「売上1000万のフリーランス、手取りはいくら?」個人事業主の税金を1円単位で計算する(会社員との違い・青色申告65万の効果)
「フリーランスで売上1000万円いったけど、手取りはいくらなんだ? 会社員の友だちは年収1000万で手取り700万って言ってるのに……」——独立や副業を始めると、誰もがこのギャップに直面します。ネットで「フリーランス 手取り」と検索すると「売上の6割が手取り目安」といった概数は出てきますが、「なぜ会社員より低くなるのか」「青色申告65万円でいくら変わるか」を、自分の数字で1円単位に計算している記事は意外と少ないものです。
この記事では、個人事業主(自営業・フリーランス)が売上から実際にいくら手元に残るかを、所得税・住民税・国民健康保険・国民年金の計算根拠から確認します。自分の数字で即座に試したい場合は 手取り計算ツール(自営・フリーランスモード) に売上を入れれば、同じロジックの概算が出ます(入力はどこにも送信されません)。
結論:売上1000万・経費200万なら手取りは約567万円(売上の約57%)
会社員なら「年収1000万円」で手取りは約770万円(手取り率約77%)ですが、個人事業主は「売上1000万円」であっても、経費を引いたうえで自分で税・保険料を払うため、手取りはずっと低くなります。
| 項目(売上1000万・経費200万) | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上(収入) | 1,000万円 | — |
| − 経費 | ▲200万円 | 仕入れ・通信・外注费等 |
| − 所得税(復興税込・概算) | ▲77.0万円 | 課税所得591万円×20%帯 |
| − 住民税(所得割+均等割) | ▲59.6万円 | 課税所得×10%+5,000円 |
| − 国民健康保険料(概算) | ▲96万円 | 所得の約14%(地域で変動) |
| − 国民年金保険料(概算) | (上記に含む) | 年約21万円(国保と合算で計上) |
| 手取り(年間) | 約567万円 | 売上の約57% |
「売上=年収」ではありません。会社員の「年収」はすでに経費(給与所得控除)や社会保険の折半を経た額ですが、個人事業主の「売上」はまだ何も引かれていません。この差を無視すると、生活設計を大きく狂わせます。
ステップ1:個人事業主の税金の全体像(収入→手取り)
給与の「天引き」がない分、次の順で自分で引いていきます。
- 売上(収入)から経費を引く → 事業所得
- 事業所得から青色申告特別控除(最大65万)などを引く
- さらに基礎控除(48万)と社会保険料控除(国保・国年の実額)を引く → 課税所得
- 課税所得に所得税の速算表(累進税率)を当てはめ、復興特別所得税2.1%を加算 → 所得税
- 課税所得をもとに住民税(所得割10%+均等割約5,000円)を計算
- 別枠で国民健康保険料と国民年金保険料を納付(これらは「控除」ではなく実際の支出)
つまり 手取り = 売上 − 経費 − 所得税 − 住民税 − 国保料 − 国年料 です。会社員と決定的に違うのは、④⑤の社会保険料を全額自己負担し、しかも国保料は所得が上がるほど急増する点です。
ステップ2:売上1000万・経費200万を実際に計算する
単身・青色申告65万円コース・令和の税制(基礎控除48万)を想定します。社会保険料(国保+国年)は、目安として「課税所得の約14%」で概算します(実額は後述のとおり地域で大きく変わります)。
事業所得 = 1,000万 − 200万 = 800万円
青色特別控除 − 65万 → 735万円
基礎控除 − 48万 → 687万円
社会保険料控除 − 約96万(687万×14%) → 課税所得 591万円
この課税所得591万円は、所得税の速算表で「330万円超〜695万円以下」の20%区分です。
所得税 = 591万 × 20% − 427,500円 = 754,500円
+ 復興特別所得税(754,500×2.1% ≒ 15,845円) → 約77.0万円
住民税は 591万 × 10% + 均等割5,000円 ≒ 59.6万円。これらに国保・国年(約96万)を足すと、年間の支払い総額は 77.0 + 59.6 + 96 ≒ 232.6万円 になります。売上1000万から経費200万とこの支払いを引けば、手取りは 約567万円 です。
ステップ3:売上500万・経費100万のケース
小さめの事業ならどうなるか。同じロジックで計算します(社保は概算で約40万円)。
事業所得 = 500万 − 100万 = 400万円
青色 − 65万 → 335万、基礎 − 48万 → 287万、社保 − 40万 → 課税所得 247万円
所得税 = 247万 × 10% − 97,500円 = 149,500円 + 復興2.1% ≒ 約15.3万円
住民税 = 247万 × 10% + 5,000円 ≒ 約25.2万円
手取り = 500 − 100 − 15.3 − 25.2 − 40 ≒ 約319.5万円(売上の約64%)。売上が半分でも、保険料の「底辺(均等割)」があるため手取り率はそこまで上がりません。
ステップ4:青色申告特別控除「65万コース」でいくら得か
帳簿をつけてe-Tax等で青色申告すると、事業所得から最大65万円がさらに控除されます。これを使わず「簡易帳簿の10万円コース」にすると、控除が55万円少なくなります。売上1000万の例で比べます。
| コース | 事業所得 | 課税所得 | 所得税(復興税込) |
|---|---|---|---|
| 青色65万コース | 800万円 | 591万円 | 約77.0万円 |
| 簡易10万コース | 800万円 | 646万円 | 約88.3万円 |
| 差 | — | 55万円 | 約11.3万円 |
税率20%の層なので、控除額55万円の差がそのまま「税額の差(×20%+復興分)」になり、約11万円の節税になります。これは「帳簿をつける手間」に対するリターンとしては大きいため、青色申告(65万コース)はほぼ必須と言えます。
ステップ5:会社員との手取りを同規模で比べる
「売上800万・経費200万(事業所得600万)」の個人事業主と、「年収800万」の会社員(独身・会社員モード)を比べます。
| ケース | 手取り(年間) | 手取り率 | 差 |
|---|---|---|---|
| 会社員(年収800万) | 約591万円 | 約74% | — |
| 個人事業主(売上800万・経費200万) | 約448万円 | 約56% | 約143万円低い |
差の主因は「社会保険料の折半」です。会社員は健康保険・厚生年金を会社が半分負担しますが、個人事業主は国民健康保険・国民年金を全額自己負担し、さらに国保料は所得に連動して急増します。また厚生年金の保険料率(約18.3%)は国民年金(年約21万円の定額)より見かけは高いものの、会社員は半分を会社が払うため、実質負担は個人事業主のほうが重くなります。ただし個人事業主は「経費」を柔軟に計上できるメリットもあるため、経費の工夫でこの差を詰める余地はあります。
ステップ6:来年分の納税資金を「毎月積む」鉄則
会社員は毎月の給与から税・保険料が天引きされているため「貯金しなくても」納税されています。個人事業主は口座に入った売上がそのまま手元にあるため、うっかり使い込むと翌年の確定申告時に税金が払えません。対策はシンプルです。
- 売上の1〜2割を「納税用口座」に毎月振り分ける:売上1000万なら月8〜17万円程度を別口座へ。
- 所得税は前年度課税:独立1年目は所得税の支払いがいったん先送りになりますが、2年目以降は確実に来ます。その分を1年目から積んでおくのが安全です。
- 無申告・遅延にはペナルティ:無申告加算税(最大15%)や延滞税(年約7.3%程度の割合)がつくため、期日(原則3月15日)を守ります。
よくある誤算4つ
- 「売上=手取り」と思い込む:売上1000万の手取りは約567万円。経費と自分で払う税・保険料を引くと半分以下になることもあります。
- 「会社員と同じ手取り率」と比べる:社会保険の折半がない分、個人事業主はどうしても手取り率が低くなります。同じ生活水準を保つなら、売上を会社員の年収より高く取る必要があります。
- 「青色申告は面倒だから10万コース」:65万コースとの税額差は約11万円(税率20%帯)。帳簿アプリ等を使えば十分回収できる労力です。
- 「税金は確定申告の時期に考えればいい」:源泉徴収がない分、1年間で納税資金を積まないと翌春に大赤字になります。毎月の積立が鉄則です。
関連ツール・記事で自分の数字を確かめる
- 手取り計算ツール(自営・フリーランスモード):売上を入れると、同じロジックの概算手取りが即座に出ます。
- 所得税の計算方法を1円単位で解説:累進税率の速算表と年収別の税額。
- 住民税の計算方法:所得割と均等割のしくみ(前年度課税の罠も)。
- 副業の税金計算:本業の給与と副業の売上を合算したときの税額。
- 給与所得控除の計算:会社員との構造の違い(個人事業主は「経費」と「青色特別控除」が代わり)を比べるのに。
注意事項
本記事の数値は単身・青色申告65万コース・令和の税制(基礎控除48万)を想定した概算のシミュレーションです。最大の不確実性は国民健康保険料です。国保料は市区町村ごとの料率(所得割率・均等割額)で決まり、所得の約14%というのはあくまで目安であり、実額は「所得割(所得×約7%前後)+均等割(加入者・世帯人数分)+資産割」できまります。家族がいると均等割が乗り、実額は年30〜80万円台と大きくブレます。また社会保険料控除の「実額」は、実際に納付した国保料・国年料を用います。さらに、事業主控除(基礎控除は所得金額が2,400万円を超えると逓減し、2,450万円超は0円)、配偶者控除・扶養控除の有無、小規模企業共済等の掛金控除、損失の繰越控除などを使えば税額は変わります。正確な額は、確定申告書の控除欄およびお住まいの自治体の「国民健康保険料率表」、日本年金機構の「国民年金保険料」が最終的な根拠です。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務・社会保険の相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した金額が外部に送信されることはありません。
よくある質問
個人事業主の手取りはどう計算するの?
会社員と違い「天引き」がないため、売上から①経費②所得税③住民税(所得割+均等割)④国民健康保険料⑤国民年金保険料を自分で差し引いた残りが手取りになります。つまり「手取り = 売上 − 経費 − 所得税 − 住民税 − 国保料 − 国年料」です。給与所得控除はなく、代わりに「青色申告特別控除(最大65万円)」などが使えます。
会社員とフリーランスで手取りが違うのはなぜ?
最も大きいのは社会保険料の仕組みの違いです。会社員は健康保険・厚生年金の保険料を会社と折半(会社が半分負担)しますが、個人事業主は国民健康保険・国民年金を全額自己負担します。さらに国保料は所得が上がるほど急増するため、同じ売上規模でも個人事業主の手取りは会社員より低くなりがちです。
青色申告特別控除の65万円とは何ですか?
帳簿をつけて正しく青色申告をすれば、事業所得から最大65万円をさらに控除できる制度です(e-Tax等で提出・複式簿記が条件)。これを使わず簡易帳簿の「10万円コース」にすると、控除額が55万円少なくなり、税率20%の層なら所得税が約11万円多くなります。
国民健康保険料はいくらかかりますか?
市区町村ごとに料率が異なり、所得割(所得×約7%前後)+均等割(加入者・世帯ごとに約2.6万〜4万円)+資産割などで決まります。所得800万円程度の単身なら年30〜50万円台が目安ですが、家族が増えると均等割が乗り、実額は大きく変わります。正確な額はお住まいの自治体の「国民健康保険料率表」が根拠です。
源泉徴収されないから気をつけることは?
売上が口座に入っても、それは「手取り」ではなく、そのなかから来年の税・保険料を自分で用意しなければなりません。遅延すると無申告加算税や延滞税がつくため、「毎月、売上の1〜2割を納税用口座に積み立てる」のが鉄則です。所得税は前年の所得で翌年支払う(前年度課税)ため、独立初年はいったん払いが先送りになりますが、2年目以降は確実に来ます。