繰上返済と投資、どっちが得? 100万円を住宅ローンと複利運用で同条件で比べる
「ボーナスで100万円貯まった。住宅ローンの繰り上げ返済に回すべきか、それとも投資に回すべきか」——この迷いは、ローンを持つ多くの世帯が一度はぶつかる十字路です。便利箱(HA)の住宅ローン計算ツールや繰り上げの利息削減額を計算した記事を読むと「繰り上げで○万円浮く」はすぐ出ますが、「じゃあ投資とどっちが得?」を同じ金額・同じ期間で比べた記事がサイト内に足りていません。この記事では、借入2000万円・金利1.5%・20年を例に、繰上返済と投資を「1円単位の同条件」で突き合わせ、どのラインを超えればどちらが有利になるかを確認します。
結論:決め手は「ローン金利」と「運用利回り(税引後)」の大小
| あなたの状況 | おすすめ |
|---|---|
| ローン金利 > 運用利回り(NISA等・税引後) | 繰上返済が有利(確実・非課税) |
| ローン金利 ≦ 運用利回り(NISA等・税引後) | 投資が有利(ただし変動リスク) |
| どちらも迷う | 半分ずつ(折衷)でもOK |
言い換えると、繰上返済の実質利回りは「ローン金利」そのもの(非課税・確実・リスクゼロ)です。これを上回る利回りで、かつ税金を引いてもなお上回る運用先があれば投資が有利、という単純なルールです。具体的な数字で確かめます。
ステップ1:ベースのローン情報をそろえる
最も典型的な借入2000万円・年利1.5%・20年(240ヶ月)・元利均等で計算します。
月額 M = 20,000,000 × (0.015/12) × (1+0.015/12)^240 ÷ {(1+0.015/12)^240 − 1} ≒ 96,509円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額返済 | 96,509円 |
| 総支払額 | 23,162,180円 |
| 総利息 | 3,162,180円 |
ステップ2:繰上返済100万円で「浮く利息」を計算
残元本から100万円を前倒しで返すと、残りの期間にかかる利息が減ります。期間短縮型(月額はそのまま、完済を早める)と月額減少型(完済時期は同じ、以降の月額を下げる)で効果が変わります。
| やり方 | 結果 | 利息削減額 |
|---|---|---|
| 期間短縮型 | 完済が約18.8年(226ヶ月)に短縮(▲14ヶ月) | 約338,782円 |
| 月額減少型 | 新月額 91,684円(▲4,825円) | 約158,109円 |
「100万円返して100万円浮く」のではなく、浮くのは利息の約34万円分だけ。残りはもともと返す予算だった元本の前倒しです。200万円繰り上げなら、期間短縮型で利息削減約654,758円、完済が約17.7年(212ヶ月)に短縮します。
ステップ3:同じ100万円を「投資」した場合と比べる
さっきの100万円を繰上返済する代わりに、手元に残して複利で運用したとします(年利・20年・年複利)。
| 運用利回り | 100万円が20年で増える額 | 繰上返済(利息削減)との勝敗 |
|---|---|---|
| 1.5%(ローン金利と同率) | 約346,855円 | 投資がわずかに有利 |
| 3% | 約806,111円 | 投資が有利 |
| 4% | 約1,191,123円 | 投資が明確に有利 |
| 5% | 約1,653,298円 | 投資が明確に有利 |
注目すべきは「利回り=ローン金利(1.5%)」のとき、投資の増え分(約35万円)は繰上返済の利息削減(約34万円)とほぼ同額になる点です。つまり「金利と運用利回りが同じならどっちでも変わらない。運用利回りが金利を1円でも上回れば投資が有利」というのが、この数字から読める核心です。
ステップ4:税金と「NISA」がルールをひっくり返す
上の投資額は「税制抜き」の数字です。普通口座で運用すると、増えた分に約20.315%の税金がかかり、実質利回りは 運用利回り × 0.79685 まで下がります。一方、つみたてNISA・NISAなら運用益は非課税です。
| 運用利回り | 普通口座(税引後) | NISA(非課税) | 繰上返済(金利1.5%) |
|---|---|---|---|
| 3% | 約2.39% | 3% | 常に 1.5%(確実) |
| 4% | 約3.19% | 4% | |
| 5% | 約3.98% | 5% |
金利1.5%のローンの場合、NISAで約2%以上で運用できれば投資優位、普通口座なら税引後約2.4%以上が必要です。逆に「1.5%を確実に稼げる運用先がない」「変動リスクは避けたい」なら、繰上返済(=確実な1.5%稼ぎ)が現実的です。
ステップ5:金利が高い(3%)ローンなら繰上返済の価値が跳ねる
借入2000万円・年利3%・20年の場合、繰上返済100万円(期間短縮型)で利息削減は約786,616円まで膨らみます。このとき投資と比べると
| 運用利回り | 100万円×20年の増え分 | 繰上返済との勝敗 |
|---|---|---|
| 3% | 約806,111円 | 投資がわずかに有利 |
| 4% | 約1,191,123円 | 投資が明確に有利 |
金利3%でも「NISAで3%超え」なら投資優位は変わりません。ただし3%のローンを持つ世帯にとって、確実な3%のリターン(=繰上返済)は、市場リスクを取らずに手に入る貴重な利回りです。リスク許容度が低いなら「迷わず繰上返済」が正当化できます。
「どっちを選ぶか」の決め方(フロー)
- まず予備軍を確保:繰上返済や投資に回す前に、生活防衛の現預金(最低3〜6ヶ月分)と医療・死亡保険の空白を埋める。
- 住宅ローン控除を確認:年末残高の0.7%(または1%)が戻る期間は、ローンの実質負担が下がるので、繰上返済の魅力はその分だけ減ります。控除を受けている年は「金利 − 控除相当」で考える。
- 金利と運用利回りを比べる:NISA等の税引後利回りがローン金利を上回れば基本は投資優位、下回れば繰上返済優位。
- リスク許容度で調整:市場の変動で眠れなくなるなら、確実な繰上返済へ。余裕があれば投資を厚く。
- 折衷もアリ:100万円なら「50万繰上返済+50万投資」で、元本削減の安心感と運用の伸びを両取りできます。
よくある誤算3つ
- 「繰上返済=100万円得」と勘違い:浮くのは利息分(金利1.5%で約34万円)だけ。元本100万円はもともと返すお金だから「得」にはならない。
- 投資額を「税引き前」で比べる:普通口座なら約20%の税金が引かれる。NISAで運用する前提なら非課税の数字で比べないと、繰上返済との勝敗が逆転する。
- 住宅ローン控除を忘れる:控除を受けている年はローンの実質金利が下がっているので、控除終了まで待ってから繰上返済を考えるのが効率的な場合がある。
関連ツールで自分の数字を確かめる
自分の借入条件で月額や総支払を出すなら 住宅ローン計算ツール、毎月の積立が将来いくらになるかは 複利積立シミュレーション が使えます。繰上返済の仕組みは 期間短縮の計算記事 や 利息削減額の記事、借り換えとの比較は 借り換えの分岐点 も併読を。複利の働き自体は 複利の計算式と72の法則、NISAの資産額シミュレーションは つみたてNISAの記事 で確認できます。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の繰上返済は、金融機関ごとの手数料(一部は無料)、期間短縮型/額軽減型の取扱い、ボーナス返済の有無、住宅ローン控除の適用状況、運用の分配金・税金・手数料などによって変わります。投資の利回りは変動し、元本割れのリスクもあります。本記事は情報提供を目的とし、個別の金融・税務相談に代わるものではありません。最終的な判断は、ご自身のリスク許容度と専門家の助言を踏まえてください。
自分の条件で試したい場合は 住宅ローン計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
よくある質問
繰上返済と投資、どちらが得ですか?
ローン金利と運用利回り(NISA等の税引後)を比べ、運用利回りが金利を上回れば投資優位、下回れば繰上返済優位です。繰上返済の実質利回りはローン金利そのもの(非課税・確実)。借入2000万・金利1.5%・20年の場合、100万円繰上返済で利息約34万円削減、同じ100万円を1.5%で20年運用すると約35万円増え、同率なら投資がわずかに有利になります。
繰上返済100万円で利息はいくら浮きますか?
借入2000万円・年利1.5%・20年(元利均等)で、期間短縮型なら利息約34万円削減(完済が約18.8年に短縮)、月額減少型なら利息約16万円削減(新月額約9.2万円)です。200万円なら期間短縮型で約65万円削減になります。
NISAなら繰上返済より投資のほうが有利ですか?
金利1.5%のローンなら、つみたてNISA等で税引後も1.5%を超える利回り(目安2%以上)が見込めれば、理論上は投資優位です。ただし投資には変動リスクがあり、確実性を取るなら繰上返済(=確実な金利分の節約)が現実的です。
住宅ローン控除があるときはどう考えますか?
年末残高の0.7%(または1%)が戻る期間は、ローンの実質負担が下がるため、繰上返済の魅力はその分だけ減ります。控除を受けている年は「金利 − 控除相当」で比較し、控除終了を待ってから繰上返済を考えるのが効率的な場合があります。
半分ずつ(折衷)でもいいですか?
はい。100万円なら「50万繰上返済+50万投資」のように分けることで、元本削減の安心感と運用の伸びを両取りできます。迷ったときの実務的な選択肢です。