ペアローンと単独ローン、どちらが得? 4000万円を夫婦で分けると住宅ローン控除が13年で約33万円増える計算(妻がパートだと逆に18万円損する条件つき)

2026-08-25 | 住宅ローン ペアローン 住宅ローン控除 共働き 住宅購入 家計 税金 手取り

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「共働きだから、住宅ローンは夫婦で分けた方が得らしい」——不動産会社やネット記事でそう聞いて、ペアローンを検討する方は多いはずです。ところが「なぜ得なのか」「いくら得なのか」を計算根拠つきで示したページはほとんどありません。多くは「控除を2人分使えるから得」という一言で終わっています。

実際には得になるかどうかは配偶者の年収で決まります。この記事では、同じ4000万円・変動0.5%・35年・元利均等という条件を固定したうえで、次の3ケースを1円単位で比べます。

結論を先に言えば、ケースBは13年で約32.9万円得、ケースCは約18.2万円損します。同じ「ペアローン」でも符号が逆になる理由は、控除額の計算式が2段階になっているからです。自分の数字は住宅ローン計算ツールと手取り計算ツールで確認できます。

📌 結論ファースト:住宅ローン控除は「年末残高×0.7%」で計算した額と「自分が納めた所得税+住民税(一部)」の小さい方しか戻りません。共働き(妻400万)なら控除枠が2人分になるためペアローンで13年合計267.9万円→300.8万円(+32.9万円)。しかし妻が年収130万のパートだと妻の控除枠は年8,185円しかなく、ペアにすると249.6万円(▲18.2万円)に減ります。分岐点は配偶者の年収およそ250万円です。

前提:住宅ローン控除の計算式は「2段階」になっている

まず仕組みを押さえます。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の年間の控除額は、次の2つのうち小さい方です。

① 控除額(計算上) = min(年末のローン残高, 借入限度額) × 0.7%

② 控除額(実際) = min(①, その年の所得税額 + 住民税から差し引ける額)

住民税から差し引ける額には上限があり、課税総所得金額×5%(上限97,500円)です。つまり所得税をほとんど納めていない人は、①で大きな数字が出ても②で削られて戻ってきません。ここがペアローンの損得を分ける唯一のポイントです。

この記事では、2024〜2025年入居の省エネ基準適合住宅を想定し、借入限度額は3000万円、控除期間は13年として計算します(子育て世帯・若者夫婦世帯の上限引上げや、認定長期優良住宅の枠は別です。詳細は住宅ローン控除額の計算記事を参照)。

ステップ1:夫と妻の「控除枠」を計算する

②の上限になる「所得税額+住民税から差し引ける額」を、サイト共通の概算モデル(社会保険料は年収の約14.5%、基礎控除48万円/住民税43万円、所得税は累進税率+復興特別所得税2.1%)で求めます。会社員・扶養なし・40歳未満(介護保険料なし)を前提にします。

項目夫(年収600万)妻(年収400万)妻パート(年収130万)
給与所得控除▲164万円▲124万円▲55万円
給与所得436万円276万円75万円
社会保険料(14.5%)▲87万円▲58万円▲18.85万円
課税所得(所得税)301万円170万円8.1万円
所得税額約207,773円約86,785円約4,135円
住民税から差し引ける額97,500円(上限)85,000円4,050円
控除枠(年間の上限)約305,274円約171,785円約8,185円

計算の根拠:夫の給与所得控除は年収600万が「360万超〜660万以下」の区分なので 600万×20%+44万=164万円。給与所得436万円から社会保険料87万円と基礎控除48万円を引いて課税所得301万円。所得税は「330万円以下=10%・控除97,500円」区分なので 301万×10%−97,500=203,500円、復興特別所得税2.1%を加えて207,773円。住民税から差し引ける額は 301万×5%=150,500円ですが上限97,500円で打ち止め。合計305,274円が夫の「1年に取り戻せる限界」です。

妻(年収400万)は課税所得170万円で5%区分なので 170万×5%=85,000円、復興税込みで86,785円。住民税側は 170万×5%=85,000円(上限内)。合計171,785円です。

ここが決定的:妻がパート(年収130万)だと課税所得は8.1万円しかなく、所得税4,135円+住民税側4,050円=年8,185円。年末残高が800万円あっても計算上の控除額は56,000円出るのに、実際には8,185円しか戻りません。差額47,815円は毎年消えます。

ステップ2:ケースA(夫単独4000万円)の13年合計

月々の返済額は、元利均等の公式(金利月利 i=0.005÷12、回数 n=420)で

月返済額 = 40,000,000 × i × (1+i)420 ÷ ((1+i)420 − 1) ≒ 103,834円

7月契約(初年度は7〜12月の6回返済)として各年末残高を求め、控除額を計算します。

年年末残高①残高×0.7%
(限度3000万で頭打ち)
②夫の控除枠実際の控除額
1年目約3,947.6万円210,000円305,274円210,000円
5年目約3,524.1万円210,000円305,274円210,000円
10年目約2,982.5万円208,777円305,274円208,777円
13年目約2,651.1万円185,574円305,274円185,574円
13年合計約2,678,779円

注目すべきは9年目まで控除額が210,000円で一定という点です。残高が3000万円を超えている間は借入限度額3000万円が天井になり、3000万×0.7%=210,000円で固定されるからです。4000万円借りても、控除の計算に使えるのは3000万円分だけ——これがケースAの構造的な取りこぼしです。

ステップ3:ケースB(夫2400万+妻1600万)で13年合計が32.9万円増える

持分比率6:4に合わせて、夫2400万円・妻1600万円のペアローンにします。月々の返済額は

夫 24,000,000円 → 月62,300円 / 妻 16,000,000円 → 月41,534円 / 合計 103,834円

合計の月返済額はケースAとまったく同じ103,834円です(同じ金利・同じ期間なので当然です)。総返済額も総利息も変わりません。変わるのは控除額だけです。

年夫の残高/控除妻の残高/控除ペア合計ケースA差
1年目2,368.6万円/165,801円1,579.1万円/110,534円276,335円210,000円+66,335円
5年目2,114.4万円/148,011円1,409.6万円/98,674円246,685円210,000円+36,685円
10年目1,789.5万円/125,266円1,193.0万円/83,511円208,777円208,777円±0円
13年目1,590.6万円/111,344円1,060.4万円/74,229円185,573円185,574円▲1円
13年合計1,804,688円1,203,126円3,007,814円2,678,779円+329,035円

なぜ増えるのか。カラクリは借入限度額3000万円が「契約ごと」に適用される点にあります。ケースAでは残高3947万円のうち3000万円分しか控除の対象になりませんでした。ケースBでは夫2368万円+妻1579万円=3947万円がどちらも限度額3000万円の内側なので、残高の全額が対象になります。

ケースA 1年目:min(3,947.6万, 3,000万) × 0.7% = 210,000円
ケースB 1年目:2,368.6万×0.7% + 1,579.1万×0.7% = 165,801 + 110,534 = 276,335円

そして2人の控除枠(夫305,274円・妻171,785円)がどちらも余裕を持って足りているため、この計算上の控除額が丸ごと戻ります。残高が減って合計が3000万円を割る10年目以降は差がゼロになり、メリットは前半9年に集中します。

ステップ4:ケースC(妻がパート年収130万)は逆に18.2万円損する

ここが本題です。同じ4000万円を「夫3200万+妻800万」に分けた場合を計算します。パートの妻は返済能力が低いため、持分は8:2としました。

年夫3200万の控除妻800万:計算上①妻の控除枠②妻の実際ペア合計
1年目210,000円55,267円8,185円8,185円218,185円
5年目197,347円49,337円8,185円8,185円205,532円
10年目167,022円41,755円8,185円8,185円175,207円
13年目148,459円37,115円8,185円8,185円156,644円
13年合計2,390,001円(576,565円)—106,405円2,496,406円

ケースC 13年合計 2,496,406円 − ケースA 2,678,779円 = ▲182,373円

損の内訳は2つあります。第1に、妻の借入800万円分の控除は計算上13年で576,565円出るのに、控除枠が年8,185円しかないため実際は106,405円しか使えず、約47万円が消滅します。第2に、夫の借入が4000万→3200万に減ったことで、夫側で3000万円の限度枠を使い切れない年(5年目以降)が生じ、控除額が210,000円→197,347円などと目減りします。この「夫の枠の取りこぼし」が約28.9万円です。

目安:配偶者の年収がおよそ250万円を下回ると、控除枠(所得税+住民税5%)が借入分の0.7%を下回りやすく、ペアローンの控除メリットは消えます。逆に配偶者の年収が300万円以上あり、かつ2人の残高合計が借入限度額(3000万円)を大きく超えるなら、分ける効果が最も大きく出ます。

ステップ5:諸費用は約12万円増える——控除メリットから差し引く

ペアローンは契約が2本になるため、契約ごとにかかる費用が二重になります。借入額の合計が同じでも、印紙税と抵当権設定の司法書士報酬は契約数に比例します。

費用項目計算ケースA(1契約)ケースB(2契約)
融資事務手数料(借入額×2.2%)4000万×2.2%880,000円880,000円
抵当権設定の登録免許税(借入額×0.4%)4000万×0.4%160,000円160,000円
印紙税(契約1本あたり2万円)2万×契約数20,000円40,000円
司法書士報酬(1契約あたり約10万円)10万×契約数100,000円200,000円
合計—1,160,000円1,280,000円

ペアローンの費用増 = 1,280,000 − 1,160,000 = 120,000円

したがって実質のメリットは

ケースB:控除増 329,035円 − 費用増 120,000円 = +209,035円
ケースC:控除減 ▲182,373円 − 費用増 120,000円 = ▲302,373円

ケースBは約20.9万円のプラスで残りますが、当初期待した32.9万円より小さくなります。ケースCは損が約30.2万円まで拡大します。「控除だけ見て決めない」のが鉄則です。事務手数料や登記費用の水準は金融機関・司法書士によって変わるため、実際の見積りで置き換えてください(費用の全体像は住宅ローンの諸費用記事で解説)。

ペアローンの注意点——お金以外のリスク

判断フロー:3つの質問で決める

  1. 2人の借入合計は限度額(3000万円)を超えるか? 超えないなら、分けても控除額は同じです(合計残高×0.7%が変わらないため)。この場合は単独で組んで団信のカバーを厚くする方が合理的です。
  2. 配偶者の年収は250万円以上あるか? 下回るなら控除枠が足りず、ケースCのように損をします。
  3. 配偶者は13年間働き続ける見込みか? 育休・退職の予定があるなら、その年数分の控除は消えると見込んでください。

3つすべてが「はい」なら、ペアローンの控除メリット(この例で13年約20.9万円の純増)が現実的に取れます。1つでも「いいえ」があるなら、単独ローン+厚い団信の方が総合的に有利になるケースが多いです。

関連ツール・記事で自分の数字を確かめる

いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、借入総額4000万円・変動金利0.5%・35年返済・元利均等・7月契約(初年度6回返済)、および夫年収600万円/妻年収400万円または130万円(ともに会社員・扶養なし・40歳未満・他の控除なし)、2024〜2025年入居の省エネ基準適合住宅(借入限度額3000万円・控除期間13年)を前提とした単純なモデル計算です。実際の控除額は、入居年・住宅の性能区分(認定長期優良住宅・ZEH水準・省エネ基準適合・その他)、子育て世帯/若者夫婦世帯の上限引上げ、床面積要件、合計所得金額2000万円以下の要件、他の所得控除(扶養控除・生命保険料控除・iDeCo等)の有無によって変わります。諸費用(事務手数料・司法書士報酬・印紙税)の水準は金融機関・司法書士ごとに異なります。金利は変動するものであり、将来の返済額・残高を保証するものではありません。制度の内容は改正されることがあるため、最新の要件は国税庁および各金融機関の公表資料で必ずご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務判断・ローン契約に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

ペアローンと収入合算(連帯債務・連帯保証)は何が違いますか?

ペアローンは夫婦がそれぞれ別々に住宅ローン契約を結ぶ方式で、契約が2本になります。連帯債務は契約1本に対して夫婦2人が借主、連帯保証は契約1本で借主は1人・配偶者は保証人です。住宅ローン控除の観点では、ペアローンと連帯債務は夫婦それぞれが自分の持分・借入分について控除を受けられますが、連帯保証は保証人側に控除がありません。この記事の計算はペアローン(または持分を按分した連帯債務)を前提にしています。

なぜローンを2本に分けると控除額が増えるのですか?

住宅ローン控除の年間の控除額は「年末残高×0.7%」で計算されますが、実際に戻ってくるのは各自が納めた所得税+住民税(住民税は課税総所得×5%・上限97,500円)が上限です。夫単独で4000万円を借りると、初年度の計算上の控除額21.0万円に対し夫の控除枠は約30.5万円なので満額出ます。しかし残高が大きい年ほど枠に近づき、後半で頭打ちになります。夫2400万+妻1600万に分けると、夫16.6万円+妻11.1万円=27.6万円と、2人分の枠を同時に使えるため、13年合計で約32.9万円多く戻ります。

妻がパート(年収130万円)でもペアローンにした方が得ですか?

いいえ、その場合はむしろ損です。年収130万円だと所得税は約4,135円、住民税から差し引ける額を足しても控除枠は年8,185円しかありません。夫3200万+妻800万に分けたときの13年合計は約249.6万円で、夫単独(約267.9万円)より約18.2万円少なくなります。妻の借入分に対する控除がほぼ使い切れないためです。目安として、妻の年収が概ね250万円を下回るならペアローンの控除メリットは消えます。

ペアローンにすると費用は増えますか?

増えます。契約が2本になるため、事務手数料(借入額×2.2%)は合計額が同じなら変わりませんが、印紙税と抵当権設定登記の司法書士報酬が2契約分かかります。この記事の例では単独116.0万円に対しペア128.0万円で、約12.0万円の増加です。控除メリット32.9万円から差し引いても約20.9万円のプラスですが、妻がパートのケースでは損がさらに広がります。

ペアローンのリスクは何ですか?

最大のリスクは団体信用生命保険(団信)の範囲です。ペアローンでは各自の契約にそれぞれ団信が付くため、夫が亡くなっても消えるのは夫の2400万円だけで、妻の1600万円は残ります。連帯債務でも夫婦連生団信を選ばない限り同様です。また離婚時に、共有名義の住宅と2本のローンを整理する手続きが単独ローンより複雑になります。片方が退職・休職して返済できなくなった場合の資金計画も、契約前に確認してください。

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