所得税の計算方法を1円単位で解説(給与所得控除→課税所得→速算表)

2026-08-16 | 税金 手取り 給与所得控除 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「給与明細の所得税、なんでこんな額なんだ?」——年末調整の時期や転職の年収交渉で、この疑問を持つ人は少なくありません。ネットで「年収○万の所得税」を検索すると結論の数字は出ますが、どうやってその税額になったのか、速算表の控除額を使った計算を追っている記事は意外と少ないものです。

この記事では、会社員・独身・扶養なしを前提に、給与所得控除 → 社会保険料控除 → 基礎控除 → 課税所得 → 所得税法の速算表の順で、実際の計算式と数値をすべて追います。自分の年収で試したい場合は、手取り計算ツールに金額を入れれば同じロジックで即座に出ます。

結論:年収500万円の所得税は約14.1万円(実効税率は額面の約2.8%)

年収(会社員・独身)給与所得控除課税所得所得税(復興税込)額面に対する実効税率
300万円98万円約111万円約5.7万円約1.9%
400万円124万円約170万円約8.7万円約2.2%
500万円144万円約236万円約14.1万円約2.8%
700万円180万円約371万円約32.2万円約4.6%
1,000万円205万円約603万円約79.5万円約8.0%

まず押さえておきたいのは、所得税の税率が掛かるのは「年収」ではなく「課税所得」だという点です。上の表で実効税率が2〜8%と低いのは、このためです。以下、順に計算します。

ステップ1:給与所得控除で「給与所得」を出す

会社員には経費の代わりに給与所得控除が自動で認められます。所得税法の速算表(2024年改正後の現行)では、収入金額によって次のように決まります。

収入金額の区分給与所得控除の計算式
180万円以下収入×40% − 10万円(ただし55万円が下限)
180万〜360万円収入×30% + 8万円
360万〜660万円収入×20% + 44万円
660万〜850万円収入×10% + 110万円
850万円超収入×5% + 155万円(ただし220万円が上限)

年収500万円は「360万〜660万円」の区分なので、

5,000,000 × 20% + 440,000 = 1,440,000円

よって課税のベースとなる給与所得は

5,000,000 − 1,440,000 = 3,560,000円

注意点:この控除は「実際に使った経費」とは無関係で、領収書も不要です。通勤用のスーツ代や書籍代を別に経費計上することは原則できません(特定支出控除は要件が非常に厳しく、実務ではほぼ使えません)。

ステップ2:所得控除(社会保険料+基礎控除)を引く

課税所得は、給与所得から所得控除を引いて求めます。独身・扶養なしなら、主な控除は次の2つです。

課税所得 = 3,560,000 −(720,000 + 480,000)= 2,360,000円

ここが誤算の元です。「年収500万だから税率20%」ではありません。税率が掛かるのはこの課税所得236万円に対してです。

ステップ3:速算表で所得税を出す

課税所得に当てはめるのが、所得税法の速算表(2024年改正後の現行)です。

課税所得の区分税率控除額
195万円以下5%0
195万〜330万円10%97,500円
330万〜695万円20%427,500円
695万〜900万円23%636,000円
900万〜1,800万円33%1,536,000円

課税所得236万円は「195万〜330万円」の区分なので、税率10%・控除額97,500円です。

2,360,000 × 10% − 97,500 = 138,500円

この控除額97,500円が「累進の調整」です。これがないと、195万円までは5%、超えた分だけ10%という仕組みを、1つの式で近似しています。

ステップ4:復興特別所得税2.1%を上乗せ

所得税額には、東日本大震災からの復興財源として復興特別所得税(2.1%)が加わります(令和19年度末までの時限措置)。

138,500 × 1.021 ≒ 141,408円

よって年収500万円の所得税は約14.1万円になります。これが、手取り記事(年収500万円の手取りを1円単位で分解した記事)に載っている金額の根拠です。

「額面×税率」だと何倍違うか

誤りやすいのは「年収500万円に10%を掛けて50万円」と見積もることです。実際は約14.1万円で、3.5倍以上の過大見積もりになります。違いは次の2点から生まれます。

  1. 課税所得までの2段階の控除:給与所得控除(144万)+社会保険料(72万)+基礎控除(48万)で、年収の約53%がまず非課税になります。
  2. 累進課税の控除額:速算表の97,500円で、低い税率のぶんが調整されます。

つまり「手取りは年収の約8割(年収500万なら約390万)」という感覚は、この控除構造が作っているものです。

年収が上がったとき、手取りはどれくらい増えるか(具体例)

累進課税なので、増えた分だけに高い税率が掛かります。年収500万→700万(+200万円)の場合を計算します。

項目年収500万年収700万差
給与所得控除144万円180万円+36万円
社会保険料(約14.4%)約72万円約101万円+29万円
課税所得236万円371万円+135万円
所得税(復興税込)約14.1万円約32.2万円+18.1万円

課税所得が236万→371万に増えたことで、195万を超えた分が10%から20%区分に入ります。増えた200万円のうち所得税は約18万円(実効約9%)しか引かれず、手取りは約147万円増えます。ただし住民税や社会保険料も連動して増えるため、税・保険込みの手取り率は年収が高いほど緩やかに下がります。

やりがちな誤算3つ

  1. 額面に税率を掛ける:課税所得は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を引いた後の金額です。500万円に10%を掛けると所得税を3.5倍以上過大に見積もります。
  2. 住民税と混同する:住民税は基礎控除が43万円(所得税は48万円)で税率構造も異なります。手取りから引かれる「税」はこの2つで、計算の出所は住民税の計算方法を1円単位で解説した記事にまとめています。
  3. 扶養・控除を忘れる:配偶者控除や扶養控除があると課税所得がさらに下がり、税額は大きく変わります。世帯の壁の根拠は年収の壁103万・106万・130万・150万円の記事を併読ください。

関連ツール・記事で手取り全体を確かめる

所得税を含めた年間の手取り(住民税込み)は 手取り計算ツール で確認できます。給与所得控除そのものの計算式と早見表は 給与所得控除の早見表と計算式、社会保険料の出所は 社会保険料の計算方法、住民税のしくみは 住民税の計算方法、年収500万円の全内訳は 年収500万円の手取りを1円単位で分解した記事 が根拠になります。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、会社員・協会けんぽ加入・独身・扶養なし・40歳未満(介護保険料なし)を想定した概算です。実際の税額は、年末調整や確定申告における他の控除(配偶者控除、生命保険料控除、医療費控除、ふるさと納税のワンストップ等)、および住宅ローン控除などの適用で大きく変わります。また給与所得控除や基礎控除の額は税制改正(毎年の法改正等)によって変動します。正確な金額は、勤め先の「源泉徴収票」や国税庁の「年末調整のしおり」、および住民税の計算方法等の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務相談に代わるものではありません。

自分の年収で所得税を含む手取りを試したい場合は 手取り計算ツール へ。すべてブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

よくある質問

所得税は年収に税率を掛ければ出るの?

出ません。額面×税率は2倍近い誤算になります。まず給与所得控除(年収500万なら144万円)と社会保険料控除・基礎控除(48万円)を引いた課税所得を作り、そこに累進税率を掛けます。年収500万なら課税所得は236万円で、税率10%区分のため所得税は約14.1万円です。

給与所得控除って何?

会社員の経費の代わりに認められる控除です。領収書は不要で、収入に応じた速算表(例:年収500万は「収入×20%+44万円」=144万円)で自動決まります。これを引いた残りが給与所得になります。

復興特別所得税とは?

東日本大震災からの復興財源として、所得税額に2.1%を上乗せしたものです(令和19年度末までの時限措置)。年収500万なら所得税138,500円に2.1%を掛けて約2,900円増え、合算で約14.1万円になります。

年収が上がると手取りはどれくらい増える?

累進課税なので、増えた分にだけ高い税率が掛かります。年収500万→700万(+200万)の場合、手取りの増えは約147万円(実効税率約26%)です。ただし住民税や社会保険料も連動して増えるため、税込みの手取り率は年収が高いほど緩やかに下がります。

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