所得税の税率(累進課税)と速算表——課税所得から税額を出す計算(別表第一7区分・復興特別所得税2.1%・限界税率と平均税率の違い・年収500万・1000万の具体例)
「年収500万円の会社員だけど、いったい所得税はいくら取られてるの? 給与明細の『源泉徴収税』の額、合ってるのかな」——税金の計算で一番最初の壁は、「所得税の税率は何%?」という問いに、たった1つの数字で答えられないことです。日本の所得税は累進課税といって、稼ぎが多くなるほど税率が上がる仕組み。そのため「課税所得100万円の人」と「課税所得1000万円の人」では、当てはまる税率が5%から23%(さらに最高45%)までバラバラになります。
ネットで「所得税 税率」と検索すると、たいてい「5%・10%・20%…」という税率の一覧が出てきますが、「その税率をどう使って、実際の税額を1円単位で出すか」を、計算式の根拠から追ったページは意外に少ないものです。この記事では、国税庁の「所得税の速算表(別表第一)」を使って、課税所得から所得税額を出す計算を、具体例(課税所得195万〜1000万円、年収500万・1000万円)ごとに1円単位で示します。あわせて、「限界税率」と「平均税率」がなぜ違うのかという、節税や手取りを考えるうえで外せない注意点にも触れます。
誰が読むべき記事か(検索意図)
この記事は、次のような疑問・状況にある人に向けて書いています。
- 「年収〇〇万の税金はいくら?」を自分で計算したい人——給与明細の源泉徴収税額の根拠を知りたい。
- 「所得税の税率は何%?」と聞かれて答えられない人——累進課税の仕組みと「速算表」の読み方を知りたい。
- 年末調整・確定申告で「課税所得」から税額を出す段階にきた人——税率表(別表第一)の使い方を確認したい。
- 扶養の壁や節税を考える人——「限界税率」という言葉の正体(控除の効果が変わる理由)を知りたい。
- 手取り計算ツールの出し方に納得したい人——所得税額がどう決まるかを、工具(計算機)の裏側まで理解したい。
なお、ここでは国税(所得税)の計算に絞り、住民税(均等割・所得割)や、法人税・消費税は扱いません。住民税の計算は別記事で扱っています。
所得税の計算式——「課税所得」に税率をかけ、控除額を引く
所得税の税額は、次の1行で決まります(所得税法第89条・別表第一)。
所得税額 = 課税所得 × 税率 − 控除額
※さらにそこに 復興特別所得税(2.1%)が乗る(後述)。
ここでいう「課税所得」とは、収入(給与なら年収)から「給与所得控除」「社会保険料控除」「基礎控除(48万円)」「配偶者控除」などの所得控除を引いたあとの額
で、この「課税所得」に、その金額の大きさに応じて決まる税率をかけ、決まった「控除額」を引く、というのが基本の形です。「控除額」は引き算の調整項で、これがあるおかげで、どの税率区分にいても、隣の区分と税額がキレイに続く(連続する)ようになっています。
累進課税ってなに?——「稼ぎが多いほど税率が上がる」超過累進
日本の所得税は超過累進税率という方式です。これは、
- 課税所得が低い部分(例:195万円まで)には、低い税率(5%)しかかからない。
- 課税所得が高い部分(例:1000万円を超える部分)には、高い税率(45%まで)がかかる。
つまり「すべての所得に一律〇〇%」ではなく、「その部分ごとに、その高さにふさわしい税率」がかかるのが累進課税です。「超過」とは「その区分を超えた分だけに高い税率が超過してかかる」という意味です。これを1円ずつ計算すると面倒なので、あらかじめ「どの区分ならどの式」をまとめたのが、次の速算表(別表第一)です。
所得税の速算表(別表第一)——全7区分
課税所得(税率をかけるもとの額)の大きさによって、次の7つの区分のいずれかに入ります。該当する行の「税率」と「控除額」を使って、税額 = 課税所得 × 税率 − 控除額 を計算します。
| 課税所得の金額(区分) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,950,000円以下 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 〜 3,300,000円以下 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 〜 6,950,000円以下 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 〜 9,000,000円以下 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 〜 18,000,000円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 〜 40,000,000円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円超 | 45% | 4,796,000円 |
使い方のポイント:
- ご自身の課税所得がどの行に入るかで、1つの「税率」と「控除額」が決まります。
- 例えば課税所得が 500万円なら「330万円超〜695万円以下」の行 → 税率20%・控除額427,500円。
- 区分の境界(195万・330万・695万・900万・1800万・4000万円)は「超」と「以下」の扱いが異なるので、ちょうど境界の方は注意してください。
具体例①:課税所得195万円(5%の上限ぎりぎり)——税額 97,500円
最も低い税率(5%)の区分の、ちょうど上限です。
税額 = 1,950,000 × 5% − 0 = 97,500円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税所得 | 1,950,000円 |
| 税率 × 課税所得 | 97,500円 |
| − 控除額 | 0円 |
| 所得税額(本則) | 97,500円 |
低所得の方は、この5%の区分に入ります。扶養に入っている配偶者や、パートで稼ぎを抑えている方の「自分で申告した場合」などの目安になります。
具体例②:課税所得330万円(10%の境界)——税額 232,500円
10%の区分の、ちょうど上限(330万円以下)です。
税額 = 3,300,000 × 10% − 97,500 = 330,000 − 97,500 = 232,500円
ここで「控除額97,500円」が効いています。もし控除額がなければ 330,000円になるところが、97,500円引かれて 232,500円になります。これは、例えば課税所得を195万円から330万円に増やしたとき、境目で税額が不連続にならないよう調整するための数字です(実際、195万円で97,500円、そこから先は10%ずつ増えるので、330万−195万=135万円×10%=13.5万円を足すと 97,500+135,000=232,500円 と一致します)。
具体例③:課税所得500万円(20%の真ん中)——税額 572,500円
会社員の「標準的」なあたりです(年収500万円なら、給与所得控除などを引いた課税所得はこれより少し下がります。詳細は後述)。
税額 = 5,000,000 × 20% − 427,500 = 1,000,000 − 427,500 = 572,500円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税所得 | 5,000,000円 |
| 税率 × 課税所得(20%) | 1,000,000円 |
| − 控除額 | 427,500円 |
| 所得税額(本則) | 572,500円 |
この段階では「平均税率」は 572,500 ÷ 5,000,000 = 約11.45% です。つまり、かかっている「代表の税率20%」よりずっと低く、税金は課税所得の1割強にとどまります。これが累進課税の恩恵です。
具体例④:課税所得1000万円(23%の区分)——税額 1,764,000円
高所得の区分です。
税額 = 10,000,000 × 23% − 636,000 = 2,300,000 − 636,000 = 1,764,000円
平均税率は 1,764,000 ÷ 10,000,000 = 17.64%。代表税率23%よりは低いものの、課税所得500万円(平均11.45%)よりはるかに高い負担率です。所得が2倍になっても、税額は約3倍(57.25万→176.4万)になっているのが、累進課税の「所得が上がるほど税金の伸びが大きい」性質です。
忘れちゃいけない「復興特別所得税(2.1%)」
上の例はあくまで「本則の所得税額」です。実際に引かれるのは、これに 復興特別所得税(2.1%)を乗せた額です(東日本大震災からの復興財源として、原則2037年まで課される特例税)。
所得税額(確定) = 本則税額 × 1.021
先ほどの具体例に適用すると:
| 課税所得 | 本則税額 | 復興特別所得税(×1.021)込み |
|---|---|---|
| 195万円 | 97,500円 | 99,547円 |
| 330万円 | 232,500円 | 237,382円 |
| 500万円 | 572,500円 | 584,522円 |
| 1000万円 | 1,764,000円 | 1,801,044円 |
差額は本則税額の2.1%分(例:500万円なら約1.2万円)です。手取り計算などで「ぴったり合わない」と感じたら、この2.1%のせいであることが多いです。
最重要の注意点——「限界税率」と「平均税率」は別物
累進課税を理解するうえで、いちばん大事なのはこの区別です。
| 用語 | 意味 | 課税所得500万円の場合 | 課税所得1000万円の場合 |
|---|---|---|---|
| 代表税率(表の税率) | ご自身の区分に書いてある税率 | 20% | 23% |
| 限界税率 | 「もう1円稼いだときに引かれる税率」=次の1円にかかる税率 | 20% | 23% |
| 平均税率 | 税額 ÷ 課税所得(実質の負担率) | 約11.45% | 約17.64% |
この2つがずれるのが累進課税の本質です。よく「控除の効果は『控除額×税率』」と言われますが、この「税率」は実は限界税率のことです。だから、
- 課税所得500万円の人が「所得控除を10万円増やす」と、税金は 10万円 × 20%(限界税率)= 2万円 安くなる。
- 課税所得1000万円の人が同じく10万円の控除を増やすと、10万円 × 23% = 2.3万円 安くなる。
つまり「稼ぎが多いほど、控除(節税)の効き目が大きい」のは、限界税率が高いからです。この「限界税率」こそが、扶養の壁や年収の壁を考えるときの鍵になります(詳しくは限界税率と手取りの記事を参照)。
年収からの流れ——「年収500万・1000万」で実際の所得税はいくら?
ここまで「課税所得」を出発点にしましたが、実際には「年収」から次の順で減っていきます。
年収 − 給与所得控除 = 給与所得
給与所得 − 社会保険料 − 基礎控除(48万) − 各種所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 − 控除額 × 1.021 = 所得税額
独身会社員(社会保険料を年収の約14.5%と想定、その他の所得控除なし)で試算すると:
| 年収 | 給与所得控除 | 給与所得 | 社会保険料(目安) | 課税所得 | 所得税額(復興込) |
|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 144万円 | 356万円 | 約72.5万円 | 約235.5万円 | 約14.1万円 |
| 1000万円 | 195万円(上限) | 805万円 | 約145万円 | 約612万円 | 約81.3万円 |
年収が2倍(500万→1000万)になっても、給与所得控除は上限で頭打ちになる一方、課税所得は約2.6倍に増えるため、所得税額は約5.8倍(14.1万→81.3万)に跳ね上がります。これが「累進課税で、高所得ほど税負担の伸びが大きい」実感です。
よくある罠(注意点)
- 「税率」は1つじゃない。検索で出る「所得税 税率」の一覧は、あくらく「どの区分か」で当てはまるものが変わります。ご自身の課税所得の区分を確認してください。
- 所得税と住民税は別物。ここで出したのは「国税(所得税)」だけ。住民税(所得割は一律10%+均等割)は別に計算され、手取りには両方引かれます。住民税の計算は 住民税の計算記事 へ。
- 「所得控除」で税額が変わる。配偶者控除や医療費控除などを足すと課税所得が下がり、当てはまる税率(限界税率)が下がることも。「税額控除」と「所得控除」の違いは 税額控除と所得控除の違いの記事 で。
- 扶養の壁は「限界税率」で決まる。年収103万・106万・130万・150万の壁は、配偶者側の所得控除(扶養控除)の有無でご本人の限界税率が変わるため生じます。詳しくは 年収の壁シミュレーション へ。
- 復興特別所得税(2.1%)を忘れずに。本則税額に×1.021したものが、実際の引かれ額です。
関連記事・ツール
- 給与所得控除の速算表——年収から「給与所得」を引く計算。ここが所得税計算の出発点。
- 限界税率と手取り——控除の効果が「限界税率」で決まる理由。本記事の「最重要注意点」の続き。
- 税額控除と所得控除の違い——所得税額を「計算したあと(税額)」から引くか「前(所得)」から引くか。
- 配偶者控除で税金はいくら安くなるか——所得控除の代表例。控除額38万円が本当に効くのはどれだけか。
- 手取りから年収を逆算——所得税・住民税・社保を引いた手取りと年収の関係。
- 年収の壁(103・106・130・150万)——扶養控除の有無で手取りが逆転する境界。
- 住民税の計算——所得税とは別に計算される住民税(所得割10%+均等割)。
- 複利と単利の違い——税率の話ではありませんが、「計算方法で結果が変わる」話の根本。
いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
結論
所得税額は「課税所得 × 税率 − 控除額(速算表)」で出ます(さらに復興特別所得税2.1%が乗ります)。日本の所得税は累進課税なので、課税所得の大きさで当てはまる税率が5%〜45%まで7段階に分かれ、該当する行の「税率」と「控除額」を使います。具体例では、課税所得500万円で572,500円(復興込584,522円)、1000万円で1,764,000円(復興込1,801,044円)となり、年収から逆算すると独身会社員で年収500万円→所得税約14.1万円、年収1000万円→約81.3万円になります。最も大事な注意点は、「限界税率(次の1円にかかる税率)」と「平均税率(税額÷課税所得)」は別物であること——これがあるからこそ、稼ぎが多いほど控除(節税)の効き目が大きく、扶養の壁などの計算の鍵になります。正確なご自身の手取りは、手取り計算ツールや給与所得控除の速算表と合わせて確認してください。
注意事項
本記事の数値は、所得税法別表第一(速算表)の7区分の税率・控除額および復興特別所得税(2.1%)という現行制度に基づく単純計算です。課税所得は、収入(給与所得控除後の給与所得)から社会保険料控除・基礎控除(48万円)・配偶者控除・医療費控除などの所得控除を引いた額であり、ご本人の状況(扶養親族の有無・各種控除の要件・青色申告特別控除等)によって大きく変動します。税率区分の境界(195万・330万・695万・900万・1800万・4000万円)の取扱い、および復興特別所得税の適用期限(原則2037年まで)などの制度改正は、今後変わる可能性があります。またここでの「所得税額」には住民税(所得割10%+均等割)は含まれていません(住民税は別計算)。特に扶養の壁や確定申告の精算は、ご自身の源泉徴収票・確定申告書と照らし合わせてください。最新の数値・要件は国税庁または最寄りの税務署・市区町村窓口でご確認ください(外部リンクは情報提供のみ。当サイトは一切の送信を行いません)。税務の取扱いは税理士等にご相談ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
所得税の税率は何%ですか?
日本の所得税は累進課税で、課税所得の大きさによって5%〜45%の7段階に分かれます(所得税法別表第一)。課税所得195万円以下は5%、330万円以下は10%、695万円以下は20%、900万円以下は23%、1800万円以下は33%、4000万円以下は40%、それを超えると45%です。ただし「税率」はご自身の課税所得がどの区分に入るかで決まり、1つには決まりません。
課税所得から所得税額を出す式を教えてください。
所得税額 = 課税所得 × 税率 − 控除額 です(さらに復興特別所得税2.1%を乗せたものが実際の引かれ額)。例えば課税所得500万円なら、20%の区分なので 5,000,000×20%−427,500=572,500円(本則)です。この「控除額」は、税率区分ごとに決まった調整項で、どの区分でも税額がキレイに続くように働きます。
復興特別所得税(2.1%)って何ですか?
東日本大震災からの復興財源として課される特例税です。所得税額(本則)に2.1%を乗せた額が、実際に引かれます(原則2037年まで)。例えば課税所得500万円の本則税額572,500円なら、×1.021して584,522円が確定額です。手取り計算で「ぴったり合わない」と感じたら、この2.1%のせいであることが多いです。
限界税率と平均税率の違いを教えてください。
限界税率は「もう1円稼いだときに引かれる税率」(=ご自身の区分の税率)で、平均税率は「税額÷課税所得」の実質負担率です。累進課税なので両者はずれ、課税所得500万円なら限界20%・平均約11.45%、1000万円なら限界23%・平均約17.64%になります。控除の効果(控除額×税率)で効くのはこの限界税率なので、稼ぎが多いほど節税の効き目が大きくなります。
年収500万円の所得税はいくらですか?
独身会社員(社会保険料を年収の約14.5%と想定、その他控除なし)の概算で、所得税額は約14.1万円です。計算の流れは、年収500万−給与所得控除144万=給与所得356万、そこから社保約72.5万・基礎控除48万を引いて課税所得約235.5万円、これに10%の区分(控除額97,500円)を当てはめて出します。正確な手取りは手取り計算ツールで確認できます。
所得税と住民税の違いは何ですか?
ここで扱ったのは国税(所得税)のみです。住民税は別に計算され、所得割(一律10%)+均等割で、手取りからは両方引かれます。例えば年収500万円の方は、所得税の約14万円とは別に、住民税の所得割(課税所得×10%)と均等割(約5,000円)もかかります。住民税の詳しい計算は住民税の記事で確認できます。
扶養の壁はどうやって決まるのですか?
扶養の壁(103万・106万・130万・150万)は、配偶者側の「所得控除(扶養控除)」の有無によって、ご本人の限界税率が変わるために生じます。例えば配偶者の年収が106万円を超えると扶養控除がなくなり、ご本人の課税所得が上がって限界税率が跳ね上がる(=手取りが逆転する)ことがあります。詳しくは年収の壁シミュレーションの記事へ。