マイホームを売ったときの譲渡所得税はいくら? 3,000万円特例と「長期19% vs 短期40%」を計算する

2026-08-18 | 譲渡所得税 税金 マイホーム 不動産 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「マイホームを売って引っ越すんだけど、売却で利益が出たら税金がかかるの? いくら取られるの?」——住み替えや相続後の実家売却で、誰もが直面する問いです。ネットで検索すると「3,000万円の特例で安心」という結論が出てきますが、そもそも税額はどうやって出るのか、「長期(5年超)」と「短期(5年以内)で税率が2倍違う」本当の境界、そして買値より高く売れたとき・安く売れたときでどうなるかを数値で追っている記事は意外と少ないものです。

この記事では、会社員が買値5,000万円(取得費実額4,000万円)のマイホームを5,000万円で売った場合を例に、譲渡所得の計算 → 3,000万円特例 → 長期・短期の税率を、実際の計算式と数値で確認します。自分の数字で試したい場合は 手取り計算ツール で売却後の手元資金を試算できます(入力はどこにも送信されません)。

結論:買値=売値なら長期で税0円、取得費5%特例なら約301万円、短期なら約618万円

まず全体像をつかんでください。売却価額5,000万円・譲渡費用(仲介手数料等)190万円・3,000万円特例ありで、取得費と保有期間を変えた3パターンを比べます。

ケース取得費保有期間譲渡所得税額(概算)
A:取得費実額4,000万40,000,000円長期(5年超)▲21,900,000円(損)0円
B:取得費5%特例250万2,500,000円長期(5年超)15,600,000円約3,010,000円
C:取得費5%特例250万2,500,000円短期(5年以内)15,600,000円約6,180,000円

ポイントは2つ。①買ったときの実際の取得費(4,000万円)を使えると、売値=買値なら税0円になること。逆に領収書をなくして②「取得費の特例(売値の5%=250万円)」を使うと、譲渡所得が跳ねて税額が約301万円に膨らみます。さらに③保有期間が5年以内の「短期」だと税率が約2倍になり、同じ条件で約618万円まで跳ね上がります。

ステップ1:譲渡所得税の全体の流れ

譲渡所得税は、給与所得や事業所得とは別枠の「譲渡所得」として計算されます。マイホーム売却では次の順で出します。

譲渡所得 = 売却価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 3,000万円特別控除
税額 = 譲渡所得 × 税率(長期約19.3% / 短期約39.6%)

注意点:この「3,000万円特例」は、譲渡所得税の計算のなかで最後に一括で差し引くものです。譲渡所得がマイナス(損)なら、もちろん税額はゼロになりますが、その損は給与所得などの他の所得と合算して控除(損益通算)できる場合があります。

ステップ2:譲渡費用(仲介手数料等)を出す

売却価額5,000万円の場合、仲介手数料は宅建業者の報酬基準で「売価×3% + 6万円」に消費税10%を足した額になります。

50,000,000 × 3% + 60,000 = 1,560,000円
消費税10%込 = 1,560,000 × 1.10 = 1,716,000円

これに登記費用等約20万円を足して、譲渡費用合計は約190万円とします(実際は売主負担の抵当権抹消費用等も加わります)。以降の計算はこの190万円を使います。

ステップ3:取得費の2つの出し方(実額 vs 5%特例)

取得費は、買ったときの領収書等が残っていれば実際の購入価格(実額)を使えます。なくした場合は「取得費の特例」で売却価額の5%を取得費とみなせます(実額が5%を超えるときは実額を使います)。

取得費の出し方金額(売値5,000万の場合)
実額(買値4,000万の例)40,000,000円
特例(売値×5%)2,500,000円

ここが誤解の多いポイント:「領収書がないから特例でいいや」と安易に5%特例を使うと、取得費が実額の1/16(250万円)になり、譲渡所得が大きく膨らんで税額が跳ねます。買値の証明になるもの(売買契約書・領収書・ローンの残高証明等)は、売却時まで必ず残しておくのが鉄則です。

ステップ4:譲渡所得を計算する

売却価額5,000万円・譲渡費用190万円で、取得費を変えて譲渡所得を出します。

【ケースA:取得費実額4,000万】
50,000,000 − 40,000,000 − 1,900,000 − 30,000,000 = ▲21,900,000円(損)
【ケースB:取得費5%特例250万】
50,000,000 − 2,500,000 − 1,900,000 − 30,000,000 = 15,600,000円

ケースAは「買った値段と同じかそれ以下で売った」ため譲渡所得がマイナスになり、税額は0円です。一方ケースBは取得費を実額ではなく5%特例にしたことで、譲渡所得が1,560万円まで膨らみます。

ステップ5:税率(長期約19.3% vs 短期約39.6%)を掛ける

譲渡所得に掛かる税率は、売却した年の1月1日時点での保有期間で決まります。譲渡所得税は所得税と住民税の両方からなり、所得税分には復興特別所得税(2.1%)が上乗せされます。

区分保有期間所得税住民税合計税率(復興税2.1%込・概算)
長期譲渡所得5年超14%5%約19.3%(=14%×1.021+5%)
短期譲渡所得5年以内30%9%約39.6%(=30%×1.021+9%)

ケースB(譲渡所得1,560万円)に掛かる税額は次のとおりです。

【長期】15,600,000 ×(14% × 1.021 + 5%)= 15,600,000 × 0.19294 ≒ 3,010,000円
【短期】15,600,000 ×(30% × 1.021 + 9%)= 15,600,000 × 0.3963 ≒ 6,180,000円

税率の「長期約19.3%/短期約39.6%」という約2倍の開きこそが、この税制の最大の罠です。5年ちょっと保有期間が短いだけで、同じ利益に掛かる税が倍近く跳ね上がります。

ステップ6:買値より安く売ったら(譲渡損)はどうなるか

不動産価格の下落で「買値5,000万円より安い4,000万円で売った」場合、取得費実額4,000万円なら譲渡所得は

40,000,000 − 40,000,000 − 1,900,000(特例なし) = ▲1,900,000円(損)

となり、譲渡所得税は0円です。さらにこの譲渡損は、その年の給与所得などの他の所得と損益通算できる場合があり、給与の所得税・住民税が還付されることがあります(年末調整ではできず確定申告が必要)。「売却で損をしたから税金は関係ない」と放置せず、確定申告で通算できるか検討する価値があります。

よくある誤算3つ

  1. 「3,000万円特例があれば無税」と早合点する:特例は譲渡所得から3,000万円を引くだけです。取得費を5%特例にして譲渡所得が3,000万円を超えると、超えた分にしっかり税が掛かります(ケースBのように約301万円)。
  2. 「領収書がないから5%特例でいいや」と妥協する:実額のほうが取得費が大きくて税額が安くなるのが普通です。特例を使うと税額が数倍になるリスクがあります。
  3. 「住んでさえいれば長期」と思う:基準は「売却した年の1月1日時点で、住居として使っていた期間の通算が5年超」です。賃貸に出していた期間は原則カウントされず、短期扱いで税率が約2倍になります。

関連ツール・記事で売却後の家計を確かめる

売却で手元に残る資金のめどは 手取り計算ツール で、売却代金から譲渡所得税を引いた額を試算できます。同じ「税金で手取りが変わる」テーマでは ふるさと納税の上限 や 給与所得控除の早見表 も併読を。住み替えの資金計画には 住宅ローンの借入可能額 や 元利均等と元金均等の比較 が参考になります。いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、マイホーム(土地建物)を個人が売却し、居住用財産の3,000万円特別控除の要件を満たす場合を想定した概算です。実際の税額は、取得費の実額の証明の有無、建物の減価償却(譲渡所得の計算では建物と土地を按分し、建物分は取得費から償却費を引いた簿価で計算します)、売却年の1月1日時点の保有期間(長期・短期の判定)、特例を受けるための要件(本人が居住していた・売却年の前年・前々年のいずれかで事業や貸付けをしていない等)、および譲渡損の損益通算の可否によって大きく変わります。税率(長期約19.3%/短期約39.6%)や3,000万円特例の要件は制度改正で変更されることがあり、実際は1円単位の端数処理が別途入ります。正確な金額と適用可否は、国税庁の公式情報および税理士等の専門家にご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務相談に代わるものではありません。

自分の売却価額・取得費・譲渡費用で税額を試したい場合は、上の算式(売却価額−取得費−譲渡費用−3,000万)×税率 を 電卓ツール で計算してください。すべてブラウザ内で処理され、入力はどこにも送信されません。

よくある質問

譲渡所得税の計算方法は?

譲渡所得税は(売却価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 3,000万円特別控除)× 税率 で求めます。マイホームの売却では居住用財産の3,000万円特別控除が使えるため、譲渡所得が3,000万円以下なら税額はゼロになります。税率は保有期間5年超なら「長期」で約19.3%(所得税14%×復興税1.021 + 住民税5%)、5年以内なら「短期」で約39.6%(所得税30%×復興税1.021 + 住民税9%)です。

3,000万円の特別控除とは?

自分が住んでいたマイホームを売ったとき、譲渡所得から一律3,000万円を特別に控除できる制度(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除)です。一生に一度ではなく「売却ごと」に使えますが、受けるための要件(本人が居住していた・売却年の前年・前々年のいずれかで事業や貸付けをしていない等)を満たす必要があります。

長期(5年超)と短期(5年以内)の違いは?

保有期間で税率が大きく変わります。売却した年の1月1日時点で、その家屋を「住居の用に供していた期間」が通算5年を超えていれば「長期譲渡所得」で約19.3%、5年以下なら「短期譲渡所得」で約39.6%です。短期は長期の約2倍の税負担になります。

取得費が分からないときはどうする?

買ったときの領収書等がない場合、「取得費の特例」として売却価額の5%を取得費とみなせます(実額がこれより多いときは実額を使います)。ただし特例を使うと取得費が小さくなるため譲渡所得が大きくなり、結果として税額が増えることが多い点に注意が必要です。

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