反物質の研究は、独自の工学的課題を伴います。反物質は通常の物質と接触すると瞬時に消滅するため、標準的な実験用容器に保持することができないからです。この課題を克服するため、ノースウェスタン大学のGerald Gabrielse率いる物理学チームは、電子の反物質に相当する単一の陽電子を隔離する手法を開発しました。チームはナトリウムの放射性同位体(ナトリウム22)を使用して陽電子を生成し、それらを薄い冷たいタングステン板に通しました。この結晶格子は減速装置として機能し、粒子が物質と衝突する際にエネルギーを失わせる仕組みです。この過程で一部の粒子は消滅しましたが、他の粒子は絶対零度をわずか0.3度上回る温度に保たれた真空チャンバーへと到達しました。

ワイヤーや金属製の機械がある研究所でポーズをとる6人の物理学者。
陽電子トラップを開発した研究所で作業するノースウェスタン大学の研究チーム。www.scientificamerican.com

この写真は、実験が行われた研究チームと研究所の環境を描写しています。

真空内に入った陽電子は、上部と下部には電場、側面には磁場を配置した「壁のない」容器によってその場に保持されました。この構成により、研究チームは単一の陽電子を1ヶ月間安定した状態で維持することができました。この突破口は、陽電子の磁気モーメント(磁場の強さと方向)を特定するといった、精密な量子測定を行うための安定したプラットフォームを提供するため、非常に重要です。チームは、粒子のスピンを反転させるのに必要なエネルギーや、基底状態から第一励起状態へ移動させるのに必要なエネルギーを測定することを目指しています。

これらの測定は、陽電子の磁気モーメントが電子のそれと正確に反対になることを予測する素粒子物理学の標準模型を検証することを目的としています。チームはすでに電子の測定において10兆分の1という精度を達成しており、現在は陽電子において同様の再現を追求しています。このような比較は、宇宙の「物質と反物質の非対称性」を理解する上で極めて重要です。現在の理論では、ビッグバンによって両者が等量生成されたと示唆されていますが、ほとんどの反物質は消失し、星や惑星を形成するためのわずかな過剰な物質だけが残りました。もし陽電子の磁気モーメントが、予測される電子の反対からわずかでも逸脱していれば、初期宇宙においてなぜ物質が反物質に勝利したのかを知るための重要な手がかりとなる可能性があります。