公的年金等控除の計算方法は? 年金収入から控除額を引く「5段階の計算式」と、年金生活の課税所得を具体例で解説

2026-08-20 | 公的年金等控除 年金 課税所得 確定申告 税金 家計

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「年金生活になったら、もらっている年金のうちいくらが税金の対象になるんだろう?」「確定申告って必要なの?」——老後資金や退職後の家計を考えるとき、誰もがぶつかる疑問です。ネットには「年金は非課税」という言葉もあれば「課税される」という言葉もあり、「実際にいくらが課税されるかの計算式」を、段階ごとの根拠つきで追っているページは意外と少ないものです。

この記事では、年金の税金計算の要である「公的年金等控除」について、収入金額から控除額を引く5段階の計算式の根拠から、年金収入300万円・700万円の具体例、所得が上がるほど実効税率がカドを描く仕組み、そして「1000万円の壁」や確定申告不要のルールまでを、わかりやすく解説します。年金と給与の両方がある方は 手取り計算ツール で全体の家計を、確定申告の全体像は 確定申告まとめの記事 で確かめられます。

📌 結論ファースト:課税される年金所得=「年金収入 − 公的年金等控除額」。控除額は収入に応じ5段階で、収入の75%〜95%が控除されます。収入300万円なら控除225万円(年金所得75万円)、700万円なら控除540万円(年金所得160万円)になります。収入が330万・410万・770万・1000万円を超えるたびに控除率が下がり「手取りに占める課税割合」が一段階上がるため、年金設計ではこのカドに注意が必要です。

公的年金等控除とは何か

年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族年金・障害年金など)を受け取ると、その全額がいきなり課税されるわけではありません。まず「公的年金等控除」という大きな控除を引き、残った額(=年金所得)だけが所得として計算されます。

年金所得 = 公的年金等の収入金額 − 公的年金等控除額

この「控除額」が、年金の税金計算で最も重要なパラメータです。控除率が高い(収入の大部分が引かれる)ほど、課税される額は小さくなります。

5段階の計算式(控除額の出し方)

控除額は、年金収入(公的年金等の収入金額)を A として、次の5段階で決まります。収入が高くなるほど控除率が下がる設計になっています。

年金収入 A控除額の計算式控除される割合(目安)
A ≦ 330万円A × 3/475%
330万 < A ≦ 410万円A × 3/4 − 15万円約72〜73%
410万 < A ≦ 770万円A × 17/20 − 55万円約80%
770万 < A ≦ 1000万円A × 19/20 − 132万円約87%
A > 1000万円150万円(上限)収入が増えても固定

この表の「控除率」は、収入のうち何%が非課税になるかを示しています。収入が低いほど控除率は高く(ほとんど非課税)、高くなるほど下がっていくのがわかります。なお「17/20」は 0.85、「19/20」は 0.95 のことです。

具体例:収入別の控除額と年金所得

代表的な年金収入で、実際にいくらが課税されるかを計算します。

年金収入 A控除額の計算控除額年金所得(課税対象)
300万円300万 × 3/4225万円75万円
400万円400万 × 3/4 − 15万285万円115万円
500万円500万 × 17/20 − 55万370万円130万円
600万円600万 × 17/20 − 55万455万円145万円
700万円700万 × 17/20 − 55万540万円160万円
800万円800万 × 17/20 − 55万625万円175万円
1000万円1000万 × 19/20 − 132万818万円182万円

年金収入が300万円から700万円へ約2.3倍になっても、課税される年金所得は75万円から160万円へ約2.1倍にとどまります。これは控除率(80%)が高いため、増えた分の多くが非課税になるからです。一方で収入が上がるほど「手取りに占める課税割合」は確実に大きくなっていきます。

ステップ:年金所得から所得税を出す

年金所得がわかれば、あとは他の所得と合算して所得金額を出し、基礎控除(48万円)などを引いた「課税所得」に税率(5%〜45%)を掛けて所得税が求まります。ここでは年金だけの場合で試します。

課税所得 = 年金所得 − 基礎控除(48万円)

年金収入が約2.3倍になっても所得税の負担は約4倍(1.38万→5.72万)に膨らみます。これが「控除後の課税所得に対して税率が掛かる」ことの正体です。

注意点:実効税率の「カド」と1000万円の壁

控除額は滑らかにではなく5段階で変わるため、収入が境目を超えた瞬間に「控除率が下がる」カドが生じます。特に押さえておくべきは次の2点です。

① 330万・410万・770万円のカド

収入がこれらの境目を超えると控除率が一段下がり、同じだけ収入が増えても「手取りに残る増加分」が小さくなります。「年金を少し多くもらったらかえって手取りが…」と感じる正体はこのカドです。ただし、どの段階でも「収入が増えれば手取りも増える」ことに変わりはありません(逆転はしません)。

② 1000万円の壁

収入が1000万円を1円でも超えると、控除額が一気に150万円(上限)に圧縮されます。例えば収入1000万円なら控除818万円(年金所得182万円)なのに、1000万円1円だと控除150万円(年金所得約850万円)になり、課税所得が約668万円も跳ね上がります。高額年金を受給するケースの強烈な注意点です。

確定申告は必要? 源泉分離のルール

年金は「公的年金等の源泉徴収」といって、支給時にあらかじめ税金が引かれる仕組みです。そのため、収入が以下の条件を満たす場合は原則として確定申告は不要です。

逆に、年金の他に給与がある、医療費控除などの還付を受けたい、年金収入が400万円を超える場合などは確定申告が必要です。確定申告の全体像はこちらの記事で整理しています。

年金と給与の両方がある場合の注意

退職後もパートなどで給与をもらっている場合は、年金所得と給与所得を合算して課税所得を計算します。また「扶養の壁(103万・130万・150万円)」は配偶者の「合計所得」で判定されるため、年金所得が75万円なら扶養内、115万円なら130万円の壁を超える、といった具合に影響します。扶養の壁の計算はこちらの記事を併せてどうぞ。

関連記事・ツールで自分の数字を確かめる

いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は、公的年金等控除の現行の計算式(収入に応じた5段階の控除額)を前提とした単純なモデル計算です。控除額の区分や基礎控除の金額、確定申告不要の要件(収入400万円以下等)は、税制改正によって変わることがあります。また実際の税金は年金所得と他の所得の合算、各種控除(医療費・社会保険料・配偶者等)、住民税の所得割などを含めて決まります。自身の状況に応じた申告が必要な場合は、所轄の税務署または税理士へご相談ください。計算はすべてブラウザ内で行われ、入力した情報が外部に送信されることはありません。

よくある質問

公的年金等控除の計算方法は?

年金収入(公的年金等の収入金額)を A として、控除額は5段階で決まります。A≦330万円なら A×3/4、330万<A≦410万なら A×3/4−15万、410万<A≦770万なら A×17/20−55万、770万<A≦1000万なら A×19/20−132万、A>1000万なら150万円(上限)です。課税される年金所得= A − この控除額 となります。

年金収入300万円の場合、いくらが課税されるのですか?

控除額=300万×3/4=225万円、年金所得=300万−225万=75万円です。これに基礎控除(48万円)を引くと課税所得は27万円、所得税は27万×5%=1.35万円(復興特別所得税込みで約1.38万円)になります。つまり年金300万円でも、手元に残る大部分は非課税になります。

年金だけの生活で確定申告は必要ですか?

公的年金等の収入金額が400万円以下で、その年は年金以外に給与などの所得がない場合は、原則として確定申告は不要です(年金から税金が源泉徴収されているため)。他に給与がある、または医療費控除などの還付を受けたい場合は申告が必要です。詳しくは確定申告のまとめ記事をご覧ください。

年金収入が1000万円を超えるとどうなりますか?

収入が1000万円を超えると、控除額が一気に150万円(上限)に圧縮されます。例えば1000万円なら控除818万円(年金所得182万円)なのに、1000万円を1円超えるだけで控除が150万円になり年金所得が約850万円に跳ね上がる「1000万円の壁」があります。高額な年金を受給する場合の注意点です。

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