小規模企業共済の節税額はいくら? 課税所得500万・月7万円で年255,528円、20年で節税511万円+受取時の税金1,313,280円まで1円単位で計算

2026-09-02 | 小規模企業共済 節税 個人事業主 フリーランス 所得控除 退職金 税金 確定申告 老後資金 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

小規模企業共済は「掛金が全額所得控除」という一点だけが有名で、実際に手取りがいくら増えるのかを金額で説明した記事はほとんどありません。この記事では、課税所得500万円の個人事業主が月7万円(年84万円)を掛けた場合に、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて年255,528円の税金が減ること、20年続けると節税累計5,110,560円になること、そして20年後に共済金A(19,504,800円)を一括で受け取ったときの税金が1,313,280円で済むことを、すべて計算式から1円単位で示します。

⚠️ 本記事は制度の計算構造を理解するための解説です。共済金の額は独立行政法人中小企業基盤整備機構が定める予定利率・支給率で決まり、加入時期により異なります。実際の見込額は必ず中小機構または委託団体でご確認ください。

誰のための記事か——「全額控除」の先を知りたい人へ

この記事を探しているのは、たとえばこんな人です。

よくある誤解は3つです。①「全額控除」=掛金の全額が返ってくると思っている。②節税額は誰でも同じだと思っている。③受け取るときは非課税だと思っている。正解は、①戻るのは掛金×自分の税率、②税率は課税所得で変わるので節税額も変わる、③受取時は課税されるが退職所得控除で大幅に軽くなる、です。順に金額で確認します。

制度の正体は「課税の繰り延べ+税率差」である

小規模企業共済は、掛金を払った年に所得控除で税金を減らし、受け取る年に退職所得または公的年金等の雑所得として課税する制度です。つまり税金がゼロになるのではなく、払うタイミングを後ろにずらす制度です。

それでも得になる理由は2つあります。

加入できるのは常時使用する従業員が20人(商業・サービス業は5人)以下の個人事業主・会社等の役員などです。掛金は月1,000円〜70,000円の範囲で500円刻み、いつでも増額・減額できます。

計算式の根拠——節税額は「掛金 × (所得税率+復興税+住民税率)」

掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除になります。したがって減る税金は次の式で決まります。

節税額 = 年間掛金 ×(所得税率 × 1.021 + 住民税率10%)

1.021は復興特別所得税(所得税額の2.1%)です。所得税は超過累進で、課税所得に応じて次の税率・控除額を使います。

所得税 = 課税所得 × 税率 − 控除額

課税所得税率控除額
195万円以下5%0円
195万〜330万円10%97,500円
330万〜695万円20%427,500円
695万〜900万円23%636,000円
900万〜1,800万円33%1,536,000円
1,800万〜4,000万円40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

ここで重要なのは、節税額は「税率」で決まるので、同じ掛金でも人によって倍以上違うということです。掛金の全額が戻るわけではありません。戻るのは掛金×税率です。

ケースA:課税所得500万円・月7万円(満額)

個人事業主で課税所得500万円(=所得控除を差し引いた後の金額)、掛金を上限の月70,000円=年840,000円とします。

まず掛金がない場合の税額です。所得税は 5,000,000×20%−427,500=572,500円、復興特別所得税は 572,500×2.1%=12,022円、住民税は所得割10%+均等割5,000円で 505,000円。合計 1,089,522円。

掛金84万円を控除すると課税所得は4,160,000円。所得税は 4,160,000×20%−427,500=404,500円、復興税 8,494円、住民税 421,000円。合計 833,994円。

1,089,522 − 833,994 = 255,528円(年間の節税額)

掛金84万円に対して255,528円ですから、実質的な負担は584,472円。掛金に対する節税率は30.4%です。銀行預金にはこの30.4%相当のリターンは存在しません。

掛金別・課税所得別の節税額早見表

同じ計算を掛金と課税所得の組み合わせで並べます(住民税10%+均等割5,000円、復興税2.1%込み、単身・他の控除は考慮せず課税所得ベース)。

課税所得月1万円
(年12万)
月3万円
(年36万)
月7万円
(年84万)
200万円20,678円56,930円129,434円
300万円24,252円72,756円169,764円
500万円36,504円109,512円255,528円
700万円38,036円111,044円257,060円
900万円40,180円120,539円281,258円

読み取れることが3つあります。①課税所得が高いほど節税額が大きい(税率が高いため)。②課税所得200万円でも月7万円なら年129,434円は減る。③課税所得500万円と700万円で節税額がほぼ同じ(255,528円と257,060円)なのは、700万円から84万円を引くと695万円の税率境界(23%→20%)をまたいで一部が20%区間に落ちるためです。税率境界をまたぐ人は控除の効きが一時的に鈍る——これは早見表を作らないと見えない事実です。

共済金はいくらになるか——公式モデル(月1万円)を7倍する

掛金は予定利率1.0%で運用され、受け取る共済金は掛金合計を上回ります。中小機構が公表している月1万円モデルの共済金A(個人事業を廃業した場合)は次のとおりです。

加入年数掛金合計共済金A倍率
5年(60月)600,000円621,400円1.036倍
10年(120月)1,200,000円1,290,600円1.076倍
15年(180月)1,800,000円2,011,000円1.117倍
20年(240月)2,400,000円2,786,400円1.161倍
30年(360月)3,600,000円4,348,000円1.208倍

掛金は月額に比例するので、月7万円ならこの7倍です。20年(240月)なら掛金合計 16,800,000円、共済金A 19,504,800円。元本より2,704,800円多いということです。

ここで大事なのは、この2,704,800円の増加分は節税額5,110,560円(255,528円×20年)とは別だということです。得の源泉は「節税」と「付利」の二階建てで、前者のほうが圧倒的に大きい。小規模企業共済は運用商品ではなく節税商品だと理解すると判断を誤りません。

受取時の税金——退職所得控除で「1/2課税」になる

共済金を一括で受け取ると退職所得として扱われます。計算式は次のとおりです。

退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数(20年まで)+ 70万円 ×(20年超の年数)
課税退職所得 =(受取額 − 退職所得控除額)× 1/2
税額 = 課税退職所得 ×(所得税率×1.021 + 住民税10%)

20年加入なら控除額は 40万×20=8,000,000円。共済金A 19,504,800円から引いて、

(19,504,800 − 8,000,000) ÷ 2 = 5,752,000円(課税退職所得、千円未満切捨後)

所得税は 5,752,000×20%−427,500=722,900円、復興税 15,180円、住民税 575,200円。合計 1,313,280円。手取りは 19,504,800−1,313,280=18,191,520円です。

20年トータルの損得をまとめます。

項目金額
払った掛金の合計−16,800,000円
受け取った共済金Aの手取り+18,191,520円
20年間の節税累計+5,110,560円
実質の差引き+6,502,080円

16,800,000円を20年預けて6,502,080円のプラス。うち78%(5,110,560円)は節税によるものです。加入年数別に同じ計算を並べると次のようになります(課税所得500万円・月7万円)。

加入年数掛金合計共済金A受取時の税節税累計実質の差引き
5年4,200,000円4,349,800円177,332円1,277,640円+1,250,108円
10年8,400,000円9,034,200円409,138円2,555,280円+2,780,342円
15年12,600,000円14,077,000円791,882円3,832,920円+4,518,038円
20年16,800,000円19,504,800円1,313,280円5,110,560円+6,502,080円
30年25,200,000円30,436,000円1,934,861円7,665,840円+10,966,979円

30年で退職所得控除が 800万+70万×10=15,000,000円まで伸びるため、受取額が3,043万円に増えても税は1,934,861円に収まります。長く続けるほど控除が効いて受取時の実効税率が下がるのがこの制度の設計です。

iDeCoとどちらを優先すべきか——併用が正解になる理由

どちらも掛金が全額所得控除で、節税の計算式は同一です。違いは「何にお金が変わるか」と「いつ引き出せるか」です。

小規模企業共済iDeCo(第1号)
掛金上限月70,000円(年84万円)月68,000円(年81.6万円)
所得控除全額(小規模企業共済等掛金控除)全額(同じ控除枠)
資産の性質予定利率1.0%の固定的な積立自分で選ぶ投資信託・定期預金
元本保証20年(240月)以上納付なら任意解約でも元本以上なし(投資信託の場合)
途中の引き出し任意解約が可能(減額もできる)原則60歳まで不可
貸付制度あり(掛金の範囲で低利借入)なし
受取時退職所得/公的年金等退職所得/公的年金等

控除枠は別枠なので、両方満額なら年間 840,000+816,000=1,656,000円を所得から引けます。課税所得500万円の人が両方満額を掛けた場合の課税所得は 5,000,000−1,656,000=3,344,000円。税額は 1,089,522円 → 約568,000円まで下がります。

優先順位の考え方はこうです。資金の出入りが不安定な事業初期は小規模企業共済を先に(任意解約と貸付という出口がある)。老後資金として長期の値上がりを狙うならiDeCoを厚く。「どちらか」ではなく、事業の安定度で配分を決める問題です。

落とし穴8つ——ここで損をする

  1. 納付12か月未満は掛け捨て。任意解約した場合、納付月数が12か月未満だと解約手当金はゼロです。最初の1年は絶対に止めないこと。
  2. 納付240か月(20年)未満の任意解約は元本割れ。廃業(共済金A)なら短期でも元本を上回りますが、自分の意思でやめる「任意解約」は20年未満だと掛金合計を下回ります。ここが最大の注意点です。
  3. 減額は元本割れの原因になる。減額した分は以後運用されず据え置きになるため、実質的な利回りが落ちます。払えない額でスタートしないことが正解で、余裕が出てから増額するほうが有利です。
  4. 受取時に他の退職金と合算される。同じ年に会社からの退職金を受け取ると、退職所得控除は合算で1回分しか使えません。受取年をずらす設計が必要です。
  5. 65歳未満で「老齢給付」は受けられない。共済金B(老齢給付)は65歳以上かつ180か月以上納付が要件です。それ以前に受け取る場合は廃業・任意解約などの事由が必要です。
  6. 法人成りすると準共済金になる。個人事業を法人化して役員になった場合は「準共済金」扱いで、共済金Aより支給率が低くなります(引き続き加入を続けることも可能)。
  7. 控除を受けるには証明書が必要。毎年11月ごろに届く「小規模企業共済掛金払込証明書」を確定申告書に添付(またはe-Taxで入力)しないと控除されません。前納した分も証明書の記載額で申告します。
  8. 所得がなければ節税ゼロ。赤字や課税所得が0円の年は、控除しても減る税金はありません。節税目的の加入は「黒字である」ことが前提で、赤字年は減額や掛止めを検討する余地があります。

加入から控除までの4ステップ

  1. 加入資格を確認する——常時使用する従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主、共同経営者、会社の役員など。
  2. 掛金額を決める——月1,000円〜70,000円(500円刻み)。上の早見表で自分の課税所得に対する節税額を確認し、確実に払い続けられる額から始める。
  3. 申込みをする——「契約申込書」と「預金口座振替申出書」に、確定申告書の控えなど事業を営んでいることの確認書類を添えて、委託団体(商工会議所・青色申告会)または金融機関の窓口へ。
  4. 確定申告で控除する——11月ごろ届く払込証明書の金額を、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に記入。年末までに前納すればその年の控除に入ります(1年以内の前納分が対象)。

小規模企業共済 節税シミュレーター

課税所得・掛金・加入年数を入れると、年間の節税額、加入期間の節税累計、共済金Aの概算、受取時の税額、実質の差引きを計算します。入力はすべてブラウザ内で処理され、外部に送信されません。

共済金Aは中小機構の月1万円モデル(5年1.036倍/10年1.076倍/15年1.117倍/20年1.161倍/30年1.208倍)を線形補間した概算です。実際の支給額は加入時期・納付月数により異なります。

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注意事項

本記事の数値は、所得税の超過累進税率(速算表)、復興特別所得税2.1%、住民税所得割10%+均等割5,000円、および退職所得控除=40万円×勤続年数(20年まで)+70万円×20年超の年数、課税退職所得=(受取額−控除額)×1/2に基づく単純計算です。共済金額は中小企業基盤整備機構が公表する月額1万円モデルの共済金Aを月額比例で換算した概算であり、実際の支給額は加入時期・納付月数・共済事由(共済金A/B/準共済金/解約手当金)により異なります。住民税の税率・均等割は自治体により異なる場合があり、所得金額調整控除、基礎控除の改正、他の所得控除、事業所得の変動、同一年に受け取る他の退職金との合算、5年内・前年以前の退職金がある場合の控除額調整は反映していません。任意解約は納付月数240か月未満で元本割れ、12か月未満は掛け捨てとなります。加入資格・掛金の増減額・共済金の受取方法(一括/分割/併用)・税務上の取扱いは、必ず中小企業基盤整備機構、委託団体、および税務署・税理士等の専門家にご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務・投資判断に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

小規模企業共済で税金はいくら減りますか?

掛金は全額が所得控除になるので、減る税金は「年間掛金×(所得税率×1.021+住民税10%)」で決まります。課税所得500万円の人が上限の月70,000円(年840,000円)を掛けた場合、税額は1,089,522円から833,994円に下がり、年255,528円の節税になります。掛金に対する節税率は30.4%です。課税所得300万円なら年169,764円、200万円なら年129,434円で、課税所得が低いほど節税額も小さくなります。掛金の全額が戻るのではなく、掛金×自分の税率が戻る仕組みです。

掛金はいくらから始めるのが正解ですか?

月1,000円から70,000円まで500円刻みで選べますが、判断基準は節税額より「続けられるか」です。納付240か月(20年)未満で任意解約すると解約手当金が掛金合計を下回り、12か月未満だと掛け捨てになります。また減額した分は以後運用されないため実質利回りが落ちます。したがって無理な満額スタートより、確実に払える額で始めて黒字が安定してから増額するほうが有利です。課税所得500万円なら月3万円でも年109,512円の節税になります。

20年続けるとトータルでいくら得になりますか?

課税所得500万円・月7万円・20年のモデルでは、掛金累計16,800,000円に対して共済金Aが19,504,800円(元本より2,704,800円多い)、受取時の税額が1,313,280円なので手取りは18,191,520円です。これに20年間の節税累計5,110,560円を加えると、実質の差引きは+6,502,080円になります。得の78%は節税によるもので、付利(予定利率1.0%)による増加は残りです。小規模企業共済は運用商品ではなく節税商品と理解するのが正確です。

受け取るときに税金がかかりますか?

かかります。一括で受け取ると退職所得として「(受取額−退職所得控除)×1/2」が課税対象になります。退職所得控除は40万円×勤続年数(20年まで)+70万円×20年超の年数です。20年加入なら控除8,000,000円で、共済金A 19,504,800円との差額を半分にした5,752,000円が課税退職所得となり、税額は1,313,280円。30年なら控除が15,000,000円まで伸びるため、受取額30,436,000円でも税は1,934,861円に収まります。長く続けるほど受取時の実効税率が下がる設計です。

途中でやめたら元本割れしますか?

任意解約の場合は納付240か月(20年)未満で掛金合計を下回り、12か月未満だと解約手当金はゼロ(掛け捨て)です。一方、個人事業の廃業による共済金Aは短期でも掛金を上回り、5年(60月)で1.036倍、10年で1.076倍になります。つまり「制度の想定どおり事業をやめて受け取る」なら短期でも損はせず、「自分の意思で途中解約する」場合だけ元本割れします。払えなくなったら解約ではなく減額や掛止めを先に検討してください。

iDeCoと小規模企業共済はどちらを優先すべきですか?

控除枠は別枠なので、優先ではなく併用が基本です。両方満額なら年840,000+816,000=1,656,000円を所得から引けて、課税所得500万円の人の税額は1,089,522円から約568,000円まで下がります。使い分けの基準は流動性です。小規模企業共済は任意解約と貸付制度という出口があるため資金繰りが不安定な事業初期に向き、iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに投資信託で値上がりを狙えます。事業の安定度で配分を決める問題です。

赤字の年でも加入するメリットはありますか?

節税のメリットはありません。所得控除は課税所得を減らす仕組みなので、課税所得が0円なら減る税金も0円です。赤字が続く見込みなら減額や掛止めを検討する余地があります。ただし納付月数は解約手当金の支給率と直結するため、掛金を最低額の月1,000円まで下げて契約自体を継続し、月数を積み上げるという選択もあります。節税目的の加入は「黒字であること」が前提だと理解しておいてください。

控除を受けるための手続きは何が必要ですか?

毎年11月ごろに中小機構から届く「小規模企業共済掛金払込証明書」の金額を、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に記入します(e-Taxなら入力、紙の申告なら添付)。この手続きを忘れると控除されず、節税額はゼロになります。年末までに1年以内の分を前納すればその年の控除に算入できるため、利益が出た年に前納して控除を厚くする調整も可能です。

会社員でも加入できますか?

できません。加入できるのは常時使用する従業員が20人(商業・サービス業は5人)以下の個人事業主、その共同経営者(2人まで)、および小規模な会社等の役員などです。給与所得のみの会社員は対象外なので、同じ控除枠を使いたい場合はiDeCo(企業型DCの有無により上限が変わります)を利用します。個人事業を法人化して役員になった場合は加入を継続できますが、受け取る際は共済金Aより支給率の低い「準共済金」扱いになります。

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