個人事業主(フリーランス)の所得税・住民税はいくら? 収入300万・経費50万の具体例で1円単位で計算する

2026-09-07 | 個人事業主 フリーランス 所得税 住民税 税金 手取り 青色申告

便利箱編集部 | 編集方針・情報の確認

「会社を辞めてフリーランスになったら、手取りはいくら残るの?」「副業で事業所得が発生したら税金はいくら?」——個人事業主・フリーランスになった人で、最初にかかるのがこの疑問です。ネットで検索すると「収入の30%を税金に取られる」「青色申告がお得」といったフレーズはよく出てきますが、具体的にいくらの所得税・住民税・社会保険料がかかるのかを、収入300万・経費50万の数字で1円単位に計算した記事は意外と少ないものです。

この記事では、個人事業主・フリーランス・独身・40歳未満・東京都(国民健康保険)をモデルに、事業所得 → 所得税 → 住民税 → 社会保険料(国民健康保険+国民年金) → 手取りの順で、実際の計算式と数値をすべて追います。所得が変わったら 手取り計算ツール(会社員用)や ふるさと納税上限目安 に数字を入れれば、同じ考え方で概算が出ます(入力した金額はどこにも送信されません)。

結論:収入300万・経費50万の個人事業主の手取りは約181.7万円(月約15.1万円)

項目金額備考
収入(収入金額)3,000,000円売上・報酬の総額
必要経費▲500,000円計算根拠のある実費
事業所得2,500,000円収入 − 必要経費
社会保険料(国民健康保険+国民年金)▲約433,000円全額自己負担(所得割+均等割+定額年金)
基礎控除(所得税)▲480,000円令和6年から48万円
所得税(復興税込)▲約81,020円課税所得158.7万円・税率5%区分
住民税▲約168,700円所得割10% + 均等割5,000円
手取り約1,817,280円月約151,440円 / 手取り率約60.6%

ここからが本題です。なぜこの金額になるのか、順に計算します。なお、「手取り率60.6%」は会社員年収300万円(手取り率約80.2%)より大きく低い——その理由も記事の後半で説明します。

ステップ1:事業所得 = 収入 − 必要経費(会社員との根本的な違い)

個人事業主の税のスタート地点は「収入」ではなく「事業所得」です。

事業所得 = 収入金額 − 必要経費

収入300万・経費50万なら 3,000,000 − 500,000 = 2,500,000円 が事業所得です。

ここが会社員と根本的に違う点:会社員には「給与所得控除」が自動的に適用されます(例えば年収300万円なら110万円)。個人事業主にはその控除がなく、代わりに「必要経費」を自分で計上します。つまり 経費が0円なら事業所得=収入となり、税金がかかる土台が大きくなるのです。

注意点:必要経費は「その収入を得るために直接使ったお金」である必要があります。生活費(自宅の家賃全額・食費等)は原則経費になりません。自宅を事務所にする場合は「業務使用割合」だけを計上します。曖昧な経費を多めに計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。

ステップ2:所得税の計算(課税所得 → 税率5% → 復興税)

所得税の課税所得は、事業所得から所得控除を引いて求めます。独身・扶養なしなら、基礎控除48万円と社会保険料控除だけです。

課税所得(所得税用) = 事業所得 − 社会保険料控除 − 基礎控除(48万円)
= 2,500,000 − 433,000 − 480,000 = 1,587,000円

社会保険料控除の詳しい金額はステップ4で計算しますが、ここでは「国民健康保険+国民年金で約43.3万円」を前提にしています。

課税所得 1,587,000円 は 195万円以下の区分 です。所得税の速算表ではこの区分は税率5%・控除額0円です。

1,587,000 × 5% = 79,350円

これに復興特別所得税2.1%が上乗せされます。

79,350 × 1.021 ≒ 81,016円 → 約81,020円

ここが誤解の多いポイント:「フリーランスは収入の30%が税金」という言い方が流布していますが、これは高所得・経費が少ないケースでの目安に過ぎません。このモデル(収入300万・経費50万・独身)では、所得税+住民税=約24.9万円で、収入に占める割合は8.3%です。経費50万円があることで課税土台が50万円分減り、結果として所得税・住民税もそれだけ小さくなります。

ステップ3:住民税の計算(基礎控除43万円がポイント)

住民税は所得税と控除額が違います。基礎控除が43万円(所得税は48万円)である点が要注意です。

課税所得(住民税用) = 事業所得 − 社会保険料控除 − 基礎控除(43万円)
= 2,500,000 − 433,000 − 430,000 = 1,637,000円

所得割 = 1,637,000 × 10% = 163,700円
+ 均等割 5,000円 = 約168,700円

注意点:住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されます。フリーランス1年目は住民税がゼロ(所得がないため)、2年目の6月に初めて住民税の請求が来るのが普通です。この1年遅れを家計に織り込まないと、2年目に「思ったよりお金が出ていく」ことになります。

ステップ4:社会保険料(国民健康保険+国民年金、全額自己負担)

個人事業主は厚生年金保険・協会けんぽの健康保険に加入せず、国民健康保険と国民年金に加入します。そしてこれらの規定の保険料は全額自分で支払うのが最大の違いです。

国民健康保険料の目安(東京都・所得割+均等割+平等割)

所得割対象額 = 事業所得 − 基礎控除(住民税用43万円) = 2,500,000 − 430,000 = 2,070,000円
所得割 = 2,070,000 × 8.0%(目安)= 165,600円
+ 均等割 48,700円 + 平等割 8,000円(目安)≒ 約222,300円

実際の額はお住まいの自治体(都道府県・市区町村)により異なります。東京都の特別区の場合、所得割料率はおおむね8%前後で、均等割は1人当たり年4〜5万円程度です。

国民年金保険料(定額)

月額保険料 17,580円(2025年度)× 12か月 = 210,960円/年

国民年金は所得に関係なく定額です(免除制度はありますが、免除すると年金受給額も減ります)。

社会保険料の合計(ステップ2・3で使用)

国民健康保険 222,300円 + 国民年金 210,960円 ≒ 約433,000円

この約43.3万円が、所得税の計算では「社会保険料控除」として課税所得を押し下げる効果を持ち、住民税の計算でも同様に控除されます。

注意点:会社員の社会保険料は事業主が半分負担します(厚生年金18.3%の半分、健保9.8%の半分等)。個人事業主は国民健康保険・国民年金を全額自己負担。そのため「天引きされる額が少ないように見える」けれども、実際には自分で納付書等で支払うお金が増えるので、手取りへの影響は同じ構図です。

ステップ5:手取りを合計する

手取り = 収入 − 必要経費 − 社会保険料 − 所得税 − 住民税
= 3,000,000 − 500,000 − 433,000 − 81,020 − 168,700 = 約1,817,280円

月あたり 約151,440円、手取り率は 約60.6% です。

比較のために、同じ年収300万円の会社員(独身・扶養なし)の手取りは約241万円(手取り率約80.2%)でした(年収300万円の手取り記事 参照)。差は 約60万円 です。この差の主な要因は2つです。

つまり「収入が同額でも、個人事業主の手取りが少ない主因は給与所得控除の代わりに必要経費しか認められない点」です。必要経費を正当に計上できるかどうかが、手取りを大きく左右します。

青色申告の65万円特別控除でいくら得になるか(ケース比較)

個人事業主が青色申告を選択し、要件(複式簿記等)を満たすと、青色申告特別控除65万円(令和6年から最大65万円)が所得から控除できます。これは「必要経費とは別に」適用できる特別控除で、事業所得がある場合に限り使えます。

項目白色申告(控除なし)青色申告(65万円控除)差
事業所得2,500,000円1,850,000円(65万控除後)▲650,000円
所得税(復興税込)約81,020円約47,830円▲約33,190円
住民税約168,700円約103,700円▲約65,000円
手取り約1,817,280円約1,915,470円+約98,190円

青色申告特別控除65万円で、所得税+住民税合わせて年約9.8万円の手取り増になります。やり方は「確定申告書に青色申告特別控除の欄を埋める」だけですが、複式簿記による記帳・確定申告書の提出が前提です。青色申告は「経費が65万円以上ないと意味がない」ものではない——事業所得さえあれば、経費が50万円でも65万円控除を適用できます(所得から控除されるため)。

注意点:青色申告特別控除65万円は、事業所得が65万円未満の場合は「事業所得の額」が上限になります(例えば事業所得が40万円なら控除は40万円まで)。また、控除を適用する年は必ず確定申告書を提出する必要があります。

専従者給与の効果(家族に手伝ってもらっている場合)

配偶者や親族に事業を手伝ってもらっている場合、専従者給与として支払った給与は必要経費に算入できます。ただし青色申告であること、所定労務時間・給与額の届出が必要です。

例えば配偶者に月20万円・年間240万円の専従者給与を支払った場合、必要経費が50万円→290万円に増え、事業所得は2,500,000→2,210,000に減ります。一方で配偶者側には給与所得が発生し、配偶者側の税金・社会保険料も別に発生する(配偶者控除も適用できなくなる場合がある)ので、世帯全体での損得はケースバイケースです。詳しくは 配偶者控除の記事 と 年収の壁の記事 も参照してください。

注意点:ここでつまずく人が多い5つ

  1. 「収入の30%が税金」をそのまま信じる:これは経費が少なく所得が高いケースの概算です。経費が正当なら課税土台は小さくなり、実効率は大きく変わります。このモデル(収入300万・経費50万)では所得税+住民税率は収入の8.3%です。
  2. 経費の線引きを誤る:生活費(自宅の家賃全額・食費)は原則経費になりません。自宅を事務所にする場合は業務使用割合だけを計上します。曖昧な経費を多めに計上すると税務調査で否認されます。
  3. 国民健康保険の均等割を見落とす:所得が低い個人事業主ほど、所得割は小さいのに「均等割(1人当たり年4〜5万円)」が相対的に効いて、国民健康保険料が案外高いことがあります。支払う保険料は確定申告書の「社会保険料控除」欄で控除できるので、税額計算に織り込んでください。
  4. 住民税の1年遅れを忘れる:フリーランス1年目は住民税ゼロ、2年目6月から請求が始まります。家計のキャッシュフローに織り込まないと「2年目に資金が足りない」ことになりかねません。
  5. 納税時期の違いを認識していない:会社員は毎月の天引き+年末調整で精算されますが、個人事業主は原則として確定申告(2月16日〜3月15日)で1年分を一括納税します。所得税の「予定納税」もあります(前年分の所得税が一定額を超える場合)。資金計画では「税金を3月に一括で支払う」前提で現金を確保しておく必要があります。

関連ツール・記事で自分の数字を確かめる

いずれもブラウザ内で計算し、入力した金額はどこにも送信されません。

注意事項

本記事の数値は個人事業主・フリーランス・独身・40歳未満・東京都(国民健康保険、所得割8.0%・均等割48,700円・平等割8,000円の目安)・国民年金定額保険料17,580円/月(2025年度)・必要経費50万円・青色申告特別控除の申請なし(白色申告比較)を前提とした概算です。実際の税額・社会保険料は以下の要因で変動します。

正確な税額・手続き要件・国民健康保険料の額は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」、お住まいの自治体の国民健康保険料通知・HP、および必要に応じて税理士等の専門家でご確認ください。税制は毎年の改正で細部が変わることがあります。本記事は情報提供を目的とし、個別の税務相談に代わるものではありません。

事業所得がある年の税金の構造を自分の数字で試したい場合は 手取り計算ツール(会社員用ですが構造は共通)へ。入力した金額はどこにも送信されません。

よくある質問

フリーランス(個人事業主)の所得税は会社員とどう違う?

最大の違いは「給与所得控除がない」ことと「社会保険料を全額自分で払う」ことです。会社員は給与所得控除(収入の10〜20%等)が自動適用され、社会保険料の半分は事業主負担ですが、個人事業主は収入から必要経費を引いた「事業所得」に対して税金がかかり、国民健康保険・国民年金も全額自己負担です。

個人事業主の所得税・住民税の計算手順は?

①事業所得(収入−必要経費)②社会保険料控除・基礎控除48万円等を引いて課税所得③所得税率(5%〜)を掛ける④復興特別所得税2.1%を上乗せ——の順です。住民税は基礎控除が43万円な点に注意し、事業所得−社会保険料−43万円に10%を掛けます。

青色申告の65万円控除でいくら得になる?

収入300万・経費50万のモデルでは、青色申告特別控除65万円を使うと所得税+住民税の合算で年約9.8万円の手取り増になります(計算式は記事本文参照)。ただし確定申告書の提出・帳簿の記録が必要で、経費が65万円未満でも適用できるわけではありません(事業所得がある場合のみ)。

個人事業主の社会保険料は? 会社員とどっちが安い?

個人事業主は国民健康保険料+国民年金保険料を全額自己負担します。収入300万・独身・東京都のモデルでは年約43.3万円です。会社員の天引き社会保険料(年収300万で約43.5万円)と総額は似ますが、会社員は事業主が半分負担する点、国民健康保険には均等割があり低所得ほど相対的に重い点が違いです。

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