社会保険料はいくら引かれる? 健康保険+厚生年金を「標準報酬月額」から1円単位で逆算する
「給与明細を見ると、毎月『社会保険料』として4〜5万円引かれている。この金額はいったいどうやって決まってるの?」——手取り記事(年収500万の手取り・年収400万の手取り)を読むと、どれも「社会保険料 約○万円(給与の約14.5%)」という数字を出しています。でもその数字の出所を書いている記事が、サイトの中に一つもないのが現状です。
この記事では、会社員が負担する社会保険料(健康保険+厚生年金+雇用保険)を、「標準報酬月額」という等級表から実額を逆算する手順を、実際の数値で1円単位まで追います。最大の罠は、「給与×14.5%」ではなく「等級表の代表額×保険料率」で決まるため、年収に比例した滑らかな数字にならないことです。自分の数字で試したい場合は 手取り計算ツール に金額を入れれば同じロジックで即座に出ます。
結論:年収500万(月給40万)なら社会保険料は年間約70万円
| 項目 | 本人負担の保険料率 | 月額(標準報酬40万の場合) | 年額 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 約4.9%(総額9.8%の半分) | 19,600円 | 約235,200円 |
| 厚生年金 | 9.15%(総額18.3%の半分) | 36,600円 | 約439,200円 |
| 雇用保険 | 0.6% | 2,400円 | 約28,800円 |
| 合計(40歳未満) | — | 58,600円 | 約703,200円 |
| +介護保険(40〜64歳) | 約0.45%(総額0.9%の半分) | +1,800円 | +約21,600円 |
月給(賞与を除く)40万円の場合、毎月の給与分の社会保険料は本人負担で約5.9万円、年間で約70万円になります。40歳以上だと介護保険料が加わり年間約72万円(給与の約14.5%)です。手取り記事が「給与の14.5%」としているのは、この介護分を含んだ目安に近い数字です。順に計算で確かめます。
ステップ1:社会保険料は「3本」の合算
会社員の給与から天引きされる社会保険料は、大きく3つ(40歳以上は4つ)です。
- 健康保険料:病気・けがの療養、出産・育児に関する給付の原資。協会けんぽ(大多数の会社員)の保険料率は都道府県により9.3%〜10%台で、全国平均は約9.8%。この半分(約4.9%)を本人が負担し、残り半分を会社が負担します。
- 厚生年金保険料:老後の年金の原資。保険料率は18.3%(全国一律)で、半分の9.15%を本人が負担します。
- 雇用保険料:失業手当や雇用継続給付の原資。本人負担は一般の事業で0.6%です。
- 介護保険料:40歳〜64歳の間だけ、健康保険料に上乗せされる(約0.9%の半分約0.45%が本人負担)。
ここが誤解の多いポイント:これらはすべて「給与から引かれる」ため、手取りを減らす最大の要因の一つです。年収500万円クラスでは、社会保険料の合計(約70万円)は所得税(約14万円)の5倍近くになります。「手取りが減る主因は税」という印象は誤りで、実態は社会保険料のほうがずっと重いのです。
ステップ2:実給与ではなく「標準報酬月額」で決まる
社会保険料の最大の特徴は、月々の実際の給与ではなく「標準報酬月額」という等級の代表額に保険料率を掛けて決まることです。
毎月の保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率(本人負担分)
標準報酬月額は、毎月の給与を「等級表」に当てはめて決めます。協会けんぽの等級表(2024年改正で50等級)の目安は次のとおりです(実際の等級は勤務先の等級表で確認してください)。
| 毎月の給与(目安) | 標準報酬月額(等級の代表額・目安) |
|---|---|
| 月26万円 | 260,000円 |
| 月32万円 | 320,000円 |
| 月38万円 | 380,000円 |
| 月40万円 | 400,000円 |
| 月50万円 | 500,000円 |
| 月65万円(上限) | 650,000円 |
月給40万円なら標準報酬月額は約40万円の等級に当てはめられ、そこに各保険料率を掛けます。給与が30万円でも42万円でも、同じ等級(40万円)なら保険料は同じになるのが等級制の仕組みです。だから「年収にぴったり比例した金額」にはならないのです。
ステップ3:具体数値で計算する(年収500万・月給40万)
標準報酬月額 = 400,000円として、各保険料を計算します。
健康保険 = 400,000 × 4.9%(本人分)= 19,600円/月
厚生年金 = 400,000 × 9.15%(本人分)= 36,600円/月
雇用保険 = 400,000 × 0.6% = 2,400円/月
月額合計 = 58,600円/月 × 12 = 703,200円/年
40歳以上なら介護保険料(400,000 × 0.45% = 1,800円/月)が加わり、月額60,400円・年額約724,800円(給与の約14.5%)になります。これが手取り記事の「給与の約14.5%」の正体です。組合健保(企業年金を持つ大企業等)に入っている場合は健康保険料率が異なり、一般に協会けんぽより少し高いか同程度です。
ステップ4:賞与(ボーナス)にも保険料がかかる
見落とされがちですが、厚生年金と健康保険(および雇用保険)は賞与にも掛かります。賞与は標準報酬月額ではなく「その賞与の額」に率を掛けます。
賞与100万円の場合:
厚生年金 = 1,000,000 × 9.15% = 91,500円
健康保険 = 1,000,000 × 4.9% = 49,000円
雇用保険 = 1,000,000 × 0.6% = 6,000円
賞与分の本人負担 = 約146,500円
年2回の賞与が合計100万円なら、毎月の給与分(約70万円)にさらに約15万円が年間の社会保険料として加わります。「毎月の給与分だけ」で手取りを考えると、年間の社会保険料を数万円過小評価することがあります。
ステップ5:上限(標準報酬月額65万円)で頭打ちになる
標準報酬月額には上限(健康保険・厚生年金とも月額65万円)があります。月給が65万円(年収約780万円)を超えても、それ以上の分には保険料がかかりません。
| 月給(賞与除く) | 標準報酬月額 | 厚生年金(本人分・年額) |
|---|---|---|
| 40万円 | 400,000円 | 約439,200円 |
| 65万円(上限) | 650,000円 | 約713,700円 |
| 100万円 | 650,000円(頭打ち) | 約713,700円(同じ) |
年収1,000万円超でも、社会保険料の伸びは月65万円分で止まります。だからこそ、年収1000万の手取りで「手取り率が7割強まで下がる」のは、社会保険料ではなく累進課税(所得税・住民税)の影響が主因なのです。
年収の壁(106万・130万)の正体はこの保険料だった
パート妻が気にする「年収の壁103万・106万・130万・150万円」のうち、106万・130万の壁はまさにこの社会保険料です。妻の収入がこのラインを超えると、妻自身が健康保険(約4.9%)と厚生年金(約9.15%の半分)を給与から天引きられ、手取りが階段状に落ちます。逆に言えば、「社会保険料がなぜかかるのか」を理解していれば、年収の壁の正体も自ずと見えてきます。
よくある誤算4つ
- 「給与×14.5%」でぴったり出せると思う:実際は等級表の代表額できまるため、年収に比例した滑らかな数字にはなりません。また健康保険の種類・都道府県・年齢(介護の有無)で数万円単位で変わります。
- 賞与分を忘れる:厚生年金・健康保険は賞与にも掛かります。年間の社会保険料を「毎月の給与分×12」だけで考えると過小評価になります。
- 「高給取りほど社会保険料がいくらでも上がる」と思う:標準報酬月額に上限(65万円)があるため、年収約780万円を超えると保険料は頭打ちです。
- 社会保険料は「無駄」と考える:厚生年金は将来の年金額に直結し、健康保険では傷病手当金(最大1年半は給与の約3分の2がもらえる)や出産手当金などの給付が受けられます。手取りを減らす分、裏側に保障を持っているのが制度の仕組みです。
関連ツールで自分の数字を確かめる
社会保険料を差し引いた手取りは 手取り計算ツール で確認できます。社会保険料は「給与所得控除後の給与所得」を経由して住民税にも影響するため、住民税の計算方法 や 給与所得控除の早見表 と合わせると全体像が見えます。世帯の手取りを考えるなら 年収の壁の解説 も併読をおすすめします。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の社会保険料は、加入している健康保険(協会けんぽ/組合健保/国民健康保険)の種類、都道府県・保険者ごとの保険料率、標準報酬月額の等級判定、年齢(40歳以上の介護保険料の有無)、賞与の額、雇用保険の事業区分(一般・農林水産・建設)によって数万〜数十万円単位で変わります。標準報酬月額の等級や保険料率は年度ごとに見直されることがあります。正確な金額は、給与明細の「社会保険料」欄、および加入している健康保険組合・日本年金機構の公式情報でご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の社会保障相談に代わるものではありません。
自分の年収で同じ内訳を見たい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
よくある質問
社会保険料の計算式は?
健康保険料と厚生年金保険料は、実際の給与ではなく「標準報酬月額(給与を等級表に当てはめた額)」にそれぞれの保険料率を掛けて決まります。協会けんぽの健康保険は約9.8%(本人負担はその半分約4.9%)、厚生年金は18.3%(本人9.15%)、雇用保険は0.6%(本人)が目安です。これらを月額×12にしたものが年間の本人負担です。
年収500万円の社会保険料はいくら?
月給(賞与除く)40万円の場合、標準報酬月額は約40万円になり、健康保険(本人分)が年約23.5万円、厚生年金(本人分)が年約43.9万円、雇用保険が年約2.9万円。合計で年間約70万円(給与の約14%)が引かれます。40歳以上は介護保険料が加わり約72万円(約14.5%)になります。
なぜ「給与の14.5%」は正確ではないの?
社会保険料は実給与ではなく「標準報酬月額」という等級の代表額できまるため、年収に比例した滑らかな数字にはなりません。また加入する健康保険(協会けんぽか組合健保か)や都道府県、年齢(介護保険の有無)、賞与の額によって数万円単位で変わります。手取り計算ツールの「14.5%」はあくまで目安です。
給与が高いと社会保険料はいくらでも上がる?
いいえ。標準報酬月額には上限(健康保険・厚生年金とも月額65万円)があり、それを超える分には保険料がかかりません。年収約780万円(月65万円)を超えると、給与が増えても社会保険料は頭打ちになります。
賞与(ボーナス)にも社会保険料はかかる?
はい。厚生年金と健康保険(および雇用保険)は賞与にも掛かります。賞与100万円なら厚生年金が約9.2万円、健康保険が約4.9万円、合わせて約14万円が別途引かれます。手取り記事の「毎月の給与分」だけを見ると、年間の社会保険料を数万円過小評価することがあります。