年収800万円の手取りはいくら?内訳を1円単位まで分解して計算する(月約49.3万・手取り率73.9%)
「年収800万円。手元に残るのはいくら?」——役職につく層や、共働きで合算年収が800万円を超える世帯にとって、住宅ローンの借入上限や子どもの教育資金を考えるうえで避けて通れない数字です。でもネットで検索すると「約590万円」という結論だけが並び、どうやってその数字になったのかが書かれていないことがほとんどです。
この記事では、会社員・独身・扶養なし・40歳未満(介護保険料なし)を前提に、給与所得控除 → 社会保険料 → 所得税 → 住民税の順で、実際の計算式と数値をすべて追します。自分の年収で試したい場合は 手取り計算ツール に金額を入れれば同じロジックで即座に出ます(入力はどこにも送信されません)。
結論:年収800万円の手取りは約591万円(月約49.3万円)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 年収(額面) | 8,000,000円 | 賞与含む総支給額 |
| 給与所得控除 | ▲1,900,000円 | 収入×10%+110万円(速算表) |
| 社会保険料 | ▲約1,160,000円 | 健康保険・厚生年金・雇用保険(給与の約14.5%) |
| 所得税(復興税込) | ▲約474,000円 | 累進課税・税率20%区分 |
| 住民税 | ▲約451,000円 | 所得割10%+均等割5,000円 |
| 手取り | 約5,914,700円 | 月あたり約492,900円/手取り率約73.9% |
ここからが本題です。なぜこの金額になるのか、順に計算します。
ステップ1:給与所得控除は190万円
会社員には経費の代わりに給与所得控除が自動で認められます。所得税法の速算表では、収入金額 6,600,001円〜8,500,000円 の区分は次の式です。
給与所得控除 = 収入金額 × 10% + 1,100,000円
年収800万円なら 8,000,000 × 0.1 + 1,100,000 = 1,900,000円。よって課税のベースとなる給与所得は
8,000,000 − 1,900,000 = 6,100,000円
注意点:年収が上がるほど控除率は下がります。年収500万円なら「×20%+44万」で控除率約29%でしたが、年収800万円では「×10%+110万」で控除率約24%まで下がります。高年収ほど「非課税になる割合」が小さくなり、これが手取り率低下の第一の原因です。8,500,000円を超えると式が変わり(控除額は一律195万円に)、手取り率の低下がさらに一段効いてきます。
ステップ2:社会保険料は約116万円(税金より重い)
見落とされがちですが、年収800万円クラスでも社会保険料が所得税・住民税の合計より大きいのが実態です。内訳の目安は次のとおりです。
- 厚生年金保険料:18.3%の半分の9.15% → 約73.2万円
- 健康保険料:協会けんぽ等で約5.0%(本人負担分)→ 約40.0万円
- 雇用保険料:0.6%前後 → 約4.8万円
合計でおよそ給与の14.5%=約116万円。手取りツール(手取り計算ツール)も「会社員なら年収×14.5%」でこの金額を出しています。40歳以上になると介護保険料(約0.9%の半分)が加わり、手取りはさらに年2万円強下がります。
注意点:社会保険料は「標準報酬月額」という等級表に当てはめて決まるため、実際は年収に比例した滑らかな数字にはなりません。また厚生年金には上限(標準報酬月額65万円)があり、高年収では料率の実効値が下がります。ここでは概算として率で計算しています(出所の詳しい求め方は社会保険料の計算方法の記事へ)。
ステップ3:所得税は約47.4万円
所得税の課税所得は、給与所得から所得控除を引いて求めます。独身・扶養なしなら基礎控除48万円と社会保険料控除だけです。
課税所得 = 6,100,000 −(社会保険料 1,160,000 + 基礎控除 480,000)= 4,460,000円
課税所得 3,300,000円〜6,950,000円 の区分は税率20%・控除額427,500円です。
4,460,000 × 20% − 427,500 = 464,500円
これに復興特別所得税2.1%が上乗せされます。
464,500 × 1.021 ≒ 474,254円
ここが誤解の多いポイント:「年収800万円だから税率20%」ではありません。税率が掛かるのは課税所得446万円に対してで、しかも累進課税なので330万円までの部分は10%、超えた分だけ20%です(速算表の控除額427,500円がその調整)。実は年収800万円は、ちょうど「税率20%の壁」をすでに通過したあとの位置にあります(壁は課税所得330万円超=年収約695万円超から)。額面年収に税率を掛けると、実際の2倍近い税額を誤算します。次の所得税率アップ(23%)は課税所得900万円超、すなわち年収約1,055万円からです。
ステップ4:住民税は約45.1万円
住民税は所得税と控除額が違います。基礎控除は43万円(所得税は48万円)が原則ですが、手取りツールは簡略化のため48万円で計算しているため、ここでも48万円を使って住民税の計算を組み立てます(実際のあなたの住民税は数千円低くなります)。
課税所得 = 6,100,000 −(1,160,000 + 480,000)= 4,460,000円
所得割 = 4,460,000 × 10% = 446,000円
+ 均等割 5,000円 = 約451,000円
注意点:住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されます。つまり昇給で年収が800万円になった年は、本業分だけの住民税が引かれ、800万円分の負担は翌年から始まります。この1年遅れのタイムラグを忘れると、「翌年の手取りが急に減った」と驚くことになります(住民税の計算方法も参照)。
ステップ5:手取りを合計する
8,000,000 −(1,160,000 + 474,254 + 451,000)≒ 5,914,746円
月あたり 約49.3万円、手取り率は 約73.9%。年収500万円(約77.9%)や700万円(約75.6%)よりは下がり、年収1000万円(約71.2%)よりは高く、いわゆる「手取りは年収の約7割強」の範囲内です。
年収500万・700万・800万・1000万で比べる(手取り率の低下)
| 年収 | 手取り(年) | 月額 | 手取り率 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約389万円 | 約32.4万円 | 約77.9% |
| 700万円 | 約529万円 | 約44.1万円 | 約75.6% |
| 800万円 | 約591万円 | 約49.3万円 | 約73.9% |
| 1000万円 | 約712万円 | 約59.3万円 | 約71.2% |
年収が100万円上がると(700万→800万)、手取りは約62万円増えますが、手取り率は1.7ポイント下がります。これは「給与所得控除の縮小」と「累進課税(20%区分へのシフト)」の両方が効いているためです。昇給の交渉や転職の年収シミュレーションでは、「額面の増え方」以上に「手取りの増え方」を確認するのが鉄則です。
この金額から何ができるか(具体例)
- 住宅ローン:返済負担率を手取りの20%とすると月約9.9万円。金利1.5%・35年なら借入約3,200万円が目安です(住宅ローン計算で試算できます)。額面年収基準の「年収の7倍(5,600万円)」より保守的ですが、生活防衛の観点ではこちらが実務的です。
- 積立投資:手取りの10%=月4.9万円を年利4%で20年積み立てると約1,790万円(元本1,176万円)。複利積立シミュレーションで期間と利率を変えて確認できます。
- ふるさと納税:年収800万円・独身なら上限の目安は約10万円。ふるさと納税 上限目安で世帯構成込みの概算が出ます(上限の計算式の根拠は住民税の計算式から逆算した解説を参照)。
- 配偶者・扶養の壁:妻がパートで稼ぐ場合、103万・106万・130万・150万のラインを超えると世帯手取りが階段状に落ちます。ご家庭の状況に合わせて年収の壁の解説や配偶者控除の計算も併せてどうぞ。
よくある誤算3つ
- 額面に税率を掛けてしまう:課税所得は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を引いた後の金額です。800万円に20%を掛けると所得税を4倍以上過大に見積もります。
- 「税率20%の壁」で手取りが減ると勘違いする:年収800万円はすでに税率20%の区分に入っていますが、手取りが「マイナスになる」わけではありません。年収が上がれば手取りも上がりますが、その伸びが緩やかになる(手取り率が下がる)だけです。
- 住民税の1年遅れを忘れる:昇給・転職の翌年は手取りの伸びが鈍ります。年収が上がった年の翌6月に住民税が跳ねる前提で家計を組んでおくと事故が起きません。
注意事項
本記事の数値は概算です。実際の手取りは、健康保険の加入先(協会けんぽか組合健保か)、居住自治体、扶養親族の有無、生命保険料控除・iDeCo・住宅ローン控除などの適用によって数万円単位で変わります。とくに住民税の基礎控除(実際は43万円)や各種控除は、ご自身の状況で増減します。手取り計算ツールはこれらを簡略化した概算(基礎控除を48万円で計算)であるため、記事の数値と数千円前後異なる場合があります。正確な金額は源泉徴収票と住民税決定通知書で確認してください。制度の詳細は国税庁・お住まいの自治体の公式情報が最終的な根拠になります。
自分の年収で同じ内訳を見たい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。年収500万円・700万円・1000万円の内訳も、それぞれ年収500万円の手取り・年収700万円の手取り・年収1000万円の手取りの記事で確認できます。
よくある質問
年収800万円の手取りは月いくら?
会社員・独身・扶養なしの目安で、年間の手取りは約591万円、月あたり約49.3万円です。手取り率は約73.9%で、年収700万円(約75.6%)より下がり、年収1000万円(約71.2%)より高くなっています。
年収800万円の給与所得控除はいくら?
収入金額が6,600,001円〜8,500,000円の区分に当たるため「収入×10%+1,100,000円」で計算し、8,000,000円×10%+1,100,000円=1,900,000円です。年収が上がるほど控除率は下がり、8,500,000円を超えると控除額は一律195万円になります。
年収800万円の所得税はいくら?
給与所得610万円から社会保険料約116万円と基礎控除48万円を引いた課税所得446万円に、税率20%・控除額427,500円を適用して464,500円。復興特別所得税2.1%を加えて約47.4万円です。
年収800万円の住民税はいくら?
住民税の基礎控除は43万円(ツールは簡略化で48万円)なので課税所得は約446万円。所得割10%で約44.6万円、均等割5,000円を足して約45.1万円が目安です(自治体で若干異なります)。
年収800万は「手取りが減る壁」にあたりますか?
所得税の税率区分でいえば、課税所得が330万円を超えると税率が10%から20%に上がります。年収800万円独身の課税所得は約446万円なので、すでに20%の壁を通過したあとのゾーンです(壁は年収約695万円超から)。次の23%の壁は課税所得900万円超=年収約1,055万円から。手取りが「減る」わけではなく、年収の伸びに対して手取りの伸びが緩やかになる(手取り率が下がる)だけです。