年金を繰上げるといくら減る? 60歳で受け取ると年額−24%(632,092円)・損益分岐は80.8歳——計算式と向き不向きを1円単位で

2026-08-28 | 年金繰上げ 老齢年金 繰上げ受給 公的年金 基礎年金 厚生年金 減額率 定年 老後資金 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「定年が60歳なのに、年金は65歳からしかもらえない。すぐに働けないなら、繰上げて60歳からもらったほうがいいのでは?」——公的年金の繰上げ受給は、そんな悩みに答える制度です。しかし繰上げには代償があります。受給を早めるぶん、年金額は生涯を通じて減額されたままになるのです。

結論を先に言うと、老齢基礎年金を1年(12か月)繰り上げると年額4.8%減、最大5年(60ヶ月)なら24%減です。満額(2025年度・年831,700円)の人が60歳から繰上げると、年額は632,092円(月52,674円)に下がり、65歳から本来の満額を受け取る人との生涯累計の差は数千万円規模に広がります。この記事では、なぜ減るのか・いくら減るのかを計算式の根拠から示し、受給開始年齢別の早見表、損益分岐の年齢、厚生年金の扱い、繰上げのメリット・デメリット、そして繰下げとの比較まで、1円単位で整理します。

📌 結論ファースト:繰上げは「月0.4%×繰上げ月数」の減額で一生続く。60歳スタート(60ヶ月繰上げ)なら−24%で年額632,092円(月52,674円)。65歳スタートの満額(年831,700円)との差は、80.8歳でやっと損益分岐します。つまり「長生きする自信があるなら繰上げは不利」がセオリーです。ただし、60歳時点で貯金が尽きそうなら「早く手元に入る」こと自体が価値になるケースもあります。

誰が読むべき記事か(検索意図)

この記事は次のような人に向けて書いています。

一方、厚生年金の「在職老齢年金」(65歳以降に給与をもらいながら年金をもらう制度)や、障害・遺族年金の話は別枠です。ここでは「老齢年金を65歳より早く受け取る」ことに絞って解説します。

繰上げの計算式と、その根拠

老齢年金の繰上げ受給は、国民年金法および厚生年金保険法で定められた減額率によって支給額が決まります。計算式は単純です。

繰上げ減額率 = 0.4% × 繰り上げた月数(老齢基礎年金・厚生年金の加算部分)

繰上げ後の年金年額 = 本来の年金年額 ×(1 − 減額率)

※厚生年金の報酬比例部分だけは 0.5% × 繰り上げ月数(上限 60ヶ月で 30%減)が適用されます(後述)。

ここで押さえておくべきは、この減額が「一生続く」という点です。繰上げは「65歳までは本来もらうはずだった分を前借りする」仕組みではなく、「受給開始を早めた分、その後の給付をずっと割り引く」のが制度の正体です。したがって、繰上げを選ぶと、60歳からもらい始めても、65歳以降もずっと減額された金額のままです。

🔎 なぜ「0.4%」なのか:繰上げの減額率は、本来の支給開始年齢(65歳)から前倒しするぶん、制度が「払い出し期間が長くなる分を差し引く」ように設定しています。月0.4%は「1年(12ヶ月)で4.8%」「5年(60ヶ月)で24%」という法定の一律ルールで、年齢や所得によらず誰でも同じ率が乗ります(特例繰上げの旧ルール=0.5%/月・最大25%減は、2019年改正で現在のルールに統一されました)。

受給開始年齢別の早見表(老齢基礎年金・満額ベース)

老齢基礎年金の満額は2025年度・年831,700円(月約69,308円)です。これを基準に、繰上げ月数ごとの年額・月額・本来額との差を計算します。

受給開始繰上げ月数減額率年額月額換算本来額との差(年)
60歳60ヶ月−24.0%632,092円52,674円−199,608円
61歳48ヶ月−19.2%672,014円56,001円−159,686円
62歳36ヶ月−14.4%711,935円59,328円−119,765円
63歳24ヶ月−9.6%751,857円62,655円−79,843円
64歳12ヶ月−4.8%791,778円65,982円−39,922円
65歳(本来)0ヶ月±0%831,700円69,308円0円

「1年早くもらうだけで年額4.8%減」は見た目以上に重いです。60歳から繰上げると、本来額との差は年約20万円。これが20年受給すれば約400万円、30年なら約600万円の累計差になります。

繰上げの「損益分岐」は何歳か(計算式つき)

「早くもらい始めるから、その分長くもらえる。結局トントンになるんじゃないか?」——この疑問に数字で答えます。

60歳から繰上げ(月52,674円)する人と、65歳から本来額(月69,308円)を受け取る人を比べます。

この2つの累計が等しくなる年齢(損益分岐点)は、次の式で求まります。

繰上げ者が65歳までに「前借り」する総額 = 52,674円 × 60ヶ月 = 3,160,440円

65歳以降の月差額 = 69,308 − 52,674 = 16,634円

分岐までの月数 = 3,160,440 ÷ 16,634 ≒ 190ヶ月 ≒ 15.8年

つまり 65歳 + 15.8年 = 80.8歳 で初めて累計が並びます。

🔎 読み方:80.8歳を超えて長生きすれば「繰上げして早くもらったほうが累計は多い」ように見えますが、これは「毎月少ない額を長くもらい続けた」結果にすぎません。平均余命(現在の日本人は80歳を超える水準)を考えれば、「繰上げ=生涯累計でマイナス」が標準的な結論です。繰上げを選ぶ合理的な理由は「長生きの損得」ではなく、次のセクションで述べる「目先の資金繰り」にあります。

厚生年金(会社員・公務員)の繰上げは「報酬比例」だけ率が違う

第2号被保険者(会社員・公務員)がもらう厚生年金には、「報酬比例部分」と「定額部分(加算)」の2つがあり、繰上げの減額率が異なります。

構成繰上げ減額率上限
老齢基礎年金(全国民共通)0.4% × 月数60ヶ月で24%減
厚生年金の「定額部分(加算)」0.4% × 月数60ヶ月で24%減
厚生年金の「報酬比例部分」0.5% × 月数60ヶ月で30%減

報酬比例部分だけ率が高い(0.5%/月)のは、この部分が「納付した保険料に連動する実力部分」とみなされるためです。具体的に、報酬比例部分が年120万円の人が60歳から繰上げした場合の年額は以下の通りです。

繰上げ減額率報酬比例(年額)
60ヶ月−30.0%840,000円
36ヶ月−18.0%984,000円
12ヶ月−6.0%1,128,000円
0ヶ月(本来)±0%1,200,000円

厚生年金の人は「基礎年金の減額(0.4%)+報酬比例の減額(0.5%)」が合算されるため、会社員のほうが繰上げによるマイナス額はさらに大きくなります。ただし報酬比例部分の絶対額が大きいので、毎月の手取り額そのものは基礎年金だけの人より高くなります。

繰上げのメリット(選ぶべきケース)

「一生減額される」と聞くと不利に思えますが、次のような場合は繰上げが現実的な選択になります。

  1. 60歳時点で貯金が尽きそう・収入がなくなる——65歳までの5年間を無収入で過ごせないなら、減額されても「早く手元に入るお金」自体が生存のための価値になります。
  2. 健康上、65歳まで働けない・働く気がない——再就職が難しい場合、繰上げで生きるための基盤を作る。
  3. 薄い年金を「少しでも早く」受け取りたい——年金額が小さければ、減額による生涯損失額も相対的に小さく、早くもらう心理的安心のほうが勝つことがあります。
  4. 就労と併用したい(在職老齢年金の前倒し)——65歳以降に給与をもらいながら年金をもらう「在職老齢年金」制度と組み合わせ、収入の谷間を埋めたい場合。
💡 「繰上げ=カネの前借り」と割り切るならあり:減額を「生涯の損」ではなく「60〜64歳の生活費のための前借り」と位置づけ、65歳以降の生活を圧迫しない範囲で使うなら、繰上げは立派な選択肢です。問題は「なんとなく早くもらおう」として、後で「こんなに減るとは」と後悔することです。

繰上げのデメリット(知っておくべき落とし穴)

  1. 減額が一生続く——既に述べた通り、繰上げた年金額は死ぬまで戻りません(物価スライドは受けますが、増額率はない)。
  2. 「加給年金(振替加算)」が消えることがある——老齢基礎年金には、扶養されている配偶者等がいる場合に上乗せされる「加給年金(振替加算)」があります。しかし繰上げて65歳前から受給すると、本来なら65歳から加算されるはずの分が実質的に受け取れなくなる(加算は「本来の支給開始年齢以降」に発生するため)。詳細は加給年金・振替加算の記事で確認できます。
  3. 遺族基礎年金への影響——夫が繰上げた場合、その減額された額が「夫の老齢基礎年金」に紐づくため、夫の死後に妻が受ける遺族基礎年金の算定基礎にも減額が反映されることがあります。
  4. 一度選ぶと原則変更不可——繰上げ受給の開始を決めると、後から「やっぱり65歳からにして減額を回避したい」とは原則できません(後から繰下げに変更ということはできない)。
  5. 厚生年金の「在職老齢年金」との絡み——65歳以降に給与をもらいながら年金を受ける場合、繰上げで減額されたベース額に対して在職老齢年金の調整がかかるため、働く人によってはさらに複雑になります。
⚠️ 物価スライドは「減額率」を上書きしない:繰上げでマイナスされた額に対して、毎年の物価・賃金改定(マクロ経済スライド含む)は適用されます。つまり「減額されたベース」が物価に連動して動くだけで、0.4%×月数の減額そのものが元に戻ることはありません。

繰上げ vs 繰下げ——損得の構造はまったく逆

同じ「受給開始年齢をずらす」でも、繰上げは「減額・一生」なのに対し、繰下げは「増額・一生」です。この非対称性を理解すると、戦略が見えます。

比較項目繰上げ(60歳等)繰下げ(70歳等)
基本の仕組み早くもらう → 減額遅くもらう → 増額
老齢基礎年金の率0.4% × 月数(最大24%減)0.7% × 月数(最大42%増・70歳)
受給期間長い(早く始まる)短い(遅く始まる)
生涯累計の傾向標準寿命ならマイナス長生きならプラス・元本回収早い
向いている人60〜64歳に収入がない人健康で長生きでき、65歳以降も働ける人
デメリット加給年金消滅・遺族への影響10年間受け取れない期間の資金

結論として、「働けるなら繰下げ、働けないなら(やむを得ず)繰上げ」が基本的なセオリーです。詳しい繰下げの増額計算は年金を繰下げると毎月いくら増えるかの記事で確認できます。

💡 「繰上げと繰下げをミックス」はできない:同じ年金について、一部を繰上げ・一部を繰下げという使い分けはできません。受給開始年齢は原則ひとつに決めます(夫婦で「妻は繰上げ・夫は繰下げ」と分けるのは可能です)。

誰に向いている? 向かない?

向いている(繰上げを選ぶべき)

向かない(繰上げを避けるべき)

年金繰上げシミュレーター(減額額・損益分岐)

※老齢基礎年金等は 月0.4%×繰上げ月数、厚生年金の報酬比例部分は 月0.5%×繰上げ月数(上限60ヶ月で30%減)で計算した目安です。損益分岐は「受給開始年齢から本来の満額(入力年額)を受け取る人」との累計が並ぶ年齢です。計算はブラウザ内で完結し、入力は送信されません。

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いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

結論

年金の繰上げ受給は、「月0.4%×繰上げ月数」の減額が一生続く代償と引き換えに、60歳からお金を手元に置ける制度です。60歳スタートなら−24%で年額632,092円(月52,674円)、満額(年831,700円)との生涯累計の差は80.8歳でやっと損益分岐するため、標準的な寿命なら「繰上げ=生涯マイナス」が結論です。厚生年金の人は報酬比例部分が0.5%/月(最大30%減)になるため、マイナス幅はさらに大きくなります。

それでも繰上げを選ぶべきは、「60〜64歳の5年間を無収入で過ごせない」という資金繰りの理由があるときだけです。逆に、65歳以降も働ける健康な人は、繰下げ(0.7%/月・増額)を選ぶほうが生涯累計で圧倒的に有利です。加給年金の消滅や遺族への影響といった「見えない減額」もあるため、「なんとなく早くもらおう」は禁物。減額の仕組みを理解したうえで、自分の健康・貯金・働く見込みと照らし合わせて判断してください。

注意事項

本記事の数値は、老齢基礎年金の満額 年831,700円(2025年度)、繰上げ減額率 月0.4%(老齢基礎年金・厚生年金の定額部分)・厚生年金報酬比例部分 月0.5%(上限 60ヶ月で30%減)という現行制度に基づく単純計算です。損益分岐(80.8歳)は「60歳から月52,674円」と「65歳から月69,308円」の累計が等しくなる年齢を、1円単位で割り出した目安です(月額は年額÷12の端数処理のため、実際の支給は円未満切捨てで若干異なります)。繰上げの減額率・上限・加給年金(振替加算)の取扱い・遺族基礎年金への影響・在職老齢年金との絡みは、制度改正や個別の年金記録(納付月数・被保険者期間・配偶者の生年月日等)によって変わります。特に「加給年金が消える」ケースや「一度決めた繰上げの変更が原則不可」という点は、ご本人の状況で異なるため、必ず日本年金機構「ねんきんネット」または最寄りの年金事務所・市区町村窓口でご確認ください(外部リンクは情報提供のみ。当サイトは一切の送信を行いません)。税務の取扱いは税理士等にご相談ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の年金・税務相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

年金を繰上げるといくら減りますか?

老齢基礎年金等は「月0.4%×繰り上げた月数」の減額になります。1年(12ヶ月)繰上げで4.8%減、最大5年(60ヶ月)の60歳繰上げで24%減です。満額(2025年度・年831,700円)なら、60歳から繰上げると年額632,092円(月52,674円)に下がります。厚生年金の報酬比例部分は率が高く「月0.5%×月数」(上限30%減)が乗るため、会社員の減額幅はさらに大きくなります。

なぜ繰上げると減るのですか?

繰上げは「65歳まで本来もらうはずだった分を前借りする」仕組みではなく、「受給開始を早めた分、その後の給付をずっと割り引く」のが制度の正体だからです。減額率は月0.4%(基礎年金等)・月0.5%(厚生年金報酬比例)と法定で一律に決まっており、この減額は死ぬまで元に戻りません。

繰上げと繰下げ、どちらが得ですか?

構造が逆です。繰上げは「減額・一生」、繰下げは「増額・一生(0.7%/月、最大42%増)」です。標準的な寿命なら、繰上げは生涯累計でマイナス、繰下げは長生きするほどプラスになります。基本は「働けるなら繰下げ、働けないならやむを得ず繰上げ」です。

繰上げの損益分岐は何歳ですか?

60歳から繰上げ(月52,674円)する人と65歳から本来額(月69,308円)を受け取る人を比べると、累計が等しくなるのは約80.8歳です。つまり平均寿命近辺まで生きてようやくトントンになり、それ以下なら繰上げのほうが生涯累計は少なくなります。

繰上げすると加給年金は消えますか?

消えやすくなります。老齢基礎年金の「加給年金(振替加算)」は、本来の支給開始年齢(65歳)以降に発生する上乗せです。65歳前から繰上げると、その加算分を実質的に受け取れなくなることがあります。配偶者がいる方は、繰上げの前に加給年金の扱いを年金事務所で確認してください。

繰上げを一度決めたら変更できますか?

原則できません。繰上げ受給の開始を決めると、後から「やっぱり65歳からにして減額を回避したい」という変更はできません。逆に、繰下げを途中でやめて通常の65歳受給に戻すといった柔軟な変更も限定的です。減額の仕組みを理解したうえで慎重に選んでください。

厚生年金(会社員)の繰上げは基礎年金と違いますか?

報酬比例部分の率が違います。老齢基礎年金と厚生年金の定額部分(加算)は月0.4%×月数ですが、厚生年金の報酬比例部分だけ月0.5%×月数(上限60ヶ月で30%減)が適用されます。そのため会社員は、基礎年金の減額(0.4%)と報酬比例の減額(0.5%)が合算され、繰上げによるマイナス額がより大きくなります。

いつから繰上げの申し出ができますか?

原則、60歳の誕生月の前月から、老齢年金の繰上げ受給の請求ができます(60歳到達時点で被保険者期間等の要件を満たすことが前提)。繰上げは最大で65歳の5年前(60歳)まで前倒し可能です。手続きや必要書類、ご自身の見込額は日本年金機構「ねんきんネット」または最寄りの年金事務所・市区町村窓口でご確認ください。

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