新NISA1800万円は何年で埋めるべき?|月10万15年と月30万5年で25年後に1,059万円差がつく計算(暴落シナリオ込み)
新NISAの生涯投資枠1,800万円を前にして、多くの人が最初にぶつかるのが「何年かけて埋めるのが正解なのか」という問いです。年間の投入上限は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)なので最短5年。しかし現実の家計で月30万円を5年間出し続けられる人は限られます。
この記事は、「早く埋めたほうが得」と言われる差額が具体的に何円なのかを1円単位で計算し、さらにその前提が崩れる(暴落が来る)場合に結論がどう変わるかまで検証します。前提はすべて明示し、計算式も載せます。
結論:年率5%が続く前提なら、月30万円5年と月10万円15年で25年後に1,059万円差
毎月の積立額別に、1,800万円を埋め終わるまでの年数と、投資開始から25年後の評価額(年率5%・毎月末積立・複利)を計算した結果が次の表です。
| 毎月の積立額 | 1,800万円到達 | 25年時点の評価額 | 25年間の投入額 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 5.0年(最短) | 54,132,115円 | 18,000,000円(枠100%) |
| 15万円 | 10.0年 | 48,423,106円 | 18,000,000円(枠100%) |
| 10万円 | 15.0年 | 43,538,552円 | 18,000,000円(枠100%) |
| 約6.7万円 | 22.5年 | 37,471,625円 | 18,000,000円(枠100%) |
| 5万円 | 30.0年(25年で未達) | 29,775,485円 | 15,000,000円(枠83.3%) |
| 3万円 | 50.0年(25年で未達) | 17,865,291円 | 9,000,000円(枠50.0%) |
月30万円5年と月10万円15年の差は54,132,115円 − 43,538,552円 = 10,593,563円。投入した元本はどちらも同じ1,800万円なのに1,059万円の差がつきます。これが「早く埋めろ」と言われる根拠の実体です。
計算の根拠:使っている式はこれだけ
毎月末に一定額を積み立てる場合の到達額(年金終価)は次の式です。
終価 = 毎月積立額 × ((1 + 月利)月数 − 1) ÷ 月利 月利 = 年率 ÷ 12
枠を埋め終わった後は追加投入がないので、そこからは単純な複利です。
25年時点の評価額 = 埋め終わり時点の評価額 × (1 + 年率)(25 − 到達年数)
月10万円・15年・年率5%(月利0.4166…%、180か月)で検算すると、
100,000 × ((1+0.05/12)180 − 1) ÷ (0.05/12) = 26,728,894円
元本は100,000×180=18,000,000円なので利益は8,728,894円。ここから10年放置すると 26,728,894 × 1.0510 = 43,538,552円。表の値と一致します。月30万円・5年(60か月)なら満了時20,401,825円(利益2,401,825円)、そこから20年で 20,401,825 × 1.0520 = 54,132,115円です。
差額1,059万円の正体は「非課税の複利が回った期間」
月30万円組は5年目に1,800万円すべてを市場に置き終えているので、残り20年間フルポジションで複利が回ります。月10万円組は15年目までは平均すると半分程度しか市場に置いていません。差は運用の巧拙ではなく「市場にお金があった時間×金額」の総量です。
この差は、払わずに済んだ税金としても測れます。同じ運用を課税口座(特定口座)でしたと仮定し、25年時点の利益に20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)を掛けます。
| ケース | 25年時点の利益 | 課税口座なら税額 |
|---|---|---|
| 月30万円・5年で満了 | 36,132,115円 | 7,340,239円 |
| 月10万円・15年で満了 | 25,538,552円 | 5,188,157円 |
非課税メリット自体が215万円ほど違うことになります。「NISAは早く埋めるほど得」という主張は、この2つの数字(複利期間と非課税額)に還元できます。
ただしこの結論は「年率がプラスで推移する」前提に完全依存している
ここが本記事のいちばん重要な部分です。上の計算はすべて年率5%が一定で続くという非現実的な前提でできています。実際の株式市場は▲30%級の下落を数十年に何度か経験します。そこで、暴落が来るタイミングを変えて同じ2ケースを比べます。
シナリオA:枠を埋め終わった直後に▲30%
| ケース | 満了時 | ▲30%直後 | 25年時点 |
|---|---|---|---|
| 月30万円・5年 | 20,401,825円 | 14,281,277円 | 37,892,481円 |
| 月10万円・15年 | 26,728,894円 | 18,710,226円 | 30,476,987円 |
それぞれ自分の満了直後に暴落を食らう想定なので、暴落後の回復期間が長い月30万円組がやはり有利です(差7,415,494円)。ただし満了直後の評価額が1,428万円まで沈むことに耐えられるか、という心理面の問題は残ります。
シナリオB:どちらにも同じ「5年目末に▲30%」が来る
同じ市場に居るのだから、暴落は同じ年に来るはずです。5年目末に▲30%が起きた場合、月30万円組は埋め終わった直後に全額が3割減。一方、月10万円組は残り10年ぶん、安い価格で買い続けられます。
| ケース | 5年目末の状態 | 15年目(満了時) | 25年時点 |
|---|---|---|---|
| 月30万円・5年 | 20,401,825円 → 14,281,277円 | (追加投入なし) | 37,892,481円 |
| 月10万円・15年 | 6,800,608円 → 4,760,426円 | 23,368,694円 | 38,065,141円 |
25年時点で逆転します(差172,660円、ほぼ互角)。「早く埋めるほうが有利」という差1,059万円は、暴落タイミングをそろえるだけで消えてしまう程度のものだということです。時間分散(=積立を長く続けること)は、リターンを最大化する手段ではなく結果のばらつきを縮める手段だと理解するのが正確です。
枠を使い切れない場合はどう考えるか
月5万円なら到達に30年、月3万円なら50年かかります。25年時点で枠の83.3%/50.0%しか使えません。これは損ではありません。理由は3つです。
- 生涯枠は消滅しない。年間枠(360万円)は使い切らないと翌年に繰り越せませんが、生涯枠1,800万円そのものには期限がありません。
- 売却すれば枠は復活する。売却した商品の簿価(取得価額)ぶんの生涯枠が翌年に復活します(年間枠360万円の制約は別途かかります)。使い切ったら終わりではありません。
- 枠の消化率は目的ではない。目的は必要な時期に必要な額があることです。枠100%消化のために生活が破綻するなら本末転倒です。
実務上の優先順位(ここを間違えると計算が無意味になる)
上の計算はすべて「25年間一度も売らない」ことが前提です。途中で売れば複利は途切れ、しかも売却した年の枠は復活しません(復活は翌年)。したがって次の順番を守ることが、年率を1%上げる工夫よりはるかに効きます。
- 生活防衛資金(生活費3〜6か月分、自営業なら1年分)を現金で確保する。これがないと、価格が最も安い局面で売る羽目になります。
- 金利の高い負債を先に返す。リボ払い(実質年率15%前後)やカードローンを抱えたまま期待年率5%の投資をするのは、確実な15%の支出を放置して不確実な5%を取る行為です。
- そのうえで余剰資金でNISA枠を消化する。ボーナス月だけ増額する、という運用でも構いません。
自分の数字で試算する
毎月の積立額・年率・年数を入れ替えて自分のケースを計算するには、下記のツールが使えます。すべてブラウザ内で計算され、入力内容が外部に送信されることはありません。
- 複利積立シミュレーション——毎月積立額・年率・年数から終価と利益を計算
- 手取り計算——月々いくら積立に回せるかの原資を確認
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注意点・免責
本記事の試算は①年率5%(毎月末積立・月複利)という仮定、②新NISAの生涯投資枠1,800万円・年間投資枠360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)という2026年8月時点の制度、③課税口座と比較する際の税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)を前提とした概算です。実際の運用成績は市場環境によって大きく変動し、元本を割り込む可能性があります。売却時の生涯枠の復活は簿価ベースで翌年、年間投資枠の制約は別途かかります。制度の詳細・取扱商品・手数料は金融機関ごとに異なるため、必ず金融庁および各金融機関の最新情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言ではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
新NISAの1800万円は最短で何年で埋められますか?
年間投資枠の上限が360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)なので、最短5年です。月あたり30万円の投資に相当します。1,800万円÷360万円=5年という単純計算で、6年目以降は新規の投入枠がなくなります(売却すれば翌年に簿価分の枠が復活します)。
月10万円だと何年かかりますか?25年後はいくらになりますか?
月10万円=年120万円なので1,800万円÷120万円=15年で埋まります。年率5%で運用できた場合、15年後の評価額は26,728,894円(元本1,800万円・利益8,728,894円)。その後10年運用を続けると25年時点で43,538,552円になります。同じ年率5%でも月30万円5年で埋めた場合は25年時点で54,132,115円なので、差は10,593,563円です。
早く埋めたほうが必ず得なのですか?
「年率が常にプラス」という前提の中でだけ正しい、というのが正確な答えです。年率5%が続く前提では早く埋めるほど非課税で複利が回る期間が長くなり有利ですが、枠を埋めた直後に▲30%の暴落が来ると月30万円5年組の25年時点は37,892,481円まで下がります。一方、5年目に▲30%が来た場合は積立途中の月10万円組が安く買えるため25年時点38,065,141円となり、ほぼ逆転します。したがって「相場が読めるなら早期一括、読めないなら期間分散」が構造的な結論です。
月5万円しか出せない場合、1800万円は使い切れませんか?
月5万円では1,800万円到達に30年かかります。25年時点の投入額は1,500万円で枠の83.3%、評価額は年率5%で29,775,485円です。月3万円だと到達に50年、25年時点の投入は900万円(枠の50.0%)で評価額17,865,291円。枠を使い切れないこと自体は損ではなく、「枠は一生ものなので急いで埋める必要はない」という設計になっています。
NISAで埋めるのと課税口座で運用するのはどれくらい違いますか?
25年時点の利益に20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)を掛けた金額が、そのまま非課税メリットです。月30万円5年で埋めた場合の25年時点の利益は36,132,115円なので税額は7,340,239円、月10万円15年なら利益25,538,552円で税額5,188,157円。つまり非課税枠を早く埋めるほど「将来払わずに済む税金」も大きくなります。
生活防衛資金を削ってでも早く埋めるべきですか?
いいえ。NISA枠は生涯枠なので消滅せず、翌年以降も同じ条件で使えます。一方、生活費3〜6か月分の現金がない状態で暴落と失業が重なると、最も価格が安い局面で売却(=損失確定+枠の当年復活なし)せざるを得ません。優先順位は「①生活防衛資金→②高金利負債の返済→③NISA枠の消化」です。