不動産所得(賃貸アパート・貸家)の税金の計算——家賃収入から経費・減価償却を引いて所得を出し、所得税・住民税・事業税を計算(赤字なら給与と相殺・具体数値例)

2026-08-28 | 不動産所得 税金 確定申告 減価償却 事業税 アパート経営 賃貸 青色申告 個人事業主 計算

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「実家の空き家を賃貸に出した」「小規模アパートを建てて不動産投資を始めた」——そうなると必ずやってくるのが「不動産所得の確定申告」です。「家賃収入から何を引けばいいの? ローンの支払いは全部経費になるの? いくら税金を取られるの?」という疑問。ところがネットで検索すると「不動産所得は給与と合算」という一言だけが多く、「実際にいくら所得になって、いくら税額が増えるか」を数式で示した長文ページは意外に少ないものです。

この記事では、賃貸アパート・貸家のオーナー(会社員が副業的に行うケースを含む)を想定して、家賃収入から経費・減価償却を引いて不動産所得を出し、そこから所得税・住民税・事業税を計算する根拠を、具体例(木造アパートの「赤字」パターン/RCマンションの「黒字」パターン)で1円単位に追います。さらに、「ローンの元本返済は経費にならない」「減価償却は建物だけ(土地はダメ)」「赤字なら本業の給与と相殺できる」「個人事業税の基礎控除290万円」という、多くの解説が見落としがちな実用ポイントも数値で示します。

📌 結論ファースト:不動産所得の金額は 「家賃収入 − 必要経費(修繕・管理・保険・固定資産税・借入金の利息)− 減価償却費(建物・設備)− 青色申告特別控除(55万円)」 です。木造アパート(家賃年300万・経費100万・建物2,000万/耐用22年・ローン利息60万)なら、計算すると約▲5.9万円の赤字になり、この赤字分は本業の給与所得と相殺できます(損益通算)。一方RCマンション(家賃年600万・経費200万・建物5,000万/耐用47年・ローン利息120万)なら約119万円の黒字になり、本業年収500万円の人なら合算して税額が年間約24万円増える目安です。また不動産所得は「総合課税」で給与と合算され、さらに個人事業税(基礎控除290万円を超えると標準税率約5%)の対象にもなります。

誰が検索しているか(検索意図)

この記事は、次のような状況にある方を想定して書いています。

よくある誤解は3つです。①「ローンの月々の支払い(元本+利息)は全部経費」——実際は利息の部分だけが経費で、元本返済は経費になりません。②「土地も建物も償却する」——土地は減価償却の対象外です。③「赤字なら税金が取られるだけ」——不動産所得の赤字は、原則として本業の給与所得と相殺(損益通算)でき、所得税・住民税が下がります。順に計算の根拠から確認します。

計算式の根拠——不動産所得は「収入−経費−償却−青色控除」

不動産の貸付け(貸家・アパート・マンション・貸店舗など)で得た所得は、「不動産所得」という種類の所得になります。給与所得や事業所得とは別枠で計算したうえで、最後に所得税・住民税は「総合課税」として他の所得と合算して税率が決まります(事業税は別途)。手順は次の通りです。

不動産所得の金額 = 家賃収入(収入金額) − 必要経費 − 減価償却費(建物・設備) − 青色申告特別控除

ステップ内容数式(概算)
① 家賃収入賃貸料・共益費等の総額例:年300万円
② 必要経費修繕費・管理委託料・保険料・固定資産税・借入金の利息 など例:100万円(うちローン利息60万)
③ 減価償却費建物・設備の取得価格を耐用年数で割る(定額法)例:建物2,000万÷22年 ≒ 91万円
④ 青色申告特別控除青色申告をした場合(e-Tax等なら65万、紙なら55万)55万円(本記事は55万で計算)
⑤ 不動産所得①−②−③−④上記例なら 約▲5.9万円(赤字)
⑥ 税額不動産所得を給与所得等と合算→所得税(累進)+復興特別所得税2.1%+住民税+事業税黒字時に増税効果

減価償却費(定額法)の出し方は、建物(と設備)の取得価格を「耐用年数」で割ったものです。土地は減価償却の対象にならないので、取得価格から土地部分を除いた建物部分だけを償却します。耐用年数の目安は次の通りです(構造で異なります)。

構造耐用年数建物1,000万円の年償却額(定額法)
木造22年約45.5万円(1,000万÷22)
軽量鉄骨造19年約52.6万円
鉄筋コンクリート造(RC)47年約21.3万円
鉄骨造(重量)34年約29.4万円

※上は「定額法(1÷耐用年数)」の基本計算式です。実務では「簡便法(償却率表)」を用いることも多く、その場合の年償却額は耐用年数ごとの償却率(例:木造22年の簡便法償却率は約0.136)を掛けて求めます。どちらの方法を使うかは初年度に選択し、原則としてその後は変更できません。詳細は国税庁の「減価償却資産の耐用年数について」等で確認してください。

具体例①:木造アパート(家賃年300万)は「約▲5.9万円の赤字」——赤字は給与と相殺できる

会社員が副業的に木造アパート(2室程度)を経営し、年間家賃収入300万円の場合を計算します。建物取得価格2,000万円(土地3,000万円は償却対象外)、木造(耐用年数22年)、借入4,000万円(年利1.5%・年間利息約60万円)、管理・修繕・保険・固定資産税等の経費100万円、青色申告特別控除55万円とします。

項目計算金額
家賃収入—3,000,000円
必要経費(管理・修繕・保険・固都税 等)—−1,000,000円
減価償却費建物2,000万円 ÷ 22年−909,091円
借入金の利息4,000万円×年利1.5%(元本返済は除く)−600,000円
青色申告特別控除—−550,000円
不動産所得の金額3,000,000−1,000,000−909,091−600,000−550,000約 −59,091円(赤字)

このように、小規模な木造アパートでは初年度〜数年は「赤字(▲約5.9万円)」になることが珍しくありません。理由は、減価償却費(年約91万円)とローン利息(年60万円)が大きく、家賃収入を上回るからです(ローンの「元本返済」は経費にならないので入りません)。

そしてこの赤字約5.9万円は、本業の給与所得と相殺(損益通算)できます。例えば本業で所得税10%区分に乗っている会社員なら、所得が5.9万円減ることで所得税が約5,900円、住民税が約5,900円(所得割10%)下がり、合わせて年間約1.2万円の税額減になります(概算)。つまり「不動産で赤字=すぐ損」ではなく、本業の税負担を減らす効果があります(ただしサラリーマンで給与所得と不動産所得の両方がある場合の損益通算には一定の要件があり、また給与所得だけでは控除しきれない赤字は翌年以降に繰り越せる場合があります)。

具体例②:RCマンション(家賃年600万)は「約119万円の黒字」——合算で税額が年間約24万円増

次に、規模の大きい鉄筋コンクリート(RC)マンションで、年間家賃収入600万円の場合を計算します。建物取得価格5,000万円(土地は別)、RC(耐用年数47年)、借入利息年120万円、経費200万円、青色申告特別控除55万円とします。

項目計算金額
家賃収入—6,000,000円
必要経費(管理・修繕・保険・固都税 等)—−2,000,000円
減価償却費建物5,000万円 ÷ 47年−1,063,830円
借入金の利息—−1,200,000円
青色申告特別控除—−550,000円
不動産所得の金額6,000,000−2,000,000−1,063,830−1,200,000−550,000約 1,186,170円(黒字)

黒字の場合、この約119万円が本業の給与所得と合算されて課税されます。会社員・独身・本業年収500万円(給与所得356万・社会保険料約14.5%・基礎控除48万)のモデルで、この不動産所得を足したときの税額増を概算します(所得税の税率(累進課税)と速算表と同じロジック)。

つまり不動産所得の黒字約119万円のうち、約2割が税金になり、手取り増は約95万円になります。なおこの規模(不動産所得119万円)では、個人事業税の基礎控除(不動産貸付業 290万円)以下なので、事業税は0円です。事業税がかかるのは、より大きな不動産所得になってからです(後述)。

ここが誤解の多いポイント——6つまとめる

  1. ローンの「元本返済」は経費にならない。毎月のローン支払いのうち、利息の部分だけが必要経費です。元本を返す分は「資産を取得・返済した」にすぎず、所得を減らす経費にはなりません。これを誤ると「支払い全部引ける」と思って所得を過小に計算してしまいます。
  2. 減価償却は「建物・設備」だけ。土地は対象外。建物と土地をセットで買った場合、取得価格を「建物按分額」と「土地按分額」に分け、償却するのは建物按分額だけです。土地は劣化しない(税法上)と考えられるためです。
  3. 不動産所得は「総合課税」で給与と合算される。会社員が不動産を貸して得た所得は、本業の給与所得と合わせて1つの課税所得になり、累進税率が決まります(分離課税にはなりません)。
  4. 赤字なら本業の給与と相殺できる(損益通算)。例①のように不動産所得がマイナスなら、原則として給与所得から差し引け、所得税・住民税が下がります。給与所得だけでは吸いきれない赤字は、条件を満たせば翌年以降に繰り越せる場合があります。
  5. 個人事業税(事業税)の対象になる。不動産貸付業は「事業」とみなされ、個人事業税がかかります。基礎控除(不動産貸付業は290万円)を超える不動産所得に対し、標準税率(不動産貸付業は約5%/都道府県により異なる)で課税されます。例②(119万円)のように基礎控除以下なら0円ですが、より大きな規模では着実に増えます。
  6. 青色申告をすると特別控除が受けられる。不動産所得でも青色申告の承認を受けると、青色申告特別控除(紙は55万円・e-Tax等は65万円)がさらに引けます。帳簿・証憑をきちんとつける手間は増えますが、所得をその分減らせます(例では55万円引いています)。

自分の数字で試すなら

上の計算はすべて、家賃収入・経費・建物価格・耐用年数・ローン利息から不動産所得を出し、さらに手取り計算ツールと同じロジック(給与所得控除・社会保険料約14.5%・基礎控除・所得税の速算表・復興特別所得税2.1%・住民税)で合算税額を出すものです。本業の年収を入れて出た税額に、不動産所得を上で示した実効税率(約20%前後)で目安を出すか、確定申告シミュレーション系のツールで本業+不動産を合算入力して比べると、ご自身の「手取り増・税額増」が即座に出ます(計算はブラウザ内で完結し、入力は送信されません)。

各ステップの詳細は以下の記事で確認できます。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、会社員・協会けんぽ加入・独身(配偶者控除なし)・40歳未満(介護保険料なし)・本業年収500万円・木造/RCのモデル建物・定額法による償却・青色申告特別控除55万円を前提とした概算です。実際の税金は、次の点で数万円〜数十万円単位で変わります。①償却方法(定額法か簡便法か、償却率が異なる)と耐用年数(築年や構造で変わる)。②建物按分と土地按分の割合(取得時の割合により償却対象額が変わる)。③ローン条件(金利・期間により年間利息が変動)。④青色申告特別控除(e-Tax等なら65万円)。⑤個人事業税の基礎控除額と標準税率(都道府県で異なる;不動産貸付業の基礎控除は290万円、標準税率はおおむね5%前後)。⑥扶養親族の有無、40歳以上の介護保険料、居住自治体の住民税(税率・均等割・調整控除は自治体で異なる)。また、不動産所得と給与所得の損益通算には「サラリーマンで不動産所得がある場合」などの要件があり、すべてのケースで無条件に相殺できるわけではありません。減価償却資産の耐用年数や償却方法、事業税の税率、青色申告の要件等は税制改正で見直されることがあります。正確な金額は、契約書・収支内訳書・お住まいの自治体、および国税庁の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務・不動産相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

不動産所得の計算方法を教えてください。

不動産所得の金額は「家賃収入 − 必要経費(修繕費・管理委託料・保険料・固定資産税・借入金の利息 など)− 減価償却費(建物・設備)− 青色申告特別控除(55万円/e-Tax等は65万円)」で出します。例えば木造アパートで家賃年300万・経費100万・建物2,000万(耐用22年で年償却約91万)・ローン利息60万・青色控除55万なら、約▲5.9万円の赤字になります。RCマンションで家賃年600万・経費200万・建物5,000万(耐用47年で年償却約106万)・ローン利息120万・青色控除55万なら、約119万円の黒字になります。

ローンの元本返済は経費になりますか?

なりません。毎月のローン支払いのうち、経費になるのは「利息」の部分だけです。元本を返す分は資産の返済であり、所得を減らす経費にはなりません。したがって減価償却費とローン利息の合計が大きい初年度〜数年は、小規模なアパートでは赤字になりやすい傾向があります。

減価償却って何ですか? 土地も対象ですか?

建物や設備が年々価値を減らす分を、費用として少しずつ経費にする仕組みです(定額法なら「取得価格÷耐用年数」が年の償却額)。ただし「土地」は減価償却の対象外なので、建物と土地をセットで買った場合は「建物按分額」だけを償却します。木造は耐用年数22年、鉄筋コンクリート造(RC)は47年など、構造で年数が決まっています。

不動産所得が赤字の場合はどうなりますか?

原則として、本業の給与所得などと相殺(損益通算)でき、所得税・住民税が下がります。例えば不動産で約5.9万円の赤字なら、所得税10%区分の人は年間約1.2万円の税額減になる目安です。給与所得だけでは吸いきれない赤字は、条件を満たせば翌年以降に繰り越せる場合があります(サラリーマンで不動産所得がある場合の損益通算には一定の要件があります)。

個人事業税(事業税)はかかりますか?

かかります。不動産の貸付けは「事業」とみなされ、不動産所得に対して個人事業税が課されます。ただし「基礎控除」(不動産貸付業は290万円)を超える所得分だけが対象で、標準税率(不動産貸付業はおおむね5%前後/都道府県により異なる)で計算されます。不動産所得が119万円程度の場合は基礎控除以下なので事業税は0円ですが、規模が大きくなると着実に増えます。

青色申告特別控除とは何ですか?

不動産所得でも青色申告の承認を受けて帳簿を備え付けると、所得からさらに「青色申告特別控除」を引けます。紙の青色申告は55万円、e-Tax等で提出する場合は65万円です。本記事の計算では55万円で示しています。帳簿つけの手間は増えますが、その分だけ所得(=税額)を減らせます。

会社員のまま不動産を貸すと、給与と合算されますか?

はい。不動産所得は「総合課税」といって、本業の給与所得と合わせて1つの課税所得になり、累進税率が決まります(分離課税にはなりません)。つまり不動産で黒字なら本業側の高い税率のステップに乗り、税額が増えます。逆に赤字なら給与と相殺できます(要件あり)。

[ 広告枠 / Google AdSense ]

‹ ブログ一覧へ