。つまり約82歳まで生きれば65歳開始とトントン、それ以降は繰り下げが得になります(在職老齢年金やマクロ経済スライドを考慮しない単純計算の目安)。

繰り上げと繰り下げ、どちらを選ぶべきですか?

健康で長生きしそうなら「繰り下げ」、すぐお金が必要だったり寿命に不安があるなら「繰り上げ」が安心策です。ただし繰り上げは一度選ぶと元に戻せず、長生きするほど総受給額で不利になる点に注意してください。

繰り下げ中に働くと年金はもらえなくなりますか?

65歳以降も厚生年金に加入して働くと、給与や賞与が一定額を超える場合「在職老齢年金」により報酬比例部分の支給が一時停止されることがあります。ただし繰り下げの「増額」そのものが消えるわけではありません。働く予定がある人は日本年金機構でご確認を。

夫婦で年金の繰り下げを考えるときの注意点は?

妻が繰り下げると、夫が亡くなった際の「遺族厚生年金」の計算基礎となる額が変わることがあります。夫婦でどちらが(あるいは両方が)繰り下げるかをセットで設計するのが、本来の鉄則です。

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