限界税率とは? 昇給したとき手取りがいくら増えるかを計算し、850万の壁で急増する理由を解く

2026-08-24 | 税金 手取り 限界税率 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「今月、昇給が決まった。手取りはいくら増えるんだろう?」「副業で10万円稼いだら、手元にはいくら残る?」——年収や稼ぎを増やしたいとき、誰もが気になるのが「手取りがどう動くか」です。ネットで「手取りは年収の8割」という目安は出てきますが、「もう1円稼いだときに実際にいくら引かれるか(限界税率)」を、昇給の具体例で1円単位に追った記事は意外と少ないものです。

この記事では、会社員・独身・扶養なし・40歳未満を前提に、①限界税率の正体 ②年収500万→600万の昇給で手取りがどう増えるか ③年収850万の「壁」でなぜ限界税率が急増するか、を順に計算します。自分の年収で試したい場合は 手取り計算ツール に金額を入れれば同じロジックで即座に出ます。

結論:昇給額のうち「手元に残る割合」は年収帯で大きく変わる

年収帯の変化額面の増え方手取りの増え方限界手取り率限界税率
500万→600万+1,000,000円約+717,400円約72%約28%
850万→900万+500,000円約+289,900円約58%約42%

同じ「年収を上げる」でも、低い年収帯では増えた額の7割強が手元に残るのに対し、850万の壁を超えると約6割に落ちます。この差を生むのが累進課税と給与所得控除の上限です。

ステップ1:限界税率の正体——平均税率との違い

限界税率は「今ある所得に1円(または1万円)上乗せしたときに、所得税・住民税・社会保険料の合計でどれだけ引かれるか」を示す税率です。一方、よく使われる平均税率は「これまでに稼いだ額に対してかかった税の全体平均」です。

限界税率 = (増えた分から引かれる税・保険料の合計) ÷ (増えた額面)

日本の所得税は累進課税(稼ぎが多いほど高い税率が掛かる)なので、平均税率より限界税率のほうが高くなります。昇給や副業で「手取りがいくら増えるか」を知りたいときに効くのは、平均税率ではなくこの限界税率です。

ステップ2:年収500万→600万の昇給を計算する

それぞれの年収で、給与所得控除 → 社会保険料 → 所得税 → 住民税を順に求めます(会社員・独身・扶養なし・40歳未満の目安)。

年収500万円の手取り(再計算)

手取り = 500万 − 72.5万 − 14.09万 − 24.55万 = 約388.86万円(手取り率 約77.8%)

年収600万円の手取り

手取り = 600万 − 87万 − 21.80万 − 30.6万 = 約460.60万円(手取り率 約76.8%)

増分を比べる

項目500万600万増分
年収(額面)5,000,000円6,000,000円+1,000,000円
社会保険料725,000円870,000円+145,000円
所得税(復興税込)140,900円218,000円+77,100円
住民税245,500円306,000円+60,500円
手取り約3,888,600円約4,606,000円+717,400円

額面で100万円増えて手取りは約71.7万円増え、引かれるのは約28.3万円(社会保険料14.5万+所得税7.7万+住民税6.1万)。この区間の限界税率は約28%です。よく言われる「手取りは8割」の目安は、このあたりの年収帯の限界手取り率(約72%)と一致します。

ステップ3:なぜ年収850万の壁で限界税率が跳ね上がるか

年収が高くなると、給与所得控除が「上限の195万円」に達するため、これ以上年収が上がっても控除額は増えません。この上限に達するのは収入850万円超の区分です。ここから先は増えた分が丸ごと課税所得に乗り、所得税の区分も10%(控除額9.75万)から20%(控除額42.75万)へ移るため、実効税率が急上昇します。

年収850万円

手取り = 850万 − 123.25万 − 54.37万 − 48.93万 = 約623.45万円

年収900万円

手取り = 900万 − 130.5万 − 63.86万 − 53.20万 = 約652.44万円

増分を比べる

項目850万900万増分
年収(額面)8,500,000円9,000,000円+500,000円
給与所得控除1,950,000円1,950,000円±0円(上限で固定)
社会保険料1,232,500円1,305,000円+72,500円
所得税(復興税込)543,700円638,600円+94,900円
住民税489,300円532,000円+42,700円
手取り約6,234,500円約6,524,400円+289,900円

額面で50万円増えて手取りは約29万円増え、引かれるのは約21万円。この区間の限界税率は約42%まで跳ね上がります。決め手は「給与所得控除が増えなくなった」ことと「所得税が10%区分から20%区分へ移った」ことの2つです。年収1000万円の手取りの内訳は 年収1000万円の手取りを1円単位で分解した記事 にまとめています。

注意点——社会保険料の「階級」で数値はステップしない

本記事の社会保険料は「年収×約14.5%」の目安ですが、実際の会社員の保険料(健康保険+厚生年金)は標準報酬月額という等級表に当てはめて決まります。そのため年収が1円増えただけでは保険料は変わらず、等級の境をまたいだときにだけ跳ね上がります。また40歳以上では介護保険料(約0.9%の半分)が加わり、手取りはさらに年数万円下がります。扶養家族がいれば基礎控除や配偶者控除が増えて手取りは上がり、居住自治体によって住民税の均等割も異なります。

「限界税率」を使うべき場面:昇給交渉、転職の年収シミュレーション、副業の本業への影響試算です。「額面の増え方」以上に「手取りの増え方」を確認するのが鉄則です。ただし扶養の壁(103万・130万・150万)や配偶者特別控除の壁は、社会保険料の非連続な跳ね上がりが主因なので別のロジックになります(年収の壁を手取りの逆転額で比べた記事 へ)。

関連する計算・ツール

給与所得控除そのものは 給与所得控除の計算記事、所得税のしくみは 所得税の計算記事、住民税の仕組みは 住民税の計算記事、手取り率の全体像は 手取り率を年収別に比べた記事、年収別の手取り内訳は 年収500万円・年収1000万円 の各記事で確認できます。自分の年収で同じ内訳を見たい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

よくある質問

限界税率(けいかいぜいりつ)とは何ですか?

今ある所得に「もう1円(あるいは1万円)稼ぎを上乗せしたとき」に、所得税・住民税・社会保険料の合計でどれだけ引かれるかを示す税率です。一方「平均税率」は、これまでに稼いだ額に対してかかった税の全体平均です。昇給や副業で「手取りがいくら増えるか」を知りたいときに効くのは、平均税率ではなくこの限界税率です。

年収500万から600万に昇給すると手取りはいくら増えますか?

会社員・独身・扶養なし・40歳未満(介護保険料なし)の目安で、年収500万円の手取りは約389万円、600万円は約461万円です。額面で100万円増えて手取りは約72万円増えるため、この区間の限界手取り率は約72%、限界税率は約28%です(社会保険料約14.5万+所得税約7.7万+住民税約6.0万=約28.2万円が引かれます)。

なぜ年収850万円の手前で限界税率が跳ね上がるのですか?

給与所得控除は収入850万円超で「上限の195万円」に達し、それ以上は年収が上がっても増えません。よって増えた分がそのまま課税所得に乗り、所得税が10%区分(控除額9.75万)から20%区分(控除額42.75万)へ移ることで実効税率が急上昇します。850万→900万では額面50万円増に対して手取りは約29万円増にとどまり、限界税率は約42%まで跳ね上がります。

副業で少し稼いだときも同じ計算で手取りが増えますか?

副業を本業の給与とは別に「雑所得」などで確定申告する場合、その分の課税所得が増えるため、原則として本業の限界税率に近い税率(所得税+住民税でおおむね10〜23%+復興税)で引かれます。ただし社会保険料は本業の標準報酬月額で決まるため、副業だけでは増えないのが通常です。20万円の壁(給与以外の所得が20万円以下なら確定申告不要)などのルールも絡むため、正確な手取りは手取り計算ツールや確定申告の目安と合わせて確認してください。

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