退職後の健康保険、どれを選ぶ? 任意継続・国保・扶養の保険料を計算して損得分岐点を比べる(年収500万なら国保が年約18万円安い根拠)
「会社を辞める(退職・独立・リストラ)。健康保険はどうすればいい? そのまま前の保険に残る『任意継続』って安いの? それとも国保(国民健康保険)の方がいいの? 家族の扶養に入れるなら?」——誰もが一度は直面するこの迷い、ネットで「退職 健康保険 どっち」と調べると「3つの選択肢があります」までは出てきますが、「自分の年収なら実際にいくらかかるのか」「任意継続と国保、どちらが安いのかを具体的な計算で比べた記事」「扶養に入れるなら0円で最強なのか」を、計算式と数値例で示したページは意外と少ないものです。
この記事では、退職時に迷う「任意継続・国保・扶養」の3択を取り上げます。計算式の根拠 「任意継続=標準報酬月額×保険料率(全額自己負担)」「国保=所得割+均等割」 から出発し、年収500万円(所得300万円)を例に、3つの選択肢の年間保険料を計算・比較します。さらに損得分岐点とよくある落とし穴(130万円の壁・2年上限)を整理します。自分の数字を当てはめたい場合は 健康保険料(協会けんぽ)の計算記事 や 手取り計算ツール で確認できます。
ステップ1:退職時の健康保険、3つの選択肢
会社員(健康保険の被保険者)を退職すると、その日をもって会社の健康保険の資格を失います。その後、自分で次のいずれかの保険に加入し直す必要があります。
| 選択肢 | 内容 | 保険料の目安 |
|---|---|---|
| ①任意継続被保険者 | 退職後も前の健康保険(協会けんぽ・組合健保等)にそのまま残れる。最長2年(一部3年) | 標準報酬月額×保険料率(全額自己負担)で在職時の約2倍 |
| ②国民健康保険(国保) | 住所地の市区町村が運営。フリーランス・無職が対象 | 所得割(所得×約7%)+均等割(1人年約4〜5万) |
| ③家族の扶養 | 配偶者や親の健康保険の被扶養者になる(収入要件あり) | 0円(自分の収入130万未満等) |
迷ったときの基本方針は 「扶養に入れそうなら扶養 → 入れないなら国保と任意継続を比較」 です。それぞれの計算式を確認しましょう。
ステップ2:任意継続の計算式(在職時の約2倍になる根拠)
任意継続は、退職前の 標準報酬月額 をそのまま使って、保険料率を掛け、全額を自分で負担します(在職中は会社と折半=半額でした)。
任意継続の月額保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率(介護分含む)× 1.0 ÷ 12
協会けんぽの一般保険料率(介護分含む)は 約9.35%(年齢層により介護加算の有無で変動)が目安です。在職時は「×0.5(折半)」でしたが、任意継続は「×1.0(全額)」になるため、実質負担は 在職時の約2倍 になります。
| 年収 | 標準報酬月額(目安) | 在職時負担(年) | 任意継続(年) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 21万円 | 約11.8万円 | 約23.5万円(月約1.96万) |
| 500万円 | 39万円 | 約21.9万円 | 約43.8万円(月約3.65万) |
| 800万円 | 66万円 | 約37.0万円 | 約74.1万円(月約6.17万) |
計算の根拠(例:年収500万円):標準報酬月額39万円 × 9.35% = 月額36,465円。年額 36,465×12 = 約43.8万円。在職時はその半分(約21.9万円)で済んでいたため、退職で負担が倍増する点に注意が必要です。
ステップ3:国民健康保険(国保)の計算式
国保の保険料は、市区町村ごとに税率が異なりますが、全国的な目安として次の式で求まります。
国保の年額 = 所得割(所得 × 約7%) + 均等割(1人あたり年約4〜5万円) + 資産割(地域による)
- 所得割:前年の「所得(給与所得控除後の金額)」に税率(都道府県分+市区町村分の合算で約7%)を掛けた額。
- 均等割:世帯の加入者1人あたりに一律にかかる額(地域により年約3〜6万円)。
- 資産割:固定資産税の評価額に応じてかかる地域があります(都市部では0円のことが多い)。
「所得」は給与所得控除(年収500万なら約138万円引かれる)を引いた後の金額です。例えば年収500万円の人は、所得が約362万円、さらに基礎控除等を引いて課税所得が約300万円程度になるため、この「300万円」が所得割の元になります。
ステップ4:具体例——年収500万円(所得300万円)で3択を比較
年収500万円で退職し、所得(課税所得)が300万円のケースで、3つの選択肢の年間保険料を比較します。
| 選択肢 | 計算の根拠 | 年間保険料 |
|---|---|---|
| ①任意継続 | 標準報酬月額39万×9.35%×12 | 約43.8万円 |
| ②国保 | 300万×7%(所得割)+4.5万(均等割) | 約25.5万円 |
| ③扶養(配偶者の健保) | 自身の収入130万未満で要件クリア | 0円 |
この例では、国保が任意継続より年約18.3万円安く、扶養に入れれば0円で最も安くなります。多くの退職者(年収〜1,000万円程度)では、この「国保の方が安い」という関係が成り立ちます。
ステップ5:損得分岐点——いつ任意継続の方が安くなるか
任意継続が国保より安くなるのは、次の不等式が成り立つときです。
標準報酬月額 × 9.35% × 12 < 所得 × 7% + 均等割
標準報酬月額は「年収÷12」に近く、所得は「年収−給与所得控除」です。この関係を整理すると、所得が高いほど国保の所得割(7%)が効いて国保が不利になりますが、任意継続は標準報酬月額の上限(協会けんぽで月139万円)に頭打ちになります。実務的には、年収数千万円クラスのごく高所得層や、標準報酬が低くて所得が極端に高い稀なケースを除き、ほとんどの退職者では「国保 ≦ 任意継続」 となります。つまり「とりあえず任意継続」は、2年という期限付きのつなぎには使えても、長期的に安く済む選択肢にはなりにくい点に注意してください。
ステップ6:よくある落とし穴
- 任意継続は「在職時の2倍」になる:折半が外れるため負担が倍増します。「前の保険のままで安心」と飛びつくと、手取りが減った上に保険料が倍になる二重の痛手になります。
- 任意継続は最長2年(一部3年):恒久的な選択肢ではありません。2年経過時に自動で打ち切られ、その時点で国保等へ切り替える必要があります。「2年だけ任意継続→あとで国保」という手順も可能ですが、多くの場合は最初から国保で十分安いことが多いです。
- 扶養の「130万円の壁」:配偶者や親の扶養に入るには、自身の給与収入が130万円未満(60歳以上等は180万円未満)である必要があります。パート等でこれをわずかに超えると扶養を外れ、自分で国保に入るうえに、扶養してくれる側の扶養控除38万円も消え、家計全体で年数十万円の差が出ることがあります。
- 国保の所得割は「所得」ベース:国保の所得割は給与所得控除後の「所得」で計算されるため、年収が同じでも給与所得控除の大きさで保険料が変わります。また退職年に「退職所得の分離課税」等の特例がある場合、保険料の算定となる所得と実際に手元に残るお金の感覚がずれることがあります。
- 国民年金とのセット:会社員を辞めると厚生年金も抜けるため、同時に「国民年金」への切り替え(第1号被保険者)も必要です。健康保険とセットで手続き忘れを防いでください。
関連ツール・記事で全体を把握する
- 健康保険料(協会けんぽ)の計算記事:在職時の保険料と標準報酬月額の仕組み。
- 国民健康保険料の計算記事:所得割+均等割の内訳を1円単位で。
- 親を健康保険の扶養に入れる条件の記事:130万円の壁と得の計算。
- パートの社会保険の壁の記事:週20時間×年収130万の基準。
- 社会保険料(健康保険+厚生年金)の計算記事:在職時の天引きの全体像。
- 手取り計算ツール:退職前後の手取り変化を確認。
- 健康保険料(協会けんぽ)の計算記事:自身の標準報酬月額から保険料を試算。
いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
注意事項
本記事の数値は、協会けんぽの一般保険料率(介護分含む)を約9.35%、国民健康保険の所得割率を約7%、均等割を1人あたり年約4.5万円とした単純化モデルです。①実際の保険料率は健保組合・都道府県・市区町村によって異なり、介護加算(40歳以上)の有無や、資産割の有無でも変動します。②「標準報酬月額」は等級表に基づくため、年収と一致しないことがあります。③任意継続の加入可能期間(2年または3年)や、扶養の収入要件(130万円未満等)は制度によります。④正確な保険料と手続きは、加入する健康保険者・お住まいの市区町村の窓口へご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の保険相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。
よくある質問
退職後の健康保険の選択肢は何ですか?
大きく3つあります。①任意継続被保険者:退職後も前の健康保険(協会けんぽ等)にそのまま残れる制度で、最長2年(一部の組合は3年)加入できます。②国民健康保険(国保):住所地の市区町村が運営する保険で、フリーランスや無職の人が入ります。③家族の扶養:配偶者や親の健康保険の被扶養者になる場合です(収入要件あり)。基本的には「扶養に入れるなら扶養」「入れないなら国保か任意継続を比較」という順で考えます。
任意継続の保険料はいくらになりますか?
計算式は「標準報酬月額 × 保険料率(介護分含む)× 1.0(全額自己負担)÷ 12=月額」です。在職中は会社と折半(×0.5)でしたが、任意継続は全額を自分で払うため、実質的に在職時の2倍の負担になります。例えば年収500万円で標準報酬月額39万円の人が協会けんぽ(一般保険料率9.35%)の場合、月額 39万×9.35%≒36,465円、年額約43.8万円になります(在職時の年額約21.9万円の約2倍)。
国保とどちらが安いですか?
多くの退職者(年収〜1,000万円程度)では、国民健康保険の方が任意継続より年数万〜十数万円安くなる傾向があります。理由は、国保の保険料が「所得割(所得×約7%)+均等割(1人あたり年約4〜5万円)」なのに対し、任意継続は標準報酬月額×約9.35%を全額払うからです。年収500万円(所得300万円)の例では、国保が年約25.5万円、任意継続が年約43.8万円で、国保が約18万円安くなります。ただし所得が極端に高い場合や、標準報酬が低くて所得が高い稀なケースでは逆転もあり得るため、ご自身の数値で比べることをおすすめします。
家族の扶養に入るにはどうすればいいですか?
配偶者や親の健康保険の被扶養者になるには、生計維持要件(扶養する人が生活費を負担している関係)と収入要件(給与収入130万円未満、60歳以上等は180万円未満が目安)を満たす必要があります。扶養に入れば自身の保険料は0円になり、健康保険の観点では最強の選択肢です。ただし配偶者が扶養に入ると、扶養してくれる側の所得税・住民税で扶養控除38万円が使える代わり、自分の収入が130万円を超えると扶養を外れ、自分で国保等に入る必要があります(いわゆる「130万円の壁」)。
任意継続はいつまで加入できますか?
原則として退職した日の翌日から最長2年です(健康保険の被保険者であった期間が2年に満たない場合は、その期間に限る)。例えば協会けんぽの場合、退職日の翌月から2年経過する月までです。2年を過ぎると任意継続は打ち切られ、その時点で国民健康保険等へ切り替える必要があります。そのため「とりあえず2年だけ任意継続」はできますが、恒久的に安く済むわけではなく、長期的には国保か家族の扶養を検討するのが一般的です。