iDeCoとつみたてNISA どっちが得? 月2.3万円・20年で手元純増を1円単位に比べ、節税額が運用益を上回る構造を解く
「iDeCo(イデコ)とつみたてNISA、結局どっちに回すべき?」「どっちが得なの?」——老後資金や貯蓄を始めようとしたとき、誰もがぶつかる究極の二択です。ネットで調べると「iDeCoは節税できる」「NISAは受取時非課税」という特徴はすぐ出ますが、「同じ金額を回したとき、20年後に手元にいくら残るか(手元純増)」を、節税額と運用益を合わせて1円単位に比べた記事は意外と少ないものです。
この記事では、月2.3万円(年27.6万円)を20年間・年利3%で運用した場合を例に、①両者の評価額の出し方 ②「実質負担=掛金−節税額」を引いた手元純増の計算 ③年収別(500万/800万/1000万)での差 ④「運用益ゼロでもiDeCoが有利」という驚きの構造、を順に解きほどきます。自分の金額で試したい場合は 積立・将来額シミュレーター に数値を入れれば同じロジックで即座に出ます。
結論:年収500万でiDeCoが約111.6万円、800万で約166.8万円、1000万で約194.4万円有利
| 年収(独身) | iDeCo 手元純増(20年後) | つみたてNISA 手元純増 | iDeCo有利分 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約301.2万円 | 約189.6万円 | 約111.6万円 |
| 800万円 | 約356.4万円 | 約189.6万円 | 約166.8万円 |
| 1000万円 | 約383.9万円 | 約189.6万円 | 約194.4万円 |
「手元純増」とは、20年後の評価額から「自分のポケットから実際に出たお金(実質負担)」を引いた、真の増え幅です。年収が高いほど(税率が高いほど)iDeCoの節税効果が大きく、差が開きます。そして最大の発見は次のステップ4で説明する「運用益がゼロでもiDeCoが勝つ」構造です。
ステップ1:20年後の評価額(ベース)を出す
まず両者に共通する「運用資産の評価額」を求めます。月2.3万円=年27.6万円を、年利3%で20年積み立てる場合、毎年同じ額を払う「普通年金終価(年払い・期末払い)」の式を使います。
評価額 = 年掛金 × {(1+年利)^年数 − 1} ÷ 年利
= 276,000 × {(1.03)^20 − 1} ÷ 0.03
= 276,000 × 26.8704 ≒ 7,416,223円
- 積立元本(20年累計で出したお金):276,000 × 20 = 5,520,000円(552万円)
- 運用差益(利息の利息):7,416,223 − 5,520,000 = 約1,896,223円(約189.6万円)
この「評価額 741.6万円」は、iDeCo でもつみたてNISA でも同じ運用を同じ利率で行えば同じ額になります。違いは「このお金を作るために、手元からいくら出たか」です。
ステップ2:つみたてNISAの「実質負担」はそのまま552万円
つみたてNISAは、掛金を税后(手取り)から払います。節税は「受取時(値上がり益が非課税)」に回っています。そのため、20年間で手元から出た実質負担はシンプルに
つみたてNISA 実質負担 = 276,000 × 20 = 5,520,000円
よって手元純増は
つみたてNISA 手元純増 = 7,416,223 − 5,520,000 = 1,896,223円
これが「節税なしでコツコツ運用した場合の真の増え幅」です。
ステップ3:iDeCoの「実質負担」は毎年節税額だけ減る
iDeCoは掛金が所得から差し引かれるため、支払う時点で所得税・住民税が下がります。実質負担は「掛金 − 節税額」になります。
① 年間節税額 = 年掛金 × 税率計
② iDeCo 実質負担/年 = 年掛金 × (1 − 税率計)
③ iDeCo 実質負担(20年累計) = ② × 20
税率計は「所得税の限界税率+復興特別所得税2.1% + 住民税所得割10%(均等割は影響小のため省略)」の合計です。年収別に計算します。
| 年収(独身) | 税率計 | 年間節税額 | iDeCo実質負担/年 | iDeCo実質負担(20年累計) |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 20.21% | 約55,780円 | 約220,220円 | 約4,404,408円 |
| 800万円 | 30.21% | 約83,380円 | 約192,620円 | 約3,852,408円 |
| 1000万円 | 35.21% | 約97,180円 | 約178,720円 | 約3,574,408円 |
年収が高いほど税率が上がるため、iDeCoで支払う「実質負担」はどんどん安くなります(800万円なら年19.3万円、1000万円なら年17.9万円で済む)。手元純増は
iDeCo 手元純増 = 7,416,223 − iDeCo実質負担(累計)
- 年収500万:7,416,223 − 4,404,408 = 約3,011,815円
- 年収800万:7,416,223 − 3,852,408 = 約3,563,815円
- 年収1000万:7,416,223 − 3,574,408 = 約3,839,815円
つみたてNISA(約189.6万円)との差は、500万で約111.6万円、800万で約166.8万円、1000万で約194.4万円となります。
ステップ4:運用益ゼロ(年利0%)でもiDeCoが約111万円有利——その理由
ここが本記事の最大の洞察です。運用で一切増えなかった(年利0%、元本保証)としても、iDeCoはつみたてNISAより約111.6万円(年収500万)有利になります。なぜか。
年利0%の評価額 = 元本 = 5,520,000円
iDeCo 手元純増(年利0%)= 5,520,000 − 4,404,408 = 1,115,592円
つみたてNISA 手元純増(年利0%)= 5,520,000 − 5,520,000 = 0円
差は 1,115,592円。これは「20年間の節税額の累計(55,780×20 ≒ 111.6万円)」そのものです。つまりiDeCoの得は、運用がうまくいかなくても「節税効果そのものが元本に上乗せされる」ことで生まれているのです。運用益(約189.6万円)は両者に同じように乗るので、差を生むのは純粋に「支払時の節税」の分だけです。年収800万ならこの差は年利0%でも約166.8万円、1000万で約194.4万円に広がります。
ステップ5:でも「常にiDeCo優位」ではない3つの理由
数字だけ見るとiDeCo一択に見えますが、以下の制約を無視できません。
- ① 引出制限:iDeCoは60歳まで原則引き出し不可(やむを得ない事由のみ)。つみたてNISAはいつでも引出可。若くて資金が固定化されるのが困る場合、NISAの流动性が価値になります。
- ② 受取時の課税:iDeCoの運用益は、受取時に「老齢給付金」として退職所得(一時金)または雑所得(年金形式)で課税されます。つみたてNISAは受取時の値上がり益が非課税。運用期間が長く評価額が大きいほど、iDeCoの受取時課税が「手元純増」をいくらか削ります(この記事の純増額は受取時課税を未控除の概算です)。
- ③ 上限の違い:iDeCoは加入者区分で年27.6万〜29.4万円(企業型確定拠出年金に加入している場合はさらに枠が変わる)。つみたてNISAは年40万円(最長20年)。「もっと多く積み立てたい」場合はNISAの枠が広く、両方使うのが現実的です。
実用的な使い分け:iDeCoの枠(年27.6万円)をまず満たし、残余をつみたてNISA(年40万円)に回すのが一般的な戦略です。iDeCoで「支払時節税+受取時一部課税」、NISAで「受取時完全非課税」を両取りし、引き出しの自由度も確保できます。
よくある誤解3つ
- 「iDeCoは受取時も非課税」:誤り。iDeCoの運用益は受取時に退職所得または雑所得として課税されます(ただし退職所得の控除枠などで実効負担は軽い)。完全に非課税なのはつみたてNISAの受取時です。
- 「NISAのほうが単純だから得」:誤りとは言えませんが、年収500万以上でiDeCo枠を使わないと、毎年約5.6万円(20年で約111万円)の税引き後プラスを捨てる計算になります。単純さと節税のトレードオフを意識しましょう。
- 「運用益が出ないとどっちでも同じ」:誤り。ステップ4で示した通り、運用益ゼロでもiDeCoが約111万円有利です。節税効果は運用の成否に関わらず発生します。
自分の年収で試す/関連する計算
- 積立・将来額シミュレーター:毎月の積立額・年利・期間から評価額を即算出(入力は送信されません)。
- 手取り計算ツール:自分の年収での税率計(所得税+住民税)を確認し、節税額の目安を出せます。
- iDeCoの資金シミュレーション記事:iDeCo特有の拠出枠と受取イメージをさらに深掘り。
- つみたてNISAの資産額シミュレーション記事:NISA枠での運用差益を年収別に確認。
- 所得税の計算記事:累進税率と限界税率のしくみ(iDeCo節税の根拠)。
- 住民税の計算記事:住民税所得割10%のしくみ(税率計のもう半分)。
いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は、会社員・独身・扶養なし・賞与を含む年収を前提とし、所得税は累進税率に復興特別所得税2.1%を乗じ、住民税所得割は標準税率10%(均等割は影響小のため近似的に除外)、iDeCo掛金は全額所得控除対象とする単純な概算モデルです。実際の節税額は、扶養親族の有無(基礎控除・配偶者控除で税率計が変わる)、健康保険の種別、居住自治体の住民税率、iDeCoの加入者区分(第1号・第2号被保険者等で拠出上限が異なる)、および令和の税制改正などによって変わります。また本記事の「手元純増」は iDeCo の受取時課税(退職所得控除・公的年金等控除等)を未控除の概算であり、運用商品の手数料(信託報酬)も考慮していません。運用利回りは保証されず、元本割れの恐れがあります。制度の詳細は日本経済新聞社・国民年金基金連合会・日本証券業協会等の公式情報、およびご自身の所得に基づく最終確認を優先してください。本記事は情報提供を目的とし、個別の投資・税務判断に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
iDeCoとつみたてNISAの決定的な違いは?
一番の違いは「掛金が所得から引かれるか(iDeCo)」か「運用益が受取時に非課税か(つみたてNISA)」かです。iDeCoは掛金を支払う時点で所得税・住民税の課税所得から差し引かれるため「今の税金が下がる」一方、つみたてNISAは掛金は税后(手取り)から出ますが、受け取る時の値上がり益が非課税です。この「節税の Timing(支払い時か受取時か)」の違いが、後述の手元純増の差を生みます。
iDeCoの節税額はどう計算するの?
iDeCoの掛金(月2.3万円=年27.6万円)を全額、所得税と住民税の「課税所得」から差し引けます。年収500万円・独身なら所得税の限界税率10.21%+住民税10%=計20.21%の税率が掛かるため、年間の節税額は 27.6万円×20.21% ≒ 5.6万円。この分が「実質負担」から毎年差し引かれ、20年で約111.6万円の税引き後プラスになります。年収が高いほど税率が上がるので節税効果は大きくなります。
結論としてどっちが得?
「20年後に手元に残る純増額」で比べると、年収500万ならiDeCoが約111.6万円、800万なら約166.8万円、1000万なら約194.4万円有利です(年利3%・月2.3万円の場合)。さらに驚くべきは、運用益がゼロ(年利0%)でもiDeCoが約111万円(500万)有利なこと——節税効果そのものが元本に上乗せされるためです。ただしiDeCoは60歳まで原則引き出し不可で、受取時にも課税があるため、流动性や受取タイミングを無視して「常にiDeCo優位」とは言えません。
注意点は?
① iDeCoは原則60歳まで引出不可(積立期間・運用期間の制約)。② 受取時:iDeCoの運用益は老齢給付金として退職所得(一時金)または雑所得(年金)で課税されるのに対し、つみたてNISAは受取時の値上がり益が非課税。③ 上限が違う:iDeCoは加入者区分で年27.6万〜29.4万円、つみたてNISAは年40万円(最長20年)。④ つみたてNISAの非課税枠は令和25年(2033年)末までの時限措置。金額の目安は制度改正で変わるため、最新の公式情報とご自身の所得で確認してください。