住宅ローンの残高(残債)はいつ減る? 元利均等の残高カーブを1円単位で計算する(3000万・35年の早見表)
「住宅ローンを5年も払ったのに、残高がまだ2,600万円もある……。こんなに減らないもの?」——返済中のほとんどの人が一度は抱くこの違和感。ネットで「住宅ローン シミュレーション」と検索すると月々の支払額はすぐ出ますが、「今の残高(残債)はいくらで、いつ半分になるか」を年ごとの表で示し、その計算の根拠(元利均等の残高式)を追った記事は意外と少ないのが実態です。
この記事では、会社員が3,000万円・金利1.0%・35年(元利均等返済)で借りたケースを例に、残高が毎年どう減るかを計算し、なぜ最初のうちは残高がなかなか減らないのか(利息ファーストの正体)、そして繰上返済を1回入れると残高・月額がどう変わるかを、実際の数値で確認します。自分の数字で試したい場合は 住宅ローン計算 に金額を入れれば、同じロジックで即座に出ます(入力した金額はどこにも送信されません)。
目次
- なぜ残高を知る必要があるのか(そして元利均等とは)
- 計算式:残高の出し方(元利均等の残高式)
- 具体例:3,000万・1.0%・35年の残高カーブ(年ごと表)
- なぜ最初は減らない?「利息ファースト」の正体
- 繰上返済100万円を入れるとどう変わるか
- 残高×残期間で考える「借り換え」のタイミング
- 関連ツール・記事で自分の数字を確かめる
なぜ残高を知る必要があるのか(そして元利均等とは)
住宅ローンの残高(残債)とは、まだ金融機関に返し残している元本のことです。これを把握する意味は3つあります。
- 売却・住み替えの判断:「今売ったら手元にいくら残るか(=相場 − 残高)」が分からないと、売っても完済できるか判断是否できません。
- 借り換えの効果判断:借り換えの得損は「残高が大きく・残期間が長いほど」効果が出ます。残高ゼロに近い時期に借り換えても意味がありません。
- 繰上返済の優先度:残高がまだ高い時期に繰上返済を入れるほど、利息削減効果が大きくなります。
日本の住宅ローンは、原則として元利均等返済(毎月の支払額を一定にする方式)が標準です。この記事も元利均等を前提に計算します。元利均等と元金均等の違いは 住宅ローンの元利均等を1円単位で分解した記事 で詳しく追っています。
計算式:残高の出し方(元利均等の残高式)
元利均等では、まず「月額 R」を出し、そこから「n ヶ月経過時点の残高」を求めます。式は次のとおりです(月利 i = 年利 ÷ 12、n = 経過月数)。
月額 R = 元本 × i ÷ (1 − (1 + i) ^ −総月数)
残高(n) = 元本 × (1 + i)^n − R × ((1 + i)^n − 1) ÷ i
なぜこの形になるか? 元利均等は「毎月の支払額を一定にする」ため、利息(その時点の残高 × 月利)を引いた残りが元本返済に回ります。残高が減るほど利息が減り、元本返済分が大きくなっていく——この再帰的な動きを解いたのが上の閉じた式です。計算は「(1+i) の n 乗」を繰り返すだけなので、スプレッドシートや 住宅ローン計算ツール で誰でも再現できます。
具体例:3,000万・1.0%・35年の残高カーブ(年ごと表)
それでは、元本3,000万円・年利1.0%(月利約0.0833%)・35年(420ヶ月)で計算した、年末時点の残高とこれまでに減った元本(元本返済累計)です。
| 経過年 | 残高(残債) | 元本返済累計 |
|---|---|---|
| 0年(借入時) | 3,000.0万円 | 0円 |
| 1年 | 2,928.0万円 | 72.0万円 |
| 5年 | 2,632.9万円 | 367.1万円 |
| 10年 | 2,247.1万円 | 752.9万円 |
| 15年 | 1,841.4万円 | 1,158.6万円 |
| 20年 | 1,415.0万円 | 1,585.0万円 |
| 25年 | 966.7万円 | 2,033.3万円 |
| 30年 | 495.4万円 | 2,504.6万円 |
| 35年(最終) | 0円 | 3,000.0万円 |
ポイントは、残高の減り方が直線ではないことです。前半はゆっくり(5年で約12%減)、後半に加速していきます。残高がちょうど半分(1,500万円)を切るのは約20年目。つまり「35年ローンの半分の期間を払って、やっと残高が半分になる」のが元利均等の特徴です。
なぜ最初は減らない?「利息ファースト」の正体
上の表で「5年も払ったのに残高は2,633万円(元本は367万円分しか減ってない)」と感じるのは当然です。その理由を、最初の5年間のお金の流れで確かめます。
つまり5年間で約508万円払っても、そのうち約141万円(約28%)は利息で、元本は約367万円分しか減っていません。これが「最初は利息ばかり」と言われる正体です。
全体でも、総支払額は 84,686円 × 420ヶ月 = 約35,568,120円。元本3,000万円との差 約5,568,120円 が、このローンで払う利息の総額です。元利均等は「月額を一定にする」代わりに、こうして前半に利息を多く払う構造になっています。
繰上返済100万円を入れるとどう変わるか
「利息ばかり」を早く抜ける定番の手が繰上返済(期間中にまとまったお金を元本に充てる)です。5年目の年末に 100万円 を一括で繰上返済した場合を計算します。
繰上返済を入れると、残高が即座に100万円減り、そこから先はその分だけ減少ペースが速くなります。上の例では「月額を下げる」方式をとると月約3,200円の負担減に、あるいは「月額はそのまま84,686円」を維持すれば完済時期が繰り上がって総利息がさらに減る方式になります。どちらが得かは 繰上返済でいくら浮くかの計算記事 で具体的に比べています。
残高×残期間で考える「借り換え」のタイミング
金利が下がったとき、「今のローンを借り換えて得するか」を決める鍵は「残高がまだ大きいか × 残期間がまだ長いか」です。残高が小さく残期間が短い時期に借り換えても、手数料(諸費用)に勝てません。
例えばこのローンなら、残高が2,000万円台で残期間が25年以上ある15年目あたりまでは、金利が0.2%でも下がれば手数料を差し引いても元が取れる可能性が高くなります。逆に残高が500万円未満の30年目以降では、効果はわずかです。損得分岐点は 借り換えの分岐点を計算した記事 で、残高・残期間ごとのパターンを確認できます。
関連ツール・記事で自分の数字を確かめる
月々の支払額と残高の推移は 住宅ローン計算、毎月の「利息ばかり」の内訳は 元利均等の内訳を1円単位で分解した記事、繰上返済の効果は 繰上返済でいくら浮くか、借り換えの分岐点は 借り換えで得するかの計算、金利優遇の効果は 金利優遇でいくら得するか が根拠になります。手元の資金計画には 手取り計算ツール も併用を。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は元利均等・固定金利1.0%・35年を想定した概算です。実際の住宅ローンは、変動金利(金利見直しで月額・総額が変動)や元金均等、ボーナス併用(半年賦)など条件がさまざまです。また諸費用(仲介手数料・登記・火災保険等)は別途かかります(住宅ローンの諸費用を合算した記事 参照)。正確な現在の残高と今後の予定額は、金融機関が発行する「ご返済予定表」やインターネットバンキングの残高照会が最終的な根拠になります。制度の詳細はお借入れの金融機関・国土交通省等の公式情報をご確認ください。
よくある質問
住宅ローンの残高はどうやって計算するの?
元利均等なら、まず月額 R = 元本 × 月利 ÷ (1 − (1+月利)^−総月数) で月額を出し、残高(n) = 元本 × (1+月利)^n − R × ((1+月利)^n − 1) ÷ 月利 で n ヶ月経過時点の残高を求めます(月利=年利÷12、n=経過月数)。3,000万円・1.0%・35年なら月額約84,686円、残高は10年目で約2,247万円、20年目で約1,415万円です。同じロジックは住宅ローン計算ツールでも即座に出ます。
残高が半分になるのはいつ?
3,000万円・金利1.0%・35年(元利均等)の場合、残高が半分(1,500万円)を切るのは約20年目です。金利が高いほど利息を多く払うため半分になるのが遅れ、逆に金利が低いほど早く半分を切ります。
なぜ最初のうちは残高が減らないの?
元利均等は毎月の支払額を一定にする仕組みで、残高が大きい当初は、支払額のうち利息(残高×月利)が多くを占め、元本返済分が小さくなるからです。3,000万円・1.0%・35年なら、最初の5年間で約508万円払っても元本は約367万円分しか減らず、残り約141万円が利息になります。
繰上返済をすると残高はどうなる?
繰上返済分がそのまま残高から引かれ、そこから先の減少ペースが速くなります(または月額が下がります)。例:5年目に100万円を一括繰上すると、残高は約2,633万円から約2,533万円へ、残り30年を同じ金利で再計算すると月額は84,686円から81,469円(月約3,200円減)になります。
残高の推移を知るのは何のため?
売却時に「手元にいくら残るか(残高と相場の差)」、借り換えの効果(残高×残期間が大きいほど得)の判断、繰上返済の可否を確認するためです。住宅ローンは長期の最大の負債なので、残高カーブを把握しておくと、人生の節目の判断(転職・住み替え・子の教育資金)が現実的にできます。