年金を繰下げるといくら増える? 繰上げとの損得・分岐点を計算根拠で比べる

2026-08-18 | 年金 老後資金 税金 手取り 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「定年後、年金を65歳からもらうか、66歳・67歳まで待って増額してもらうか——どっちが得なんだろう?」——誰もが一度は迷う老後の重大な選択です。この記事では、年金の繰下げ受給(遅らせて増額)と繰上げ受給(早くもらって減額)について、なぜその増減率になるのかという計算根拠から、月額への影響、そして「何歳まで生きれば繰下げが得になるか」という分岐点までを、実際の数値で整理します。自分の年金見込額は手取り計算ツールで毎月の家計と照らし合わせられます。

結論:繰下げは年8.4%増、繰上げは年6%減(上限はそれぞれ5年)

老齢年金の受給開始時期は、原則の65歳から最大5年(60歳〜70歳の間)で自由に動かせます。そのぶん月額が次のように変わります。

動かし方1ヶ月あたり1年(12ヶ月)あたり最大(5年)
繰下げ(遅らせる)+0.7%+8.4%+42%(70歳開始)
繰上げ(早める)−0.5%−6.0%−25%(60歳開始)

つまり「1年待てば月額8.4%アップ、1年早めれば6%ダウン」です。繰下げの方が率が高く設定されているため、待てば待うほど月額は厚くなります。

ステップ1:なぜこの率なのか(計算根拠)

この増減率は、「いつ開始しても、生涯でもらえる年金の現在価値(割引総額)が同じになる」ように決められています。年金はもらう期間が長くなるほど総額が増えるため、早くもらう(繰上げ)なら「期間分長くもらえる代償」として月額を薄く、遅くもらう(繰下げ)なら「期間分短くなる代償」として月額を厚くします。

増減率の目安 = 1 ÷ 支給される予定月数(の近似)

老後の標準的な支給期間(約19年=228ヶ月)を基準にすると、1ヶ月動かすごとに「全体の1/228」程度の価値が移動します。これを調整して、繰下げを月0.7%(=8.4%/年)、繰上げを月0.5%(=6.0%/年)という実数値に落とし込んでいます(繰上げの方が率が低いのは、早期支給に伴う制度上の調整によるものです)。

注意点:これはあくまで「増減の設計根拠」の目安です。実際の年金額は、物価スライド(毎年の物価・賃金改定)や在職老齢年金(65歳以降も働く場合の調整)で変動します。また令和4年4月以降は、繰下げの増額率が段階的に引き上げられ、遅らせるほど有利になる設計になっています。

ステップ2:具体数値例(月額への影響)

老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた標準的な月額約18万円(夫婦で約29万円の例も多い)を基準に、動かした場合の月額を出します。

受給開始増減月額(例:元18万円)年間差額(元18万円との比)
60歳(繰上げ5年)−25%約13.5万円−54万円/年
63歳(繰上げ2年)−12%約15.8万円−26万円/年
65歳(通常)±0%18.0万円—
66歳(繰下げ1年)+8.4%約19.5万円+18万円/年
67歳(繰下げ2年)+16.8%約21.0万円+36万円/年
70歳(繰下げ5年)+42%約25.6万円+90万円/年

繰下げ5年で月額が約7.6万円(約42%)厚くなる一方、繰上げ5年では約4.5万円(25%)目減りします。生涯のトータルでは同じになる設計ですが、月々の生活のゆとりという意味では繰下げの方が有利に働きます。

ステップ3:分岐点「何歳まで生きれば繰下げが得か」

繰下げの最大の罠は「もらい始めまでの空白期間に、誰かが生活費を立て替える必要がある」ことです。その分を取り返すタイミング(累計受給額が逆転する年齢)が、繰下げの損得の分岐点です。

取り戻し年数 ≈ 繰下げ月数 ÷ 年増額率(小数)

例:65歳開始を1年(12ヶ月)繰下げて年8.4%増の場合、

繰下げ期間年増額率累計受給額が逆転する目安年齢
1年(12ヶ月)+8.4%約77歳(もらい始めから約12年後)
3年(36ヶ月)+25.2%約81歳(もらい始めから約16年後)
5年(60ヶ月)+42%約84歳(もらい始めから約19年後)

たとえば「67歳(2年繰下げ)まで待って月額21万円」にすると、65歳から通常通り18万円をもらい続けた人との累計差は、約79歳前後で逆転します。それ以降は繰下げした人の方が生涯合計で多くもらる計算になります。日本人の平均余命(男性約81歳・女性約87歳)を考えると、健康で長生きしそうな人ほど繰下げが有利になります。

ステップ4:繰上げを選ぶべきケース

繰下げが有利なのは「長生き」が前提です。逆に以下の場合は、早くもらう(繰上げ・通常開始)方が確実です。

繰上げのデメリットは「減額は一生続く」ことです。一時しのぎに繰上げすると、後から月額が戻ることはありません。慎重に判断しましょう。

手取り・貯蓄との繋がり

「繰下げ中の生活費を誰が出すか」が最大の関門です。65歳時点の毎月の手取り(退職金の取り崩し・配偶者の収入・仕事の収入)を把握し、そこから年金の空白を埋められるかを確認します。毎月の家計の余力は手取り計算ツール、老後資金の不足分の積立は複利積立シミュレーション(考え方は毎月3万円を20年積み立てる記事)で試せます。年金と並行してiDeCoで備えるならiDeCoの節税と運用の記事も参考になります。

注意事項

本記事の数値は概算のシミュレーションです。実際の増減額は、繰下げ・繰上げの申出時期や、その時点の「年金額改定状況」、在職老齢年金の有無、物価スライドの動きにより変わります。また令和4年4月以降は繰下げの増額率が段階的に引き上げられています。正確な自分の年金額と受給見込みは、日本年金機構の「ねんきん定期便」や「年金ネット」、および最寄りの年金事務所でご確認ください。本記事は情報提供を目的とし、個別の年金相談に代わるものではありません。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した金額が外部に送信されることはありません。

よくある質問

年金の繰下げと繰上げの増減率は?

繰下げ受給は支給開始を遅らせるごとに1ヶ月あたり0.7%(年8.4%)ずつ増額され、最大で年金額の42%(5年繰下げ)になります。逆に繰上げ受給は1ヶ月あたり0.5%(年6%)ずつ減額され、最大で25%(5年繰上げ・60歳から)まで減ります。

なぜ繰下げの方が率が高いのですか?

制度上、一生もらえる年金の「現在価値」が同じになるように増減率が設計されています。繰下げは受け取る期間が短くなる分、月額を厚くする代わりに、繰上げは受け取る期間が長くなる分、月額を薄くします。単純な「期間×月額」の合計は、いずれも同じになります(利子・物価スライド等を除く)。

繰下げは何歳まで生きれば得になりますか?

繰下げで増えた月額が、繰り上げ・通常開始との「もらい遅れた分」を取り返すタイミングが分岐点です。例えば65歳開始を1年(12ヶ月)繰下げて年8.4%増なら、約12年後の77歳前後で累計受給額が逆転します。もらい始めを遅らせれば遅らせるほど分岐点は高齢側へ寄ります。

繰下げと繰上げ、どちらを選ぶべき?

長生きしそうな人(健康で親族の長寿傾向がある等)や、65歳時点で働いて厚生年金保険料を払っている人は繰下げが有利なことが多いです。逆に、年金で生活を立て直す必要がある人や、平均余命より短い見込みの人は早く受け取る(繰上げ・通常開始)方が確実です。最終的な判断はご自身の状況でお願いします。

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