退職金2,000万円の手取りはいくら? 退職所得控除で税金を逆算し、1円単位で計算する

2026-08-18 | 退職金 税金 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「退職金、いくらもらえるかは分かるけど、手元にいくら残るのかが分からない」——定年や早期退職を前に、この数字が必要になる場面は多いはずです。ネットで検索すると「約9割が手元に残る」という結論だけが並び、なぜ給与よりずっと低い税金で済むのか、その計算式が書かれていないことがほとんどです。

この記事では、会社員・勤続20年・退職金2,000万円(単身・退職所得控除のみ)を例に、退職所得控除 → 退職所得 → 所得税 → 住民税の順で、実際の計算式と数値をすべて追います。自分の金額で試したい場合は手取り計算ツールのほか、退職金をどう運用するかの目安として複利積立シミュレーションも併せてどうぞ。

結論:勤続20年・退職金2,000万円なら手取りは約1,861万円(手取り率約93%)

項目金額備考
退職金(額面)20,000,000円一時金で受け取る場合
退職所得控除▲8,000,000円40万円×勤続20年
退職所得(課税ベース)6,000,000円(2,000万−800万)÷2
所得税(復興税込)▲約788,700円分離課税・税率20%区分
住民税(退職所得割)▲600,000円10%一律
手取り約18,611,300円手取り率約93.1%

給与なら年収2,000万円で手取りは7割強(約1,400万円)になるところ、退職金は控除と「半分ルール」のおかげで手取り率9割超を保ちます。ここから、なぜこの金額になるのかを順に計算します。

ステップ1:退職所得控除は「勤続年数×40万円」(20年超は加算あり)

退職金には、給与の「給与所得控除」に相当する大きな控除があります。国税庁の「給与所得者等の退職所得の控除額」は、勤続年数によって次のように決まります。

勤続年数控除額の計算式具体例
20年以下40万円 × 勤続年数10年→400万/20年→800万
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数−20)30年→1,500万/40年→2,200万

今回の例(勤続20年)は 40万円 × 20 = 800万円。控除後の残りは 2,000万 − 800万 = 1,200万円 です。

注意点:これは「給与所得者等(会社員・公務員など)」の算式です。役員等は勤続年数の算定や控除額の算出が異なります。また、退職手当等のうち「退職手当等の性質を有しないもの(業績連動の賞与的支給など)」は、この控除の対象にならず、別の計算になる場合があります。

ステップ2:課税されるのは「残りの半分」だけ

退職金の最大の特徴は、控除後の残額の半分だけが課税対象になることです。これを退職所得といいます。

退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)÷ 2

例では (2,000万 − 800万)÷ 2 = 600万円。つまり税金がかかるのは、2,000万円のうち「たったの600万円分」だけです。これが給与より圧倒的に税負担が軽い理由です。

ステップ3:所得税は「退職所得専用」の分離課税表で計算

退職所得の所得税は、給与とは別の分離課税の速算表で求めます(復興特別所得税2.1%を後で加算)。

退職所得の金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万〜330万円10%97,500円
330万〜695万円20%427,500円
695万〜900万円23%636,000円
900万〜1,800万円33%1,536,000円
1,800万〜4,000万円40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

例の600万円は「330万〜695万円」区分の20%・控除額427,500円です。

600万 × 20% − 427,500 = 1,200,000 − 427,500 = 772,500円

これに復興特別所得税2.1%を乗じます。

772,500 × 1.021 ≒ 788,722円 → 約788,700円

ステップ4:住民税(退職所得割)は10%一律

住民税の退職所得割は、標準税率10%(所得割のみ、均等割なし)で計算します。ここには復興特別所得税は乗りません(住民税側の仕組みが別だからです)。

600万 × 10% = 600,000円

注意点:給与の住民税には均等割5,000円が加わりますが、退職所得割には均等割はかかりません。一方で、退職時に係る住民税は、原則として退職予定年の1月1日現在の住所地で課税されるなどの取り扱いがあり、転居タイミングによっては「どの自治体に納めるか」にも注意が必要です。

ステップ5:手取りを合計する

20,000,000 −(788,700 + 600,000)= 18,611,300円

手取り率は 約93.1%。これが「退職金は9割手元に残る」と言われる所以です。月々の生活に直すと、このまま預金すれば月約155万円を30年分の原資になります(使い方次第ですが)。

具体例で比べる:勤続年数と金額の違い

ケース退職金控除額退職所得所得税(復興込)住民税手取り手取り率
勤続10年1,000万400万300万約206,800円300,000円約949万円94.9%
勤続20年2,000万800万600万約788,700円600,000円約1,861万円93.1%
勤続30年3,000万1,500万750万約1,111,900円750,000円約2,814万円93.8%

勤続30年・3,000万円の場合、控除1,500万円を引いた残り1,500万円の半分750万円が課税ベースになります。750万円は所得税「23%・控除額636,000円」区分なので、750万×23%−636,000=1,089,000円、復興税込で約1,111,900円。住民税は750万×10%=750,000円。手取りは 30,000,000−1,111,900−750,000=28,138,100円(約2,814万円) です。

注目すべきは、金額が約3倍違っても手取り率がいずれも9割超で安定している点です。これは「控除→半分」という構造が、退職金という一時所得に組み込まれているからです。

よくある誤算3つ

  1. 額面に給与の税率を掛けてしまう:退職金は給与と違い、控除と半分ルールがあるため、額面に20%などを掛けると税額を数倍過大に見積もります。特に高額な退職金ほど差が開きます。
  2. 源泉徴収額=確定税額だと思い込む:退職時の源泉徴収はあくまで概算。扶養控除や医療費控除等を合わせて確定申告すると、還付(戻り)が発生することが多いです。還付があるかないかは、退職年の所得税・住民税の全体を合算して初めて分かります。
  3. 「退職金=不労所得」と油断して使い切る:手取りの9割超が残るのは事実ですが、それは「一度きりの資産」です。住宅ローンの繰上返済や、老後の生活費に充てる複利運用(複利積立シミュレーション)で、この原資をどう増やすかが次の課題になります。

手取りをどう使うか(次の一手へ)

注意事項

本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の税額は、退職金の種類(退職手当・一時金・年金)、役員か否か、退職年齢、扶養親族等の状況、そして確定申告や年末調整での他所得との合算によって変わります。特に「長期(5年超)継続保有の株式等の譲渡益」など他の所得と合算する場合は取り扱いが異なります。正確な金額と還付の有無は、お住まいの税務署・自治体の公式情報、または税理士等の専門家にご確認ください。制度の詳細は国税庁のウェブサイトが最終的な根拠になります。

自分の金額で同じ内訳を見たい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

よくある質問

退職金の手取りはどうやって計算しますか?

退職金から「退職所得控除」を引き、さらにその差額の半分(退職所得)にだけ税金がかかります。手取り=退職金 − 所得税(復興税込) − 住民税です。例えば勤続20年の会社員で退職金2,000万円なら、控除800万円を引いた1,200万円の半分600万円が課税ベースとなり、手取りは約1,861万円になります。

退職所得控除の計算式は?

勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年を超える部分は「800万円+70万円×(勤続年数−20)」です。勤続10年なら400万円、20年なら800万円、30年なら1,500万円が控除されます(給与所得者等の場合)。

退職金にかかる税金は給与の税金と何が違う?

給与は毎月の所得に累進税率で課税されますが、退職金は「退職所得」として分離課税されます。しかも退職所得控除を引いた残りの半分だけが課税対象になるため、同年収の給与より税負担はずっと軽くなります。

勤続年数が長いほど手取り率は上がる?

はい。退職所得控除が勤続年数に応じて大きくなるため、長く勤めるほど控除後の課税ベースが小さくなり、手取り率は上がります。例で言えば勤続10年・1,000万円で手取り率約95%、30年・3,000万円で約94%と、いずれも給与より高い手取り率です。

源泉徴収された税金は戻ってくることもある?

あります。退職時の源泉徴収は「退職所得の源泉徴収税額表」による概算です。確定申告(または年末調整)で配偶者控除や医療費控除等を合算すると、納めすぎた所得税・住民税が還付されることがあります。

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