失業手当(基本手当)はいくらもらえる? 1日あたりの支給額の計算式と支給日数を1円単位で解説
「会社を辞めたけど、失業手当(失業保険)はいくらもらえるの? どれくらいの期間もらえるの?」——急な退職や会社都合の倒産で仕事を失ったとき、誰もが気にするのが「失業中の収入」です。この記事では、雇用保険から支給される基本手当(通称・失業手当)について、支給額の計算式の根拠・日額の上限下限・支給日数(所定給付日数)・在職時の手取りとの比較・よくある誤解を、具体数値でわかりやすく解説します。
目次
- 失業手当(基本手当)とは何か
- ステップ1:賃金日額を出す(給与÷180日)
- ステップ2:支給額の計算式と根拠(給付率80%+上限下限)
- ステップ3:支給日数(所定給付日数)の決まり方
- 具体例:賃金日額8,000円・35歳・被保険者期間8年
- 在職時の手取りと比べていくら減るか
- 4つのよくある誤解
- 関連ツールで自分の数字を確かめる
失業手当(基本手当)とは何か
基本手当は、雇用保険の被保険者として働いていた人が、離職(退職)して「働く意思と能力があるのに仕事がない」状態になったときに、ハローワークから支給される給付金です。健康保険の傷病手当金(病気・けがで休むときの給付)とは全く別の制度なので混同しないようにしてください。この記事で扱うのは、雇用保険法に基づく公的な失業手当(基本手当)です。
支給されるためのおおまかな流れは次のとおりです。
- 離職後、ハローワークで「求職申込」と各種手続きを行う
- 待期期間(7日間)を経過する(この7日間は支給対象外)
- その後、失業の状態にあることが認定されるごとに、所定給付日数の範囲で支給される
なお「会社都合退職(解雇・倒産など)」か「自己都合退職」かで、支給が始まるまでの給付制限期間(自己都合は原則3ヶ月)の有無が変わります。詳細はお近くのハローワークへご確認ください。
ステップ1:賃金日額を出す(給与÷180日)
基本手当のベースになるのは、「離職前の賃金日額」です。これは離職前の直近6ヶ月間(約180日)に支払われた給与の総額を、180日で割って求めます。
例えば、離職前の手取り月給が30万円(6ヶ月で180万円)なら、賃金日額は「1,800,000円 ÷ 180日 = 10,000円」。給与明細の「支給額」から逆算したい場合は、給与明細の天引き内訳を読み解く記事も参考にしてください。
ステップ2:支給額の計算式と根拠(給付率80%+上限下限)
基本手当の1日あたりの支給額は、次の式で求めます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(原則 80%)
ただし 上限 約8,295円 / 下限 約2,184円(2026年8月〜2027年7月の料率目安)
なぜ80%なのか? 法律(雇用保険法)が「離職前の賃金の8割程度を、失業中の生活維持のために支給する」と定めているためです。働けなくなった分の所得を、全額ではなく「生活を下支えする水準」で補填するという設計です(健康保険の傷病手当金が「標準報酬月額の3分の2」なのと同様の考え方)。
また、60歳以上65歳未満の人は、賃金日額の水準に応じて給付率が55%または45%になります(高齢者向けの別枠設計)。以下では、もっとも一般的な「原則80%」のケースで説明します。
| 離職前の賃金日額 | 給付率80%の計算式 | 1日あたりの支給額(目安) |
|---|---|---|
| 3,000円(下限未満) | 下限に引き上げ | 約 2,184円(下限) |
| 5,000円 | 5,000 × 80% | 4,000円 |
| 8,000円 | 8,000 × 80% | 6,400円 |
| 10,000円 | 10,000 × 80% | 8,000円 |
| 12,000円(上限超) | 上限に抑えられる | 約 8,295円(上限) |
※表は「賃金日額 × 80%」で算出した目安です。60歳以上65歳未満は給付率が55%/45%になるため、より低い額になります。
ステップ3:支給日数(所定給付日数)の決まり方
基本手当は「1日あたりの額 × 支給される日数」で総額が決まります。支給される日数(所定給付日数)は、退職時の年齢と被保険者期間(勤続期間)の組み合わせで決まります。もっとも一般的な「特定受給資格者(会社都合など)」の標準的な表は次のとおりです。
| 被保険者期間 | 30歳未満 | 30歳〜35歳未満 | 35歳〜45歳未満 | 45歳〜60歳未満 | 60歳〜65歳未満 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年以上5年未満 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
| 5年以上10年未満 | 120日 | 150日 | 180日 | 210日 | 180日 |
| 10年以上20年未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | 180日 |
| 20年以上 | 150日 | 180日 | 210日 | 300日 | 180日 |
※上記は標準的な「所定給付日数」の目安です。自己都合退職の場合は、基本となる日数から給付制限期間(原則3ヶ月)が加わる形で、実際の支給開始が遅れます。また、再就職の状況や、育児・介護などの事情で「延長給付」が加算される場合もあります。正確な日数はハローワークの判定になります。
具体例:賃金日額8,000円・35歳・被保険者期間8年
離職前の賃金日額が8,000円、退職時35歳、被保険者期間8年(5年以上10年未満)のケースで計算してみます。
1日あたりの支給額:
支給日数(35歳以上45歳未満・5年以上10年未満)= 180日。総受給額は:
月単位にすると、180日 ÷ 約6ヶ月 = 月あたり約19.2万円が失業手当として支給される目安です(実際の支給は認定日ごとの日数単位)。
| ケース | 1日あたり | 支給日数 | 総受給額(目安) |
|---|---|---|---|
| 賃金日額5,000円・28歳・3年 | 4,000円 | 90日 | 約36万円 |
| 賃金日額8,000円・35歳・8年(上記例) | 6,400円 | 180日 | 約115.2万円 |
| 賃金日額10,000円・50歳・15年 | 8,000円 | 240日 | 約192万円 |
| 賃金日額12,000円・52歳・25年(上限適用) | 約8,295円 | 300日 | 約248.9万円 |
※表は「賃金日額 × 80% × 所定給付日数」で算出した目安です。60歳以上や自己都合退職等の条件では額・日数が変わります。
在職時の手取りと比べていくら減るか
年収500万円(月給換算約41.7万円)の会社員の、通常時の手取りは月額約20.5万円です(年収500万円の手取りを1円単位まで分解した記事を参照)。それが失業すると、給与は止まり、代わりに失業手当の月約19.2万円(上記例)になります。
つまり、失業手当があるだけで「給料ゼロ」を回避でき、在職時の手取りの9割強を維持できるのが現実です(手取りには通勤手当や残業代などの非課税分が含まれるため、厳密な比率はケースにより変わります)。ただしこれはあくまで所定給付日数の期間中だけで、支給が終わる(例:180日=約6ヶ月)と収入はゼロになります。再就職までの期間を意識し、複利積立シミュレーションで普段の備えの目安を立てておくと、いざというときに役立ちます。
失業手当そのものは、雇用保険の給付なので非課税です。確定申告や年末調整の対象にはなりませんが、会社からの退職金や、再就職後に受け取る「再就職手当」等の一部には税金がかかる場合があります。
4つのよくある誤解
誤解1:「もらえるのは給料の8割」
半分正解・半分誤解です。ベースになるのは「給料そのもの」ではなく賃金日額(給与÷180日)であり、しかも日額には上限約8,295円があります。年収1,000万円クラスなど高所得だと、賃金日額が上限に達して「実際にもらえるのは給料の8割よりずっと低い」ことになります。
誤解2:「辞めればすぐもらえる」
違います。ハローワークでの手続きと待期期間(7日間)をへて、さらに認定を受けてからの支給です。自己都合退職なら、さらに給付制限期間(原則3ヶ月)が加わり、実際の支給開始が遅れます。
誤解3:「無職のままずっともらえる」
違います。支給されるのは所定給付日数の上限(最長330日)までです。それを超えると原則として打ち切られます。ただし、就職活動の実績(求職活動)を継続しつつ、一定の要件を満たせば「延長給付」が加算される場合があります。
誤解4:「失業手当は課税される」
違います。基本手当(失業手当)は非課税です。ただし「再就職手当」など一部の加算給付には税金がかかる場合があるため、受け取る種類で確認が必要です。
関連ツールで自分の数字を確かめる
失業手当の額は、自分の賃金日額(離職前6ヶ月の給与÷180日)がわかればすぐ概算できます。次のツールで、関連する数字を確かめてみてください。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。
- 手取り計算ツール:在職時の通常の手取りを、年収から確認できます(年収500万円の手取りの内訳が根拠)。失業手当との差を比べる目安に。
- 給与明細の天引き内訳を読み解く:自分の「賃金日額」を給与明細から逆算するコツ。
- 傷病手当金はいくらもらえる?:病気・けがで休むときの給付(健康保険)との違いを整理。
- 複利積立シミュレーション:失業に備えた普段の貯蓄ペースの目安を立てるのにどうぞ。
注意事項
本記事の数値は、2026年8月時点の雇用保険の料率・標準的な所定給付日数を前提とした概算モデルです。実際の基本手当は、離職の理由(会社都合か自己都合か)、年齢、被保険者期間、これまでの受給履歴、60歳以上かどうか、育児・介護などの特例の有無、そしてハローワークの個別判定によって変わります。また日額の上限・下限や所定給付日数は、毎年8月の制度見直しで変動することがあります。正確な試算はお近くのハローワークの窓口、または厚生労働省の公式情報が最終的な根拠になります。本記事は情報提供を目的とし、個別の給付相談に代わるものではありません。
よくある質問
失業手当の1日あたりの金額はどうやって決まる?
離職前の直近6ヶ月の給与総額を180日で割った「賃金日額」に、給付率(原則80%)を掛けた額です。ただし賃金日額には上限(2026年度 約8,295円)と下限(約2,184円)があり、高すぎても低すぎてもこの枠に収められます。
いつからもらえて、どれくらいの期間もらえる?
ハローワークでの手続きと「待期期間(7日間)」をへて支給されます。支給される日数(所定給付日数)は、退職時の年齢と被保険者期間で決まり、最短90日から最長330日(45歳以上60歳未満・被保険者期間20年以上)までです。
在職中の手取りの何割くらいがもらえる?
基本手当は賃金日額(給与÷180日)の80%なので、月単位で見ると在職時の手取りの約8割弱が目安になります。ただし手取りには残業代や通勤手当などの非課税部分が含まれるため、厳密には単純な比率ではありません。
失業手当は課税される?
いいえ。基本手当(失業手当)は非課税です。確定申告や年末調整の対象になりません。ただし、再就職後に受け取る「再就職手当」等の一部には税金がかかる場合があります。