給与から毎月引かれる所得税(源泉徴収)はいくら? 年収480万円なら月約10,600円——計算の根拠(給与所得控除→社会保険料→基礎控除→速算表)とボーナス・住民税との違い
「毎月の給料明細を見ると『所得税』が引かれているけれど、この金額はどうやって決まっているの? なぜ隣の人と違うの?」——この疑問は会社員なら誰もが一度は抱きます。ネットで検索すると「年末調整のしくみ」ばかりが出てきて、「自分の給与から毎月いくらの所得税が天引き(源泉徴収)されているか」を数式で示したページは意外に少ないものです。
この記事では、毎月の給料から引かれる所得税(正確には「源泉徴収される所得税」)を年収と家族構成から1円単位で計算する手順を、具体例(年収480万円・独身・会社員)で順に追います。さらに、「なぜ年末の賞与(ボーナス)で急に天引き額が跳ね上がるのか」「住民税との違い」「源泉徴収票との照合方法」という、多くの解説が見落としている実用ポイントも数値で示します。
そもそも「毎月引かれている所得税」とは何か
会社員の給与から毎月引かれている「所得税」は、正式には「源泉徴収される所得税」です。会社が給与を支払うときに、あらかじめ税額を計算して天引きし、後日まとめて税務署に納める仕組みです。年末調整は、この「1年間に引かれた所得税の過不足を調整する作業」にすぎません。
つまり、毎月の明細に書かれている所得税の額こそが、その人の税負担の実態に最も近い数字です。これを自分で計算できれば、「思ったより引かれている」「隣の人と違うのはなぜか」が納得できます。
計算式の根拠——給与から所得税額までの4ステップ
毎月の所得税は、次の順で求めます。
毎月の所得税 = (年間の所得税額 ÷ 12)概算
ただし「年間の所得税額」は、給与を税額計算のベースまで削ってから速算表を当てはめて出します。ステップは次の通りです。
| ステップ | 内容 | 数式 |
|---|---|---|
| ① 給与所得控除 | 年収から「経費相当額」を引く | 控除額 = 年収×20%+44万円(360万〜660万区分)等 |
| ② 社会保険料 | 健保・厚年・雇保・介護の合算(概算) | 目安:年収の約14.5%(協会けんぽ・独身・40歳未満) |
| ③ 基礎控除 | 一律の控除 | 48万円 |
| ④ 所得税(速算表) | 課税所得 × 税率 − 控除額 | 195万以下5%/195万超10%/330万超20%… |
この④で出た「年間の所得税本則額」に、復興特別所得税(2.1%)を上乗せしたものが、1年間に引かれる所得税の総額です。それを12で割ると、毎月の天引き額の目安になります。
具体例:年収480万円・独身・会社員なら毎月約10,600円
会社員・独身・協会けんぽ加入・40歳未満(介護保険料なし)を前提に、年収500万円の手取りを1円単位で分解した記事と同じロジックで計算します。
- ① 給与所得控除:4,800,000×20%+440,000=960,000+440,000=1,400,000円 → 給与所得 3,400,000円
- ② 社会保険料(概算14.5%):4,800,000×0.145=約696,000円
- ③ 基礎控除:480,000円
- ④ 課税所得(所得税側)= 3,400,000 − 696,000 − 480,000 = 2,224,000円(195万超〜330万以下 → 所得税10%区分)
課税所得222.4万円は「195万円超 〜 330万円以下」の区分(税率10%、控除額97,500円)に入ります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 所得税(本則) | 2,224,000×10% − 97,500 | 124,900円 |
| 復興特別所得税 | 124,900×2.1% | 約2,623円 |
| 所得税 年額合算 | 124,900 + 2,623 | 127,523円 |
| 毎月の天引き額(÷12) | 127,523 ÷ 12 | 約10,627円 |
つまり年収480万円の会社員が、毎月の給料から天引きされている所得税は年額約127,500円・月額約10,600円です(1円単位では年額127,523円・月額10,627円)。会社が毎月「概算」で天引きしているため、実際の明細は数百円単位で前後することがありますが、おおむねこの枠内です。
月々の額が「そのまま12倍」にならない理由
上の計算は「年間の税額を12で割った概算」です。実際の会社の源泉徴収は、次の2つの理由で端数が生じます。
- 月によって日数や給与が違う。年度途中の入社・昇給・残業の変動があると、毎月の税額は都度再計算されます。
- ボーナス(賞与)は別計算。賞与には「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」という別の速算表が使われ、通常の月給より高い率で引かれます(後述)。
そのため、明細の所得税欄を見て「先月と数十円違う」のは正常な動きです。12ヶ月の合計が、おおむね年額127,500円前後になっていれば計算通りです。
なぜボーナス月は所得税が急に増えるのか
多くの人が「ボーナスをもらった月の給料明細を見て、所得税が普段の2倍・3倍になっていて驚く」のは、賞与には通常の月給とは別の税率表が使われるからです。
通常の月給は「課税所得ベース × 月割り」ですが、賞与は「賞与 ÷ 12 + その人の Bene の月額」をもとに、別の速算表で一括計算されます。結果として、同じ額の収入でも賞与のほうが税額が高くなりがちです。これは「賞与は臨時的な所得だから、まとめて高く取る」という制度上の仕組みです。
住民税との違い——なぜ「引かれる税」が2種類あるのか
給料明細には「所得税」のほかに「住民税」も載っています。混同しやすいので違いを整理します。
| 項目 | 所得税(源泉徴収) | 住民税 |
|---|---|---|
| 徴収する主体 | 国(税務署) | 都道府県・市区町村 |
| 計算のベース | その年の給与 | 前年の所得(1年遅れ) |
| 明細への反映 | 毎月の給料から天引き | 毎月の給料から天引き(6月〜翌5月) |
| 変動のタイミング | 昇給・賞与ですぐ変わる | 前年所得ベースのため1年遅れ |
「今年昇給したのに、手取りの伸びが予想より小さい」のは、所得税はすぐ増えるが、住民税は前年所得ベースで据え置かれるためです(住民税の計算方法を1円単位で解説した記事も参照)。逆に「今年給料が下がったのに住民税はそのまま」なのも同じ理由です。
源泉徴収票で自分の数字と照合する
計算した金額が合っているかは、毎年11月〜12月に渡される「給与所得の源泉徴収票」で確認できます。確認すべき欄は次の2つです。
- 「給与所得控除後の給与等の金額」:上の①の結果(年収480万円なら給与所得340万円)と一致するか。
- 「源泉徴収税額(所得税):1年間に引かれた所得税の合計。上の年額127,523円前後になっていれば計算通りです。
もし大きくズレていたら、ふるさと納税のワンストップ特例や医療費控除など、年末調整で控除が増えた分が反映されている可能性があります(ふるさと納税の上限と控除の記事参照)。
ここが誤解の多いポイント——5つまとめる
- 「毎月の所得税」はあくまで概算。年間の税額を12で割ったもので、月ごとに数十円〜数百円の変動は正常です。
- 復興特別所得税(2.1%)も乗っている。明細の「所得税」欄には、本則額に2.1%が上乗せされた額が表示されます。本則だけを見て「多い」と感じるのはこの分です。
- 家族構成で大きく変わる。配偶者控除(38万円)や扶養控除(1人63万円等)を足すと課税所得が下がり、毎月の天引き額も下がります(配偶者控除で手取りがいくら増えるかの記事参照)。
- 年末調整は「調整」であって「新たな税」ではない。1年間に引かれた所得税の過不足を整えるだけです。還付(戻り)が出る年もあります。
- パート・アルバイトは「源泉徴収票」が出ない場合がある。給与支払報告書等で確認します。年収103万円(所得税の非課税枠)以下なら、そもそも所得税は引かれません(年収の壁を手取りの逆転額で比べた記事参照)。
自分の年収で試すなら
上の計算はすべて 手取り計算ツール と同じロジック(給与所得控除・社会保険料約14.5%・基礎控除・所得税の速算表・復興特別所得税)に基づいています。ツールに年収を入れ、出てきた「所得税」の年額を12で割れば、自分の毎月の天引き額の目安が即座に出ます(計算はブラウザ内で完結し、入力は送信されません)。
各ステップの詳細は以下の記事で確認できます。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
- 給与所得控除の速算表と計算式——①の「経費相当額」の出し方。
- 所得税の計算方法を1円単位で解説——④の速算表と累進税率。
- 住民税の計算方法——前年所得ベースの罠。
- 年収500万円の手取りを1円単位で分解——各ステップの具体例。
- 配偶者控除で手取りがいくら増えるか——③以降の控除の効き方。
- 手取り計算ツール——控除前後の手取りと税額を即座に比べる。
注意事項
本記事の数値は、会社員・協会けんぽ加入・独身・40歳未満(介護保険料なし)・賞与込み年収480万円を前提とした概算です。実際の毎月の天引き額は、健康保険の加入先(協会けんぽ/組合健保)、居住自治体、扶養親族の有無、40歳以上の介護保険料、その他の控除(配偶者控除・扶養控除・医療費控除・ふるさと納税等)の適用、および給与の変動によって数万円単位で変わります。また社会保険料率や所得税の速算表は年度で見直されることがあり、復興特別所得税の税率(2.1%)も将来の法改正で変わる可能性があります。正確な金額と徴収時期は、源泉徴収票・住民税決定通知書・お住まいの自治体、および国税庁の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務・家計相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
給与から毎月引かれている所得税はどうやって決まりますか?
会社が給与を支払うときに、その人の年収と家族構成から「1年間の所得税額」を概算し、それを12で割った額を毎月天引き(源泉徴収)しています。核心は「給与所得控除→社会保険料→基礎控除を引いた課税所得」に、所得税の速算表(累進税率)を当てはめること。さらに復興特別所得税(2.1%)が上乗せされます。年収480万円・独身・会社員なら、年額約127,500円・月額約10,600円が目安です。
なぜボーナス月は所得税が急に増えるのですか?
賞与(ボーナス)には、通常の月給とは別の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」という速算表が使われ、通常の月給より高い率で引かれるためです。制度上、臨時的な所得はまとめて高く取る仕組みになっています。ただし年末調整で1年間の正しい税額と比べて過不足が調整されるため、ボーナス月に多く引かれても必ずしも損にはなりません。
毎月の所得税と住民税の違いは何ですか?
所得税は国が徴収し、その年の給与をベースに毎月の給料から天引きされます。住民税は都道府県・市区町村が徴収し、前年の所得をベースにしているため1年遅れて毎月の給料から天引きされます。そのため「今年昇給したのに手取りの伸びが小さい」のは、所得税はすぐ増えるが住民税は前年据え置きだからです。
源泉徴収票で自分の数字を確認するには?
毎年11月〜12月に渡される「給与所得の源泉徴収票」の「給与所得控除後の給与等の金額」(年収480万円なら給与所得340万円)と「源泉徴収税額(所得税)」(年額127,500円前後)の2欄を確認します。大きくズレていたら、ふるさと納税のワンストップ特例や医療費控除など、年末調整で控除が増えた分が反映されている可能性があります。
扶養に入っているパートの妻の所得税はどうなりますか?
給与収入が年間103万円(所得税の非課税枠)以下なら、そもそも所得税は引かれません。年収の壁(103万・106万・130万・150万)を超えると社会保険料や配偶者控除の減額で世帯手取りが逆転することがあるため、壁の手前か超えたかで天引き額が大きく変わります。
年末調整で戻ってくるのはなぜですか?
毎月の源泉徴収は「概算」のため、1年間の正しい税額と比べて多めに引かれていることがあります。年末調整はその過不足を整える作業で、控除が増えた分などは還付(戻り)として調整されます。年末調整自体が新たな税を作るわけではありません。