傷病手当金はいくらもらえる? 支給額の計算式と「休職中の手取り」を1円単位で解説
「病気やケガで会社を休むと、給料はどうなるの? いくらもらえるの?」——急な入院や長期療養で仕事を休むとき、誰もが気にするのが「休職中の収入」です。この記事では、健康保険から支給される傷病手当金(しょうびょうてあてきん)について、支給額の計算式の根拠・期間の上限・手取りへの影響・よくある誤解を、具体数値でわかりやすく解説します。
目次
- 傷病手当金とは何か
- 支給額の計算式と根拠
- 年収500万円・標準報酬月額37万円の具体例
- 休職前の手取りと比べていくら減るか
- 支給期間の上限と延長の壁
- 3つのよくある誤解
- 関連ツールで自分の数字を確かめる
傷病手当金とは何か
傷病手当金は、会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入している被保険者が、業務外の病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される給付金です。民間の傷病手当金(給料の全額や一定割合を会社が補填する制度)とは別物なので注意しましょう。この記事で扱うのは、健康保険法に基づく公的な傷病手当金です。
支給されるための大きな条件は2つ。
- 連続する3日間(待機期間)を、欠勤などで会社から給与が支払われずに休むこと(この3日間は支給対象外)
- その後も、働いたときに得られる「標準報酬」の3分の2に満たない給与しか受け取っていないこと
つまり「軽い休み」「有給休暇で給料が出ている期間」は対象外です。連続して休む必要があり、社内の有給とは別に、健康保険からの給付という仕組みです。
支給額の計算式と根拠
支給額は、「直近の標準報酬月額」をもとに決まります。標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金料の計算に使われる「毎月の給与を等級(級)に振り分けた決定額」のことです(社会保険料の計算方法を1円単位で解説した記事も参照)。
傷病手当金の1日あたりの支給額は、次の式で求めます。
これを整理すると、「標準報酬月額 ÷ 30 × 3分の2 × 3分の1 = 標準報酬月額 ÷ 45」となります。つまり、標準報酬月額を月30日で割った「1日分の給与相当額」の、ちょうど3分の1が、1日の支給額になります。
なぜ3分の2・3分の1なのか? 法律(健康保険法)が「標準報酬の3分の2相当を、休業1日あたり3分の1ずつ(=月に約3分の2)支給する」と定めているためです。働けなくなった分の所得を、全額ではなく「生活を維持するために必要な水準」で補填するという設計です。
年収500万円・標準報酬月額37万円の具体例
年収500万円(月給換算約41.7万円、賞与含む)の会社員が、標準報酬月額37万円の等級にいるケースで計算してみます。
1日あたりの支給額:
月30日で計算すると:
つまり、標準報酬月額37万円の人なら、休職中は月に約12.3万円が傷病手当金として支給されます(休業日数や暦日数によって変動します)。
| 標準報酬月額 | 1日あたり支給額 | 月30日換算の支給総額 |
|---|---|---|
| 28万円 | 約 6,222円 | 約 9.3万円 |
| 32万円 | 約 7,111円 | 約 10.7万円 |
| 37万円(年収500万円級) | 約 8,222円 | 約 12.3万円 |
| 42万円(年収600万円級) | 約 9,333円 | 約 14.0万円 |
| 50万円 | 約 11,111円 | 約 16.7万円 |
※表は「÷30日×3分の2×3分の1」で算出した目安です。実際の支給は暦日(その月の日数)で日割りになります。
休職前の手取りと比べていくら減るか
年収500万円の会社員の、通常時の手取りは月額約20.5万円です(年収500万円の手取りを1円単位まで分解した記事を参照)。それが休職すると、給与は止まり、代わりに傷病手当金の約12.3万円になります。
つまり、傷病手当金があるだけで「給料ゼロ」を回避でき、生活を大きく下支えしますが、それでも通常の手取りの7割弱になるのが現実です。入院費や通院費が重なる時期であることを考えると、貯蓄や民間の傷病手当金制度(会社の就業規則で別途支給される場合)との組み合わせが重要になります。
傷病手当金そのものは、健康保険の給付なので非課税です。確定申告や年末調整の対象にはなりませんが、民間の給補填と合わせて「給与の全額」を超える受取は原則として認められません(給与を上回る分は調整されます)。
支給期間の上限と延長の壁
傷病手当金の支給期間は、「同じ病気・けがについて、最初に休んだ日から通算して1年6カ月(18カ月)」が上限です。これを超えると、原則として支給は打ち切られます。
1年6カ月の壁は意外と早く来ます。例えば「がんの治療で半年休職→復帰→再発でまた半年休職」のように、同じ病気で休む期間が通算で1年6カ月を超えると、その後は支給されません。長期療養が見込まれる場合は、障害厚生年金や会社の休職規定(最長2年など)との関係を早めに確認することが大切です。
また、支給が始まるのは「連続する3日間(待機期間)」のあとです。最初の3日間は、有給休暇を使うか、あるいは無給で休むかになります。有給を使えばその分は通常通り給与が出ますが、傷病手当金の算出ベース(標準報酬月額)には影響しません。
3つのよくある誤解
誤解1:「傷病手当金は年収の3分の1」
違います。ベースは年収ではなく標準報酬月額です。年収500万円でも、賞与が多い人は標準報酬月額が低くなる(賞与は標準報酬月額の算定に薄く反映される)ため、支給額は年収ベースの3分の1より小さくなることがあります。
誤解2:「国民健康保険でももらえる」
違います。傷病手当金を支給するのは会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)のみです。自営業などが加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません(代わりに、市区町村の「傷病手当金(一部の国民健康保険)」や、福祉制度を別途確認する必要があります)。
誤解3:「休めばすぐもらえる」
違います。前述の「連続する3日間の待機期間」を空けて、4日目からの支給となります。また、支給には医師の「労務不能証明書(診断書)」が必要で、会社を通じて健康保険者へ申請します。
関連ツールで自分の数字を確かめる
傷病手当金の額は、自分の標準報酬月額がわかればすぐ概算できます。次のツールで、関連する数字を確かめてみてください。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
- 手取り計算ツール:休職前の通常時の手取りを、年収から確認できます(年収500万円の手取りの内訳が根拠)。
- 社会保険料の計算方法を1円単位で解説:標準報酬月額そのものの出し方と、天引きされる保険料の関係を具体例で。
- 給与明細の天引き内訳を読み解く:自分の標準報酬月額を給与明細から見つけるコツ。
「休職中の生活費をどう回すか」は、複利積立シミュレーションで普段の備えの目安を立てておくと、いざというときに役立ちます。
よくある質問
傷病手当金の支給額はどうやって決まる?
直近の標準報酬月額(健康保険の決定額)をもとに、「標準報酬月額 ÷ 30日 × 3分の2 × 3分の1」で1日あたりの支給額を出します。つまり標準報酬月額の約3分の2が、月の支給総額の目安になります。
いつからもらえる?待機期間はある?
連続する3日間(待機期間)を会社から給与が出ずに休むと、その翌日から支給されます。最初の3日間は対象外です。
支給される期間の上限は?
同じ病気・けがについて、最初に休んだ日から通算して1年6カ月(18カ月)が上限です。これを超えると原則として打ち切られます。
国民健康保険でももらえる?
いいえ。傷病手当金を支給するのは会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)のみで、国民健康保険にはこの制度はありません。