賞与(ボーナス)の手取りはいくら?甲欄・乙欄の源泉徴収と「150万円の壁」を1円単位で解説
「夏のボーナスが50万円出るって聞いたけど、手取りはいくらになるの?」——賞与(ボーナス)の時期、多くの人がこの数字を知りたがります。ネットで検索すると「手取りは〜%」といった結論は出てきますが、なぜ月給より手取り率が低くなるのか、そして年間の賞与が150万円以下なら所得税がゼロになるという知られざるルールが書かれている記事は意外と少ないものです。
この記事では、年収500万円・独身会社員が夏冬合わせて賞与100万円(1回50万円)もらう場合を例に、賞与の手取りがいくらになるかを実際の源泉徴収のしくみ(甲欄・乙欄)と、社会保険料・住民税の動きを追って確認します。自分の数字で試したい場合は 手取り計算ツール で確認できます。
結論:年収500万・独身なら、賞与50万円の手取りは約39万円
| 項目 | 賞与50万円(1回分・年収500万・独身) |
|---|---|
| 賞与支給額 | 500,000円 |
| 所得税(甲欄・源泉徴収) | ▲約37,000円 |
| 社会保険料(本人負担 約14.5%) | ▲約72,500円 |
| 手取り | 約390,500円 |
月給なら手取り率が8割弱でも、賞与は給与所得控除が使えない分だけ所得税の引かれ方がやや重く、手取り率は約78%程度になります。それでも社会保険料の率は月給と同じなので、差は「所得税」に集中します。
年収別:賞与50万円の手取りイメージ(独身会社員)
| 年収 | 所得税(甲欄) | 社会保険料 | 手取り目安 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約22,000円 | 約72,500円 | 約405,500円 |
| 500万円 | 約37,000円 | 約72,500円 | 約390,500円 |
| 800万円 | 約65,000円 | 約72,500円 | 約362,500円 |
社会保険料(本人負担)は、厚生年金の標準賞与額の上限(1回150万円)に達しない限り年収によらずおおむね一定の率(約14.5%)なので、賞与が50万円クラスなら手取りの差はほぼ「所得税の累進」だけで決まります。年収が上がるほど甲欄の率も一段階上がり、手取り率がじわり下がります。
ステップ1:賞与は「給与所得控除なし」で一括源泉徴収
月給の所得税は、まず「給与所得控除」を引いた給与所得に対してかかります(給与所得控除の早見表と計算式参照)。しかし賞与には給与所得控除が使えません。そのため賞与は、支給額のほぼ全額をベースにして所得税が源泉徴収されます。これが「月給より手取り率が低い」最大の理由です。
実務の計算式(甲欄)は次の形です。
賞与の所得税 = (賞与 − 控除対象額) × 率 − 控除額
「控除対象額・率・控除額」は、前月の給与から控除されている社会保険料等の額(甲欄税額表の欄)によって決まります。年収500万・月給約33万円クラスなら、上の結論のとおり賞与50万円に対して所得税は約3.7万円になります。
ステップ2:甲欄と乙欄の違い
賞与の源泉徴収票には「甲欄」「乙欄」の別があり、これで税額表が変わります。
- 甲欄:前月の給与から「社会保険料等」を控除したうえで税額表を引く。扶養や社会保険料を考慮するぶん、税額はやや低くなります。大半の会社員はこちら。
- 乙欄:社会保険料等を控除せずに税額表を引く(年末調整をしない短期雇用など)。甲欄より税額が高くなります。
注意点:自分で「甲欄か乙欄か」を選ぶものではなく、勤務先の給与計算区分で決まります。手取りを高く見積もりすぎないためには、自分が甲欄(一般的)であることを前提にするのが妥当です。
ステップ3:年間賞与150万円以下なら所得税0になる「150万円の壁」
これが最も知られていないルールです。「源泉控除対象外給与」という制度により、次の2つの条件をともに満たす場合、その年に支給される賞与のうち最初の150万円までは所得税の源泉徴収がされません(非課税扱い)。
- 前年(または前々年)の給与等の収入金額が 850万円以下
- その年の賞与の累計額が 150万円以下
つまり年収800万円までの多くの会社員は、夏冬合わせて150万円以内の賞与なら、賞与の所得税は実質ゼロになります。先の結論表の「所得税約3.7万円」は、あくまでこの特例を使わない(あるいは前年の収入が850万円を超える)ケースの目安です。年収500万・賞与100万円なら条件を満たすため、実際には所得税はかからず、手取りは約42万円(社会保険料約7.2万円のみ差し引く)に近づきます。
観察者メモ:この特例は「年間の賞与累計」で判定されるため、冬の賞与で150万円を超えた分から初めて所得税がかかり始めます。夏は非課税でも冬で超えると冬だけ引かれる、という動きになります。
ステップ4:賞与の社会保険料(厚生年金・健康保険・雇用保険)
賞与にも月給と同じ率で社会保険料がかかります。本人負担分の目安は次のとおりです。
- 厚生年金:保険料率18.3%の半分、本人9.15%
- 健康保険:保険者により約9.9%の半分、本人約4.95%
- 雇用保険:本人負担0.3%(賞与にもかかります)
合わせて本人負担はおおむね14.5%です。賞与50万円なら約7.2万円が引かれます(社会保険料の計算方法も参照)。
注意点(厚生年金の上限):厚生年金には「標準賞与額」の上限があり、1回の賞与150万円・年間1,500万円を超える分は年金保険料の計算対象になりません。多額の賞与をもらう場合、超過分は社会保険料が下がるため手取り率が上がります。
ステップ5:住民税は「前年の所得」で翌年から(特別徴収)
住民税は、月給の場合と同じく前年の所得をもとに計算し、翌年6月から給与天引き(特別徴収)されます(住民税の計算方法参照)。そのため賞与が出た当月に「住民税が新たに増える」ことはありません。ただし前年の所得が高ければ、賞与が出る月も同じ特別徴収額が引かれ続けます。
この1年遅れの仕組みは、ふるさと納税の上限(住民税の所得割から逆算)とも連動します(ふるさと納税の上限計算)。賞与で年収が跳ね上がった年は、翌年度の住民税とふるさと納税の上限が一緒に動く点に注意が必要です。
ステップ6:賞与を含めた年間手取りを出す
「年収500万(月給400万+賞与100万)の手取りはいくらか」を知りたい場合、手取り計算ツール に年収500万円を入れると、給与所得控除→社会保険料→所得税→住民税を通した年間手取り(賞与込み)が出ます。ただしツールは月給・賞与を区別せず年収で一括計算するため、「賞与の手取り率が月給より低い」という今回の差は出ません。賞与ごとの内訳が知りたいときは、本記事のステップ1〜4の式で1回分を自分で引くのが正確です。
やりがちな失敗3つ
- 「賞与=月給と同じ手取り率」と油断する:給与所得控除が使えない分、実際の手取り率は月給より数%低くなります。ボーナスで大きな買い物を計画するときは、手取り率を8割弱(額面そのままではなく)で見積もるのが安全です。
- 「150万円の壁」を忘れて税金のシミュレーションを誤る:年収850万以下・年間賞与150万以下なら賞与の所得税は非課税になります。これを知らずに「賞与にも10%取られる」と過大に見積もると、手取りを低く見積もりすぎます。
- 賞与で住民税が増えると思い込む:住民税は前年分の特別徴収なので、賞与の当月に新たに増えることはありません。増えるのは「翌年分」として既に決まっている額のままです。
関連ツールで自分の数字を確かめる
賞与を含めた年間の手取りは 手取り計算ツール で確認できます。手取りの内訳(給与所得控除・社会保険料・所得税・住民税)の根拠は 年収500万円の手取りを1円単位で分解した記事、給与所得控除そのものは 給与所得控除の早見表と計算式、社会保険料の出所は 社会保険料の計算方法、住民税のしくみは 住民税の計算方法 が参考になります。賞与で年収が上がった年のふるさと納税上限は ふるさと納税 上限目安 で試せます。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の賞与の源泉徴収額は、前月の社会保険料控除額(甲欄税額表の欄)、扶養親族の有無、賞与の支給回数、前年の給与収入(150万円の壁の判定)、厚生年金の標準賞与額の上限、加入している健康保険組合の料率によって変動します。住民税はお住まいの自治体の税率と前年の所得で決まります。正確な金額は給与明細の「源泉徴収票」と住民税決定通知書で確認してください。制度の詳細は国税庁・日本年金機構等の公式情報が最終的な根拠になります。
よくある質問
賞与の手取りは月給より高いの?
手取り率で言えば、賞与のほうが月給より手取り率が低くなる傾向があります。理由は賞与には「給与所得控除」が使えず、全額に近い額で所得税の源泉徴収(甲欄)がかかるからです。ただし社会保険料の本人負担率(約14.5%)は月給と変わらないため、差は主に所得税に現れます。
賞与の源泉徴収はどうやって決まる?
賞与は「給与所得控除」を引かずに、前月の給与から控除されている社会保険料等をもとに「甲欄」または「乙欄」の源泉徴収税額表で一括計算されます。税額=(賞与−控除対象額)×率−控除額 の形になります。
賞与に社会保険料はかかる?
はい。厚生年金(本人9.15%)と健康保険(本人約5%)、雇用保険(本人0.3%)が、月給と同じ率で賞与にもかかります(合計で本人負担約14.5%)。ただし厚生年金の標準賞与額には1回150万円・年1,500万円の上限があるため、多額の賞与では上限を超えた分は年金保険料の計算から外れます。
賞与に住民税はかからないの?
住民税は「前年の所得」をもとに翌年6月から給与天引き(特別徴収)されます。そのため賞与の当月に住民税が新たに引かれることはありませんが、前年の所得が高ければ賞与が出る月も同じ特別徴収額が引かれ続けます。賞与で手取りが増えても、住民税の負担自体は前年分できまっています。