年金を繰下げ・繰上げするといくら増減する? 受給開始年齢ごとの月額と「損得分岐点」を1円単位で計算する

2026-08-16 | 年金 老後資金 家計 計算 手取り

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「年金、65歳からもらうのが当たり前? でも遅らせたり早めたりできるって聞いたけど、実際いくら増減するの?」——老後設計で誰もが直面する問いですが、ネットでは「繰下げは得」「繰上げは損」という結論だけが並び、具体的に「何歳なら月額がいくらになるか」「生涯でもらえる総額が並ぶ分岐点は何歳か」を数値で追っている記事は意外と少ないものです。

この記事では、公的年金(老齢年金の報酬比例部分)を遅らせる(繰下げ)か早める(繰上げ)かで、月額がどの式で増減するかを、「本来月額20万円」を例に1円単位で計算します。自分の数字(本来月額)に当てはめて試したい場合は、手取り計算ツール で老後資金とのバランスを確かめられます(入力はどこにも送信されません)。

結論:月20万円なら、繰下げ70歳で28.4万円、繰上げ60歳で14万円

原則「65歳」を基準(本来月額)として、遅らせる・早める月数に応じた増減が一生続きます。

受給開始遅らせ/早めた月数増減率月額(本来20万の場合)
60歳(繰上げ)早め60ヶ月▲30%140,000円
63歳(繰上げ)早め24ヶ月▲12%176,000円
65歳(基準)0ヶ月±0%200,000円
67歳(繰下げ)遅らせ24ヶ月+16.8%233,600円
70歳(繰下げ)遅らせ60ヶ月+42%284,000円

ポイントは、増減が「もらい始めた瞬間」だけでなく「その後ずっと」続くことです。繰下げれば毎月多くもらい続け、繰上げれば毎月少なくもらい続けます。だからこそ「長く生きるか短くなるか」で損得が逆転します。

ステップ1:全体のルール(基準は65歳)

公的年金には原則として「本来の支給開始年齢=65歳」があり、これをずらすと次のように増減します(令和の仕組み)。

注意点:ここでの「本来の月額」は、繰下げ・繰上げを一切しなかった場合の65歳支給額(報酬比例部分)を指します。定額部分(老齢基礎年金などの「額面」)も同様に増減の対象になりますが、記事では分かりやすく「本来月額」と総称して計算します。

ステップ2:計算式(増額・減額の式)

増減は「遅らせた/早めた月数」に応じた乗率で決まります。計算式は次のとおりです。

繰下げ月額 = 本来月額 ×(1 + 0.007 × 遅らせた月数)

繰上げ月額 = 本来月額 ×(1 − 0.005 × 早めた月数)

例えば本来月額20万円を「70歳まで(60ヶ月遅らせて)」繰下げすると、

200,000 ×(1 + 0.007 × 60)= 200,000 × 1.42 = 284,000円

逆に「60歳から(60ヶ月早めて)」繰上げすると、

200,000 ×(1 − 0.005 × 60)= 200,000 × 0.70 = 140,000円

となります。月額10万円なら繰下げ70歳で142,000円、繰上げ60歳で70,000円に、月額30万円なら繰下げ70歳で426,000円、繰上げ60歳で210,000円になります(いずれも乗率1.42/0.70で一定)。

ステップ3:増減率を月数ごとに並べる

遅らせ/早めた年数繰下げの乗率(+)繰上げの乗率(▲)
1年(12ヶ月)×1.084(+8.4%)×0.940(▲6.0%)
2年(24ヶ月)×1.168(+16.8%)×0.880(▲12.0%)
3年(36ヶ月)×1.252(+25.2%)×0.820(▲18.0%)
4年(48ヶ月)×1.336(+33.6%)×0.760(▲24.0%)
5年(60ヶ月)×1.420(+42.0%)×0.700(▲30.0%)

繰下げは5年で+42%と大きく、繰上げは5年で▲30%と深く減ります。増減の「度合い」自体は年数に比例するため、自分の予定開始年齢(例:68歳なら3年繰下げ→×1.252)を上の表に当てはめるだけで月額が出ます。

ステップ4:生涯でもらえる総額が「並ぶ分岐点」を出す

「繰下げすれば月額は増えるけど、その分もらう期間が短くなる。結局どっちが総額で得?」——これを「65歳開始と比べて生涯総受給額が同じになる年齢(分岐点)」で測ります(物価・賃金の伸びを考慮しない「名目」ベースの概算)。

選択月額65歳開始と総額が並ぶ年齢(名目・概算)
65歳開始(基準)200,000円—(基準)
60歳開始(繰上げ)140,000円約77歳
70歳開始(繰下げ)284,000円約82歳

繰下げ70歳の場合、65歳からもらい始めた人より「もらい始めが5年遅い」分を、月額の差(84,000円)で取り返すのに約17年(65→82歳)かかります。繰上げ60歳の場合は逆に、65歳からより「5年多くもらった分(140,000円×60ヶ月)」が、月額の差(60,000円)で相殺されるのに約11.7年(65→77歳)かかります。

重要な補足:これは物価上昇や賃金伸びを無視した「名目」の分岐点です。実質購買力(インフレ)を考慮すると、将来の方が円の価値が下がる分、繰下げの有利な分岐点はさらに数歳遅く(「繰下げは85歳まで生きれば得」と言われる根拠)、繰上げの分岐点は早くなります。あくまで「ざっくりの目安」としてお使いください。

ステップ5:どんな人が繰下げ・繰上げに向くか

ここが誤解の多いポイント:3つの罠

  1. 「繰下げは後から元が取れるかだけで考える」:分岐点(約82歳)より長生きすれば総額で得ですが、それ以前に亡くなっても「損」というだけでなく、遺族厚生年金等の設計とも絡むため、単純比較は禁物です。
  2. 「繰上げは一時的な調整だと思う」:繰上げによる減額は、選んだ時点で一生(受給中ずっと)固定されます。後から「やっぱり元の月額に戻したい」は原則できません。
  3. 「基準は70歳だと思う」:あくまで基準(+0%/▲0%)は65歳です。70歳は「繰下げの最大」、60歳は「繰上げの最大」であって、65歳と比べて増減しているのです。

関連ツール・記事で家計全体を確かめる

年金の開始時期は、老後資金の不足分をどう埋めるかと直結します。老後資金2000万円の積立シミュレーション で、年金以外にいくら必要かを確かめ、つみたてNISAの受取額 や iDeCoの手取り増加額 と組み合わせるのが現実的です。現役時代の手取り(年金の原資となる所得)は 手取り計算ツール で確認できます。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、公的年金(老齢年金の報酬比例部分を想定)の令和の繰下げ・繰上げルールをもとにした概算です。実際の増減率は、制度改正(毎年の法改正等)や、厚生年金と国民年金の違い、在職老齢年金(70歳超まで働く場合の報酬比例部分の加算)等によって変わります。また分岐点(約77歳・約82歳)は物価・賃金の伸びを考慮しない名目ベースの目安であり、実質購買力を考慮するとさらに数歳動きます。正確なご自身の年金額・繰下げ・繰上げの影響は、日本年金機構の「ねんきん定期便」や「年金開始時の裁定」、および 住民税の計算方法 等の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の年金相談や投資助言に代わるものではありません。

自分の本来月額に当てはめて月額を試したい場合は、上の式(×1.42/×0.70 等)を 電卓ツール で計算してください。すべてブラウザ内で処理され、入力はどこにも送信されません。

よくある質問

年金の繰下げ(受給を遅らせる)の増額率は?

65歳から70歳まで最大5年繰り下げると、1ヶ月あたり本来の月額の0.7%ずつ増え、最大で月額+42%(年8.4%×5年)になります。例えば本来月20万円なら、70歳からの受給で月28.4万円になり、この増額は一生続きます。

年金の繰上げ(早くもらう)の減額率は?

60歳から65歳まで最大5年繰り上げると、1ヶ月あたり本来の月額の0.5%ずつ減り、最大で月額▲30%(年6.0%×5年)になります。例えば本来月20万円なら、60歳からの受給で月14万円になり、この減額も一生続きます。

繰下げと繰上げ、どっちが得?

長生きするほど繰下げが有利、早く亡くなるほど繰上げが有利というのが基本です。生涯でもらえる総額が「繰り下げしない65歳開始」と並ぶ分岐点は、名目(物価・賃金の伸びを考慮しない)で、繰下げ70歳なら約82歳、繰上げ60歳なら約77歳です。ただし実質購買力(物価)を考慮すると、この分岐点はさらに数歳遅くなります。

計算式は?

繰下げの月額=本来月額×(1+0.007×遅らせた月数)、繰上げの月額=本来月額×(1−0.005×早めた月数)です。いずれも「本来の支給開始年齢(原則65歳)」を基準にした増減です。

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