住宅ローンの借り換え( refinance )は得? 手数料を差し引いて何年で元が取れるかを計算する
「今の住宅ローン、金利が下がったから借り換えたい。でも手数料が数十万円かかるって聞いた。本当に得なの?」——金利が下がったとき、この迷いにぶつかる人は多いはずです。結論から言うと、毎月の返済が減っても、手数料を差し引くと「住む年数(返す年数)が短いと損になる」のが借り換えの正体です。ネットの記事は「月々○円お得!」で終わることが多いですが、手数料を差し引いて何年で元が取れるかまで書いているものは意外と少ないものです。
この記事では、借入3,000万円・残期間35年・金利1.5%→1.0% を例に、借り換えの損益分岐点(ペイバック期間)を実際の計算式と数値で出します。自分の数字で試したい場合は 住宅ローン計算ツール で「今の金利」「新しい金利」それぞれの月返済額を出し、差を確認できます。
結論:手数料30万円なら約3.5年で回収、それ以降が「得」
| 項目 | 金利1.5%(今) | 金利1.0%(借換後) | 差 |
|---|---|---|---|
| 月々の返済額 | 約103,500円 | 約96,500円 | ▲約7,000円/月 |
| 残期間35年の総支払利息差 | 約2,540,000円 | ▲約250万円 | |
| 手数料(例) | 300,000円 | +30万円 | |
| 純得(手数料差し引き) | 約2,240,000円 | 35年住む前提 | |
| 損益分岐点 | 約3.5年 | 300,000÷7,000÷12 | |
つまり 3.5年以上その家に住んで(ローンを返して)いれば、手数料を差し引いても得 になります。逆に「3年で引っ越すかも」なら、手数料30万円を回収できず、元のままのほうが安上がりです。
ステップ1:借り換え前後の「月々の返済額」を出す
住宅ローンの月々の返済額は、元利均等返済の次の式で決まります(元利均等と元金均等の違いも参照)。
月返済額 = 借入残高 × 月利 × (1+月利)^残月数 ÷ {(1+月利)^残月数 − 1}
借入残高3,000万円・残期間35年(420カ月)の場合、
金利1.5%:月利 0.15÷12=0.00125 → 約103,536円
金利1.0%:月利 0.10÷12≒0.000833 → 約96,492円
差:約7,044円/月
ここがポイント:月の差(約7,000円)は「金利が1%下がったから毎月1%得」ではありません。残期間の全返済を通じた利息の総額が減るため、月差はそれよりずっと小さくなります。だからこそ「手数料を回収できるか」が別問題になるのです。
ステップ2:損益分岐点(ペイバック期間)を計算する
借り換えの得損を決めるのは、実はこの1行です。
損益分岐点(年) = 手数料 ÷(月々の返済減額) ÷ 12
手数料30万円・月約7,000円減の場合、
300,000 ÷ 7,044 ÷ 12 ≒ 3.55年(約3年7カ月)
この年に「ぴったり」で損得が逆転します。3.55年未満なら手数料のほうが大きくて損、それ以降なら利息削減が手数料を抜いて得になります。
ステップ3:手数料の高さが分岐点をどう動かすか
同じ金利低下(1.5%→1.0%、月差約7,000円)でも、手数料が高いほど分岐点は遠のきます。
| 手数料 | 損益分岐点 | 備考 |
|---|---|---|
| 200,000円 | 約2.4年 | 事務手数料を抑えられたケース |
| 300,000円 | 約3.5年 | 標準的な目安 |
| 500,000円 | 約5.9年 | 登記費用や団信込みで高め |
注意点:手数料には「新規の事務手数料(借入額の1%〜2%+数万円)」「保証料」「登記費用」「団信(住宅ローン専用保険)の加入費」「古いローンを繰り上げ返済する手数料」などが含まれます。一見「金利が下がって得」でも、これらを合算すると50万円を超えることもあるため、見積書で総額を確認してください。
ステップ4:残期間が短いと損になりやすい
「金利1%下げ」でも、残期間が短いと月差が小さく、分岐点が遠のきます。これが借り換えで一番ハマりやすい罠です。
| 借入残高 | 残期間 | 1.5%→1.0%の月差 | 総利息差 | 手数料30万円の分岐点 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 35年 | 約7,044円 | 約250万円 | 約3.5年 |
| 2,000万円 | 10年 | 約4,375円 | 約52万円 | 約5.7年 |
| 1,000万円 | 15年 | 約2,194円 | 約39万円 | 約11.4年 |
残期間10年の例では、総利息差(約52万円)そのものが手数料(30万円)に近く、純得は約22万円にとどまります。さらに残期間15年・借入1,000万円だと総利息差(約39万円)が手数料(40万円)を下回り、手数料を差し引くと約5,000円の赤字になります。「金利が下がる=得」は、残期間が十分に長い場合に限るのです。
ステップ5:変動→固定の借り換えは「金利上昇リスク」も含めて考える
金利タイプを変える借り換え(変動→全期間固定など)は、上の計算に「将来の金利上昇」の可能性が加わります。
- 変動→固定:今の返済額は上がる(固定のほうが金利が高い)が、将来の金利急騰リスクを封じます。金利が上がるシナリオを嫌う人には「保険」としての価値があります(変動と固定のどちらが得かも参照)。
- 固定→変動:今の返済額は下がるが、将来の金利上昇リスクを取ります。5年ルール・125%ルールで急激な跳ね上がりは抑制されますが、長期では逆転の恐れがあります。
この場合、単純な「月差÷手数料」だけでは決められず、「何年で金利が上がるか」の予測が分岐点になります。不確実な部分は、余裕を持たせた計画(分岐点を短めに見積もる)でカバーするのが鉄則です。
やりがちな誤算3つ
- 「月々安くなるから総得」と早合点する:手数料を差し引かないと、損得が見えません。必ず「手数料 ÷ 月差」で分岐点を出し、自分の居住予定年数と比べてください。
- 残期間を忘れる:残期間が10年以下だと、同じ1%下げでも月差は数千円にとどまり、手数料を回収しきれないことが多いです。特に残り数年で完済する場合は、借り換えを検討する価値自体が薄いことがほとんどです。
- 手数料の総額を見積もらない:事務手数料だけでなく、登記・保証・団信・繰上返済手数料を合算しないと、実際のコストは見積もりの2倍近くになることがあります。
関連ツールで自分の数字を確かめる
借り換えの前後で月々がいくら変わるかは 住宅ローン計算ツール で「今の金利」と「新しい金利」を入れ替えてすぐ出せます。手取り(毎月いくら回せるか)の目安は 手取り計算ツール、繰り上げ返済で総支払いを減らす効果は 繰り上げ返済の得する仕組み、元利均等と元金均等の違いは 均等返済の比較記事 が参考になります。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の借り換えでは、審査結果(借入可能額・金利)、手数料の詳細(事務手数料・保証料・登記費用・団信加入費・繰上返済手数料)、諸条件(期間・返済方式・ボーナス返済の有無)、将来の金利動向によって、得損や分岐点は数万〜数百万円単位で変わります。借り換えの申し込みや契約は、各金融機関の公式情報と、必要に応じて独立したファイナンシャル・プランナー等の専門家にご確認ください。制度の詳細は金融機関の商品説明書および消費者庁等の公式情報が最終的な根拠になります。
よくある質問
住宅ローン借り換えの損益分岐点(ペイバック期間)はどう計算する?
「借り換えで減る毎月の返済額の差」で「かかった手数料」を割った年数が分岐点です。例:月7,000円減るとき手数料30万円なら 300,000÷7,000÷12≒3.5年。これより長く住む・返すなら得、短ければ損です。
借入3,000万円・残期間35年・1.5%→1.0%の借り換えで月いくら減る?
月々の返済額は約103,500円から約96,500円になり、差は約7,000円/月。残期間全体の利息差は約250万円になります(手数料30万円を引いても純得約220万円)。
借り換えの手数料はいくらかかる?
新規の事務手数料(借入額の1%〜2%+数万円)、保証料、登記費用、団信の加入費、一部繰上げ返済の手数料など、合わせて20万〜60万円が目安です。変動から全期間固定への借り換えなら、金利そのものの上昇も含めて考える必要があります。
金利が1%下がるとどれくらい得?
借入3,000万円・残期間35年なら月約7,000円(1.5%→1.0%)、月約1.4万円(2.0%→1.0%)の差になります。残期間が短い(残り10年など)と、同じ1%下げでも月差は数千円にとどまり、手数料を回収するのに時間がかかります。
残期間が短いと借り換えは損になりやすい?
はい。残期間10年・借入2,000万円なら、1.5%→1.0%でも月差は約4,400円、総利息差は約52万円にとどまり、手数料30万円の回収に約5.7年かかります。残期間が短いほど「手数料を回収できるだけの利息削減」が見込めず、損になる確率が高まります。