相続時精算課税と暦年課税どちらが得? 2024年改正で逆転した分岐点——財産1億円・子2人で年110万×10年なら精算課税が1,005,000円有利、年500万×5年なら暦年が500,000円有利

2026-08-29 | 贈与税 相続税 相続時精算課税 暦年課税 生前贈与 税金 家計 計算 節税

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「親から生前贈与を受けるなら、相続時精算課税と暦年課税どちらを選ぶべき?」「2024年から精算課税に年110万円の基礎控除ができたと聞いたけど、それで何が変わったの?」「暦年贈与の『3年以内加算』が『7年以内』になったって本当?」——親が70代に入った、実家の建て替え資金をもらう、住宅の頭金を出してもらう、といったタイミングでこの検索をする人が急増しています。ところが検索結果に並ぶのは制度の条文を並べ替えただけの解説か、贈与税額だけを返す単票の計算機ばかりです。「結局、自分のケースではどちらが何円安いのか」に答えているページはほとんどありません。

この判断が難しいのは、贈与税だけを見ても答えが出ないからです。精算課税は名前のとおり「相続のときに精算する」制度なので、贈与税+将来の相続税の合計で比べなければ意味がありません。しかも2024年(令和6年)1月1日の改正で、精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、暦年課税の相続前加算期間は3年から7年へ延長されました。改正前の常識がそのまま逆転した論点がいくつもあります。

この記事では、①両制度の計算式、②2024年改正で何が入れ替わったか、③「贈与税+相続税の合計」で比べた具体数値例(財産1億円・子2人のモデルで1円単位)、④どちらが得かの分岐点、⑤一度選ぶと戻れないという最大の落とし穴、を順に整理します。ページ内の計算ツールはすべてブラウザ内で完結し、入力した金額が外部へ送信されることはありません。

📌 結論ファースト:相続税がかかる見込みがあり、コツコツ長期で贈与するなら「精算課税」が有利になりました(精算課税の年110万円は相続財産に加算されず、暦年の110万円は7年以内加算で戻されるため)。財産1億円・子2人・年110万円×10年のモデルでは、精算課税6,050,000円 vs 暦年課税(死亡が7年以内)7,055,000円で、精算課税が1,005,000円得。逆に贈与が7年より前に終わり、その後も長生きする見込みなら暦年課税(同モデル年500万円×5年で暦年6,375,000円 vs 精算6,875,000円と暦年が500,000円得)。そして精算課税は一度選ぶと同じ親からの贈与は永久に暦年へ戻せません。

2つの制度の計算式(まず土台を固める)

生前贈与を受けたときの贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2つの計算方法があります。何もしなければ暦年課税、精算課税を使いたい場合だけ届出をします。

① 暦年課税の計算式

贈与税 =(1年間にもらった財産の合計 − 基礎控除110万円)× 税率 − 控除額

1月1日から12月31日までの1年間で受け取った金額を合計し、そこから110万円を引いた残りに税率をかけます。この110万円は「もらう人1人につき年110万円」で、父から110万円・母から110万円もらったら合計220万円 − 110万円 = 110万円が課税対象です。

税率は2種類あります。特例贈与財産(直系尊属=父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与)と、一般贈与財産(それ以外=兄弟間、夫婦間、他人からなど)です。

基礎控除後の金額特例税率特例の控除額一般税率一般の控除額
200万円以下10%0円10%0円
300万円以下15%10万円15%10万円
400万円以下15%10万円20%25万円
600万円以下20%30万円30%65万円
1,000万円以下30%90万円40%125万円
1,500万円以下40%190万円45%175万円
3,000万円以下45%265万円50%250万円
4,500万円以下50%415万円55%400万円
4,500万円超55%640万円55%400万円

親から子への贈与は特例税率です。1,000万円もらった場合、(1,000万円 − 110万円) × 30% − 90万円 = 1,770,000円。一般税率だと (1,000万円 − 110万円) × 40% − 125万円 = 2,310,000円 で、54万円も違います。

② 相続時精算課税の計算式(2024年改正後)

贈与税 ={(その年の贈与額 − 基礎控除110万円)の累計 − 特別控除2,500万円}× 20%
そして相続時に =(基礎控除110万円を引いた後の贈与額の累計)を相続財産に足し戻す

ポイントは3段構えです。(a) 年110万円の基礎控除(2024年新設)を毎年引ける。(b) 残りを累計して2,500万円までは贈与税0円。(c) 2,500万円を超えた部分は一律20%。累進税率ではなく定率です。

そして最重要なのが「相続時に足し戻す」という性質です。精算課税で贈与した財産(年110万円の基礎控除を引いた後の額)は、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算して相続税を計算します。すでに払った20%の贈与税は相続税から差し引かれ、引き切れなければ還付されます。つまり精算課税は減税ではなく、課税の繰り延べ(後払い)です。

※ 精算課税を使うには、贈与者が60歳以上の父母・祖父母、受贈者が18歳以上の子・孫であることが要件です。贈与を受けた翌年の申告期間に「相続時精算課税選択届出書」を提出します。

2024年改正で「常識」が2つ入れ替わった

令和5年度税制改正(2024年1月1日以後の贈与に適用)で、この2制度の有利・不利が逆転しました。変わったのは次の2点です。

論点2023年まで2024年以後
精算課税の年110万円控除なし(1円でも申告義務)あり(年110万円までは申告も不要・相続財産に加算されない)
暦年課税の相続前加算死亡前3年以内の贈与を加算死亡前7年以内を加算(4〜7年前の分は合計100万円を控除)
精算課税の加算贈与額の全額年110万円を引いた後の額(110万円分は永久に非課税)

改正前の精算課税は「2,500万円まで無税だが全額が相続財産に戻る、しかも一度選ぶと110万円の非課税枠を失う」という、多くの人にとって使いにくい制度でした。改正後は精算課税でも年110万円の非課税枠が使え、しかもその110万円は相続財産に足し戻されません。

⚠️ ここが最大の逆転ポイント。暦年課税の年110万円は、贈与者が7年以内に亡くなると相続財産に足し戻されて課税対象になります(=結果的に非課税枠が消える)。一方、精算課税の年110万円は足し戻されません。つまり「相続が近い人からの、少額のコツコツ贈与」では精算課税のほうが確実に非課税枠を守れる——改正前とは真逆の結論です。

暦年課税の「7年以内加算」の細かいルール

7年ぶんが単純に全額戻るわけではありません。

※ 7年への延長は段階的に適用されます。2024年1月1日以後の贈与から数えるため、加算期間が実際にフル7年になるのは2031年1月以降の相続からです。それまでは「2024年1月1日以後の贈与のうち、相続開始前7年以内のもの」という形で徐々に伸びていきます。

具体数値例:財産1億円・子2人で「贈与税+相続税の合計」を比べる

ここが本題です。贈与税だけを見ると精算課税が圧勝しますが(2,500万円まで0円なので当然)、相続税まで含めると結論が変わります。共通の前提を置いて1円単位で比べます。

【共通前提】親の財産 1億円 / 法定相続人は子2人 / 贈与を受けるのは子のうち1人
相続税の基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
贈与しなかった場合の相続税 = 7,700,000円(これが比較の基準)

ケースA:年110万円ずつ10年間(合計1,100万円)

もっとも一般的な「基礎控除内のコツコツ贈与」です。

項目暦年課税(死亡が7年以内)相続時精算課税
贈与税0円0円
相続財産に足し戻される額670万円(7年ぶん110万×7=770万 − 100万円控除)0円(110万円は加算対象外)
相続税の課税対象財産8,900万円 + 670万円 = 9,570万円8,900万円
相続税7,055,000円6,050,000円
合計負担7,055,000円6,050,000円

差は1,005,000円。精算課税の勝ちです。暦年課税では110万円の非課税枠が7年ぶん取り消され(4〜7年前の分から100万円だけ控除できるので、実質670万円が戻る)、一方で精算課税の110万円は永久に相続財産から外れるためです。「相続税がかかる家で、贈与を始めるのが遅かった」ケースでは精算課税が明確に有利になりました。

ケースB:年500万円ずつ5年間(合計2,500万円)、その後10年以上生存

まとまった額を短期間で移し、贈与終了から7年以上経ってから相続が発生したケースです。

項目暦年課税相続時精算課税
贈与税(1年あたり)(500万−110万)×20%−30万 = 485,000円0円(特別控除2,500万円の枠内)
贈与税の5年合計2,425,000円0円
相続財産に足し戻される額0円(7年より前なので加算なし)1,950万円((500万−110万)×5年)
相続税の課税対象財産7,500万円7,500万円 + 1,950万円 = 9,450万円
相続税3,950,000円6,875,000円
合計負担6,375,000円6,875,000円

差は500,000円。今度は暦年課税の勝ちです。暦年課税は「贈与税を払ってでも財産を相続の枠外へ完全に逃がす」制度なので、贈与から7年を生き抜けば、払った485,000円×5年は相続財産の圧縮という形で回収できるのです。一方、精算課税で移した1,950万円は何年経っても相続財産に戻ってきます。

💡 この2ケースが本質です。精算課税は「年110万円の非課税枠を確実に守る制度」、暦年課税は「贈与税を前払いして財産を相続の枠外へ出す制度」。前者は相続が近い人・少額向き、後者は時間がある人・多額向き。年110万円を超える額を長期で贈るなら暦年課税、110万円以内で確実に守りたい/相続が近いなら精算課税が基本線になります。

計算ツール:あなたのケースでどちらが安いか

親の財産額・法定相続人の数・毎年の贈与額・贈与年数・贈与終了から相続までの年数を入れると、暦年課税と精算課税それぞれの「贈与税+相続税の合計」を計算して勝敗を出します。すべてブラウザ内で処理し、入力した金額はどこにも送信されません。

精算課税を選ぶ前に知るべき5つの落とし穴

① 一度選ぶと、その親からの贈与は永久に暦年へ戻せない

これが最大の注意点です。「相続時精算課税選択届出書」を出すと、その贈与者(父)からの贈与は、以後すべて精算課税で計算されます。翌年から暦年課税に戻すことはできません。撤回も不可です。

ただし贈与者ごとに選択できるので、「父からは精算課税、母からは暦年課税」という組み合わせは可能です。この場合、母からの贈与には年110万円の暦年基礎控除が使え、父からの贈与には精算課税の年110万円が使えるため、合計で年220万円を非課税で受け取れます。

② 値上がりする財産は精算課税が有利、値下がりする財産は不利

精算課税で相続財産に足し戻すときの評価額は「贈与したときの価額」です。時価ではありません。

贈与時1,000万円の株式 → 相続時に3,000万円になっていた場合
精算課税:1,000万円で加算(値上がり2,000万円は完全に非課税)
逆に相続時500万円まで下がっていた場合
精算課税:それでも1,000万円で加算(下がった分だけ損)

したがってこれから確実に値上がりする資産(再開発予定地、成長株、収益物件)は精算課税で早めに移すのが定石です。逆に含み損を抱えた資産を精算課税で渡すのは最悪の選択になります。

③ 小規模宅地等の特例が使えなくなる

自宅の土地を精算課税で生前贈与すると、相続時の小規模宅地等の特例(居住用330㎡まで評価額80%減)が使えません。この特例は「相続または遺贈で取得した宅地」が対象だからです。評価額5,000万円の自宅土地なら、特例が使えれば1,000万円で評価されるところが、生前贈与すると5,000万円のまま加算されます。自宅の土地の生前贈与は、原則として避けるべきです。

④ 不動産の生前贈与は登録免許税・不動産取得税が高い

不動産を移すコストは、相続と生前贈与で大きく違います。

税目相続で取得生前贈与で取得
登録免許税固定資産税評価額 × 0.4%固定資産税評価額 × 2.0%
不動産取得税非課税評価額 × 3%(住宅・土地)

評価額2,000万円の不動産なら、相続は登録免許税8万円のみ。生前贈与だと登録免許税40万円+不動産取得税60万円=100万円かかります。差額92万円を上回る節税効果があるかどうかで判断してください。

⑤ 年110万円以内でも「名義預金」と見なされると全部アウト

制度選択より前に、そもそも贈与が成立しているかが問われます。親が子名義の口座にお金を入れ、通帳と印鑑を親が管理していた——これは贈与ではなく名義預金(実質は親の財産)と判定され、全額が相続財産に加算されます。

⚠️ 贈与を成立させる3条件。(1) あげる・もらうの合意があること(贈与契約書を毎年作る)、(2) もらった人が自由に使えること(通帳・印鑑・キャッシュカードを本人が管理)、(3) 受贈者の口座へ振込で記録を残すこと(現金手渡しは証拠が残らない)。この3点が崩れると、10年コツコツ贈った1,100万円がまるごと相続財産に戻されます。制度選択の議論はこの土台の上でしか意味を持ちません。

判断フローチャート(3つの質問で決まる)

ここまでの内容を、実務で使える順序に並べ直します。

質問1:そもそも相続税がかかりますか?

財産が3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数以下なら相続税はかかりません(子2人なら4,200万円、子3人なら4,800万円)。

→ かからないなら制度選択は無意味です。年110万円以内に収めて贈与税を0円にすればそれで完結します。わざわざ精算課税の届出をする必要はありません(むしろ届出義務が増えるだけ損)。

質問2:贈与額は年110万円以内ですか?

→ 110万円以内なら「精算課税」が有利。暦年の110万円は7年以内加算で取り消されますが、精算課税の110万円は取り消されません。贈与者が高齢(80代以降)で相続が7年以内に発生する可能性が高いほど、この差が効きます。ケースAで見たとおり、1億円・子2人のモデルで1,005,000円の差です。

→ 110万円を大きく超えるなら「暦年課税」が基本。贈与税を払ってでも財産を相続の枠外に出せます。ただし7年生き抜くことが条件です。

質問3:贈与者は今から7年以上生きる見込みがありますか?

状況推奨理由
贈与者60代・健康・年110万円以内暦年 or 精算(差は小)7年加算を回避できる見込みが高い。柔軟性で暦年も可
贈与者60代・健康・年300万円以上暦年課税贈与税を払っても長期で相続財産を圧縮できる
贈与者80代以上・年110万円以内精算課税7年加算が確実に効くため、110万円を守れる精算課税が勝つ
値上がり確実な資産を移したい精算課税贈与時の低い評価額で固定できる
自宅の土地を移したいどちらも避ける小規模宅地等の特例(80%減)を失い、取得税・登録免許税もかかる
相続税がかからない財産規模暦年(届出不要)年110万円以内なら何もしなくても贈与税0円
💡 実務上の最適解は「併用」。制度は贈与者ごとに選べます。父からは精算課税(年110万円+値上がり資産)、母からは暦年課税(年110万円)とすれば、年220万円を非課税で受け取りつつ、父側の110万円は相続財産に戻らないという構成が作れます。片方の親だけで考えるのは機会損失です。

申告手続きと期限

どちらの制度も、申告が必要な場合は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者(もらった人)の住所地の税務署へ申告します。

ケース申告の必要提出書類
暦年課税・年110万円以内不要—(贈与契約書は自分で保管)
暦年課税・年110万円超必要贈与税の申告書(第一表)
精算課税・初年度必要(贈与額を問わず)申告書+相続時精算課税選択届出書+戸籍謄本等
精算課税・2年目以降で年110万円以内不要(2024年改正で不要に)—
精算課税・2年目以降で年110万円超必要贈与税の申告書(第一表・第二表)

2024年改正で「精算課税を選んだら毎年必ず申告」だった義務が緩和され、年110万円以内なら申告不要になりました。これも精算課税が使いやすくなった大きな要因です。

⚠️ 選択届出書の提出忘れは致命的。精算課税は初年度の期限内申告(3月15日まで)で届出書を出さないと適用できません。期限後申告では認められず、その年の贈与は暦年課税で計算されます。年2,000万円を精算課税のつもりで受け取り、届出を忘れると暦年課税で5,855,000円の贈与税が確定します(精算課税なら0円だった額です)。1日の遅れで587万円の差です。

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注意事項

本記事の数値は、相続税法および令和5年度税制改正(2024年1月1日以後の贈与に適用)に基づく相続時精算課税制度(贈与者60歳以上・受贈者18歳以上、年110万円の基礎控除、特別控除2,500万円、超過分一律20%、相続時に基礎控除後の累計額を相続財産に加算)、および暦年課税(年110万円の基礎控除、特例贈与財産の税率表、相続開始前7年以内の贈与を加算・うち4〜7年前の贈与から合計100万円を控除)を前提とした単純計算です。相続税は法定相続人が法定相続分どおりに取得したものとして計算しており、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、未成年者控除、障害者控除、相続税額の2割加算、生命保険金・死亡退職金の非課税枠、債務控除、葬式費用の控除は考慮していません。財産の評価額(不動産の路線価・倍率評価、非上場株式の評価、生命保険の権利評価など)は評価方法により大きく変動します。相続前加算期間の7年への延長は2024年1月1日以後の贈与から段階的に適用されるため、2031年より前に発生する相続では加算期間が7年に届きません。精算課税を選択した場合の撤回不可、名義預金と判定されるリスク、不動産贈与に伴う登録免許税・不動産取得税の負担、住宅取得等資金や教育資金の非課税特例との併用可否は、個別の事情および制度改正によって変わります。実際の税額および制度選択の判断は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事は情報提供を目的としたもので、個別の税務相談・相続対策の助言に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

相続時精算課税と暦年課税はどちらが得ですか?

一概には決まらず「贈与税+将来の相続税の合計」で比べる必要があります。財産1億円・子2人のモデルでは、年110万円×10年なら精算課税6,050,000円 vs 暦年課税(7年以内に相続)7,055,000円で精算課税が1,005,000円得。一方、年500万円×5年で贈与終了から7年以上生存する場合は暦年6,375,000円 vs 精算6,875,000円で暦年が500,000円得になります。少額・相続が近いなら精算課税、多額・時間があるなら暦年課税が基本線です。

2024年の改正で何が変わりましたか?

2点です。(1) 相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設され、その110万円は相続財産に加算されなくなりました(申告も不要)。(2) 暦年課税の相続前加算期間が死亡前3年以内から7年以内へ延長され、4〜7年前の贈与からは合計100万円を控除した残りが加算されます。この結果、少額のコツコツ贈与では精算課税が有利という、改正前とは逆の結論になりました。

相続時精算課税は途中で暦年課税に戻せますか?

戻せません。「相続時精算課税選択届出書」を提出すると、その贈与者からの贈与は以後すべて精算課税で計算され、撤回もできません。ただし選択は贈与者ごとなので、「父からは精算課税、母からは暦年課税」という組み合わせは可能です。この場合は年110万円+110万円=年220万円を非課税で受け取れます。

精算課税の年110万円は相続財産に加算されますか?

加算されません。2024年改正で新設された精算課税の基礎控除110万円は、相続時の加算対象から完全に除外されます。これに対し暦年課税の基礎控除110万円は、贈与者が7年以内に亡くなると相続財産に足し戻されるため非課税枠が結果的に消えます。ここが両制度の最大の違いです。

精算課税の贈与税率はいくらですか?

累計2,500万円の特別控除を超えた部分に一律20%です(累進税率ではありません)。年110万円の基礎控除を引いた後の額を累計し、2,500万円までは贈与税0円。例えば一括3,000万円を贈与すると(3,000万−110万−2,500万)×20%=780,000円ですが、同額を暦年課税で受け取ると10,355,000円になります。ただし精算課税で払った20%は相続税から差し引かれ、引き切れなければ還付されます。

値上がりする資産は精算課税が有利ですか?

有利です。精算課税で相続財産に足し戻す評価額は「贈与したときの価額」で固定されるため、贈与時1,000万円の株式が相続時に3,000万円になっていても1,000万円で加算されます。値上がり2,000万円は課税されません。逆に値下がりした場合も贈与時の高い価額で加算されるため、含み損のある資産の精算課税贈与は不利です。

自宅の土地を生前贈与してもいいですか?

原則として避けるべきです。生前贈与すると相続時の小規模宅地等の特例(居住用330㎡まで評価額80%減)が使えません。評価額5,000万円の土地なら特例適用で1,000万円評価になるところが5,000万円のまま加算されます。さらに生前贈与では登録免許税が2.0%(相続は0.4%)、不動産取得税3%(相続は非課税)が加わり、評価額2,000万円なら約92万円の追加コストになります。

相続税がかからない場合はどちらを選ぶべきですか?

制度選択は不要です。財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(子2人なら4,200万円)以下なら相続税はかかりません。この場合は年110万円以内の贈与で贈与税を0円にすればそれで完結し、わざわざ精算課税の届出をすると申告義務が増えるだけ不利になります。

名義預金と判定されないための条件は何ですか?

3点必要です。(1) あげる・もらうの合意があること(毎年の贈与契約書)、(2) もらった人が自由に使えること(通帳・印鑑・カードを受贈者本人が管理)、(3) 受贈者名義の口座へ振込で記録を残すこと。親が子名義口座に入金し通帳と印鑑を親が管理していた場合は名義預金(実質は親の財産)と判定され、10年で贈った1,100万円が全額相続財産に加算されます。

精算課税の届出はいつまでに出せばいいですか?

贈与を受けた年の翌年3月15日までの期限内申告で提出する必要があります。期限後申告では認められません。年2,000万円を精算課税のつもりで受け取り届出を忘れると、暦年課税で5,855,000円の贈与税が確定します(精算課税なら0円)。なお2024年改正により、2年目以降で年110万円以内の贈与は申告不要になりました。

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