所得控除と税額控除の違いを還元額で比べる——同じ10万円の控除でどちらが得かを1円単位で計算

2026-08-24 | 税金 所得税 住民税 所得控除 控除

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「控除って、結局いくら得になるの?」——確定申告や年末調整の用語で一番誤解されやすいのが、「所得控除」と「税額控除」は別物という点です。ネットで「控除の種類」は出てきますが、「同じ10万円の控除でも、どちらの種類かで戻ってくる金額が5倍違う」ことを、実際の計算式と数値で追った記事は意外と少ないものです。

この記事では、会社員・独身・扶養なし・40歳未満(介護保険料なし)を前提に、①2つの控除の正体 ②年収500万円で「同じ10万円」を比べたときの還元額 ③なぜ5倍の差が生まれるか、を1円単位に計算します。自分の年収で試したい場合は 手取り計算ツール や 税込計算ツール と合わせてご覧ください。

結論:同じ10万円の控除でも、還元額は約5倍違う

控除の種類所得税の還元住民税の還元合計還元額
所得控除 10万円約▲10,200円約▲10,000円約▲20,200円
税額控除 10万円(所得税のみに効く前提)約▲100,000円±0円(原則不変)約▲100,000円

年収500万円・独身の場合、所得控除は控除額の約2割(限界税率分)しか戻らないのに対し、税額控除は控除額そのものが丸ごと戻ります。この差を生むのが、2つの控除が「どこに効くか」の違いです。

ステップ1:所得控除の正体——「かかる税のもと」を減らす

所得控除は、税金を計算する前の「もとになる額(課税所得)」から控除額を引きます。つまり戻るのは、「引いた分に掛かるはずだった税」だけです。

所得控除の還元額 ≒ 控除額 ×(限界所得税率 + 限界住民税率)

年収500万円のベース(年収500万円の手取りを分解した記事と同じ前提)をおさらいします。

この年収帯の限界税率は所得税10%+住民税10%=約20%。だから所得控除10万円は、その20%分(約2万円)しか戻らないのが仕組み上決まっています。

ステップ2:税額控除の正体——「税そのもの」を減らす

税額控除は、所得ではなく、すでに計算し終えた税額から直接引きます。戻るのは控除額そのものです(その税の税額が上限)。

税額控除の還元額 = 控除額(上限はその税の税額)

先のベースで所得税は約14.09万円かかっています。ここから税額控除10万円を引けば、還元額はそのまま10万円です。所得控除の約2万円と比べて約5倍になります。

注意点:多くの税額控除(配当控除など)は所得税に対してのみ働き、住民税は原則として変わりません。例外として住宅ローン控除には「所得税分」のほか「住民税分(限度額の約5%)」も別途あります。この記事の比較表は「所得税のみに効く税額控除」を前提にしています。

ステップ3:年収500万円で、同じ10万円を順に計算する

ベースの税金(控除なし)は次のとおりでした。

項目金額計算根拠
所得税(復興税込)約140,900円(235.5万×10%−9.75万)×1.021
住民税約245,500円(240.5万×10%)+均等割5,000円

ケースA:所得控除 10万円を足したとき

項目控除なし所得控除10万還元額
所得税140,900円130,700円▲10,200円
住民税245,500円235,500円▲10,000円
合計386,400円366,200円▲20,200円

控除額10万円のうち、手元に残るのは約2.0万円(約20%)。残りの約8万円分は、もともと税金が掛かっていた「所得の範囲」として既に引かれているため、控除しても戻ってきません。

ケースB:税額控除 10万円を足したとき

項目控除なし税額控除10万還元額
所得税140,900円40,900円▲100,000円
住民税245,500円245,500円±0円
合計386,400円286,400円▲100,000円

控除額10万円が、そのまま10万円戻ってきます。ケースAとの差は約7.98万円、つまり約5倍の還元です。

注意点——「税額控除のほうが得」の通用条件

具体例:住宅ローン控除が「なぜ強い」か

住宅ローン控除は税額控除です。控除額の目安は「住宅ローンの年末残高×1%」(上限あり)で、これがほぼそのまま所得税から引かれます。たとえば年末残高3,000万円なら控除額30万円、所得税が30万円以上あれば丸ごと30万円が戻り(引き切れなければ還付)、これを最大10年(一定の要件で13年)続けられます。同じ金額を「ローン利息の所得控除」で受けるなら、還元は「30万円×限界税率(約20%)=約6万円」どまりです。この差が、住宅ローン減税が節税効果トップクラスと言われる理由です。

関連する計算・ツール

所得税のしくみは 所得税の計算方法を1円単位で解説した記事、住民税の仕組みは 住民税の計算記事、給与所得控除そのものは 給与所得控除の計算記事 で確認できます。年収別の手取り内訳は 年収500万円・年収1000万円、昇給時に手取りがどう動くかは 限界税率と手取りの記事 にまとめています。自分の年収で同じ内訳を見たい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は会社員・独身・扶養なし・40歳未満を前提とした単純な概算モデルです。実際の還元額は、扶養親族の有無(基礎控除・配偶者控除で税率計が変わる)、健康保険の種別、居住自治体の住民税率、各控除の適用要件と上限、および令和の税制改正などによって変わります。また「税額控除の上限」「還付・繰越の扱い」は控除の種類ごとに異なります。正確な金額と適用可否は、国税庁の公式情報およびご自身の源泉徴収票・確定申告書で確認してください。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務判断に代わるものではありません。

よくある質問

所得控除と税額控除、どう使い分けるの?

控除のほとんどは「どちらかを選ぶ」ものではなく、対象要件を満たせば自動で所得控除として受けられます(基礎控除・配偶者控除・生命保険料控除など)。自分で掛金を払って受けるもの(iDeCo、小規模企業共済、ふるさと納税の実質還元)は、掛金が所得控除になる代わり、受取時や税額控除で有利になる仕組みと比べる必要があります。同じ金額を控除するなら、原則として税額控除のほうが還元額が大きいため、税額控除として受けられる制度(住宅ローン控除など)は優先的に活用すべきです。

同じ金額なら税額控除のほうが得なの?

はい、原則としてそうです。所得控除は「(限界所得税率+限界住民税率)×控除額」しか戻りません(年収500万円なら約20%還元)。一方、税額控除は控除額そのものが税から引かれるため、10万円の控除なら10万円が戻ります。ただし税額控除には「その税の税額が上限」という決まりがあり、所得控除は所得を減らすことで後の税計算全体に影響する場合もあるため、単純な大小だけで決められない場面もあります。

年収が高いほど所得控除の還元は大きくなる?

はい。所得控除の還元額は「控除額×限界税率」なので、年収が上がって限界税率(所得税+住民税)が高くなるほど大きくなります。年収500万円(所得税10%台)なら10万円の控除で還元は約2万円ですが、年収1,000万円(所得税20%台)なら約3万円に膨らみます。逆に言えば低年収ほど「税額控除との差」が際立ちます。

住宅ローン控除はどちらにあたる?

税額控除です。だから控除額(原則「年末残高×1%」、上限あり)がほぼそのまま所得税から引かれ、引き切れない分は還付(あるいは住民税分の控除)になります。これが「住宅ローン減税はお得」と言われる理由で、同じ金額を所得控除で受けるより還元効率が高くなります。

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